表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/214

冒険者ギルドランクがAランクに昇格したっす。

9・28修正しました。

まずは自宅に帰ってきたので俺は早乙女邸と全ての施設の防衛警戒レベルを普通レベルにまで引き下げた。


大黒豹のエドガー・アラン・ポーズの3頭を連れてきたのだが、早乙女邸内には入っていけないので早乙女邸の庭で待機している。

流石に早乙女邸の中にはこの大きさの魔獣を入れるにはキツ過ぎるからな。

さてどうしたものかと悩んでいたが大黒豹のことは大黒豹に聞こうと念輪を水影につなげる。

「水影、今いいか?」

「あ、ボス。お久しぶりです。今はまだ偵察に行く前ですので大丈夫です。どうぞ」

「偵察って明日のトロール殲滅の大遠征の事か? アキューブがえらく張り切ってるみたいだな」

「アキューブ単体でなくて銀大熊の種族全体がかなり張り切ってます。本当に銀大熊はトロール肉が大好物みたいなんで」

「らしいな。それで水影には相談したいことがあるんだ」

「ボスが私に相談ですか? それは嬉しいですね。何でもおっしゃってください」

「実はな・・・」


俺はアラン達と出会ったところから水影に説明した。

俺のわからない部分などはパーティー回線で繋がって一緒に会話しているポーズたちが補足して説明してくれる。

3頭はヨークルで育ったわけではないが、シーパラ連合国の南側の都市『シグチス』の出身で生まれも育ちも街の中で郊外には旅でしか出てきたことはない生活だった。

テイマー魔獣として人間によって生まれてきて育ってきた・・・『養殖魔獣』とでも言うべきだろうか。

俺の手で開放されたのはいいのだが、どうしていいのか俺にもわからない。

どうすればエドガーたちが幸せになれるのだろうかと悩んでるってことを水影に伝えた。


「それならば、今から私の巣までボスが3頭を連れてきてくれませんか?」

「どういうことなんだ?」

「実は時々なんですけどエドガーさんたちのようなテイマー魔獣がここの大森林の南側に逃げ込んでくるんですよ。彼らは主人が冒険中に死んでしまったり、大森林の夜間の狩りに連れ出されてそのまま逃走してきてたりだとか、大黒豹の特性『昼間寝てる』ってことを理解できないでテイムして途中で育てるのが面倒になって大森林に放置してたりとかしてるみたいで、ちょいちょい私の群れににもやってきます。ですので逃走仲間は今はここには5頭ほどいますね」

「なるほどね。じゃあ、ちょっと待ってて」


俺はエドガーたちを引き連れて水影の巣がある大樹に転移した。

巨大な大樹の枝の上や下の地面には100頭以上の大黒豹が集まっていた。全部が水影の部下達で俺は全員からいっせいに挨拶されてちょっとビックリした。

まずはエドガーたち3頭を水影達に挨拶させた。

「大黒豹がたくさん集まってるな。今日の偵察はそこまで広範囲に調べるのか?」

「はいボス。大量にいるトロールの巣の場所を調べて行動範囲を計算しなくてはいけませんからね。これだけの数は最低でも必要です。ある程度は既に把握しているのですが明日は総勢500を越える混成魔獣の大軍が私の呼びかけで行動を起こすのですから、作戦を万全にこなす為にも下準備は念入りに行います」

「忙しいところを邪魔して悪かったな。いいよ・・・みんなそのまま当初の予定通りに行動しててくれ」

『では・・・みんな、ボスへの挨拶も済んだし予定通りの行動を!』


水影が大声で命令すると100頭を越す大黒豹は音も無く瞬時に移動して煙のように消えた。

水影の巣の周辺には10頭ほどが残ったのみだ。

大黒豹は簡単な重力魔法が使えて自分の体重をg単位で増減できる。

あくまで自分の体重のみなので『簡単な』と言う魔法のくくりになってしまうけども。

なので音もなく枝の上を走り回ることが出来るのでまさに大森林の夜の覇者に相応しい。

「水影は偵察を指揮しに行かなくてもいいのか?」

「私と残ってる大黒豹は群れの幹部連中でして、事前に誰をどこの配置にするかなどを計算して指令するだけなんで、事前に考えて計画と立てるのが仕事になります。ですので後は成果を聞いてそれを明日のフォクサ様の作戦で生かすことだけです。私の場合は特別にする事がありませんので皆さんと狩りに行けます」

「俺達みんなで狩りに行くのか?」

「はい。皆さん、夜の大森林はいかがですか?」


ここでエドガー・アラン・ポーズの3頭の様子がおかしいことに俺は初めて気付いた。

3頭とも何かソワソワ浮き足立ってるような印象だ。

実際に3頭にそれぞれ話を聞くと夜の大森林に来てから心の中でワクワク・ドキドキしていて、興奮しているのが自分で抑えられないと言ってる。

「水影、これはいったいどういうことなんだ?」

「本能のなせる技でしょう。大黒豹は元々は白帝様に眷属にしていただく前は黒豹という動物で大森林の中では群れから離れた森林モンキーなどを食べるだけの細々とした生活をしてる生き物だったのです。自らの身を守るためには大森林の夜にしか行動できない習性があるのです。ですので逆に夜の大森林に来ると『狩りをしなきゃ生き残れない』と言う本能が浮き彫りになってしまうのではないかと、以前逃げてきた大黒豹が言ってました。彼はテイム魔獣として人間に街中で育てられてきた魔獣で、森林にまるで興味なんてなかったはずだったのに、夜の大森林で狩りをしていたら本能に目覚めて逃走できるようになったと言ってました」


そういうことだったのか・・・それなら納得だ。

『大黒豹はジャングルで深夜に行動させてはいけない。従魔の契約を打ち切られて逃亡の恐れあり』

確かに俺の貰ったテイマーとしての記憶や経験の中にはそのようになってるな。


「そういうことなら本能が既に反応し始めているエドガー達は大森林で今後、暮らしていくことは可能なんだよな?」

「間違いありません。私が保証しますよ。彼らは私たちの仲間ですから」

「3頭が大森林で生活できるようになるまで水影にお願いしてもいいか?」

「ぜひともお願いしたいですね。最近は大黒豹のオスの数が減っていたので大変ありがたいです」

「あの、話をさせてもらってもいいですか?」

「お、何だエドガー、いいぞドンドン意見を言ってくれ」

「私はご主人様の従魔とさせていたんですけど、大森林で生活すると従魔としての仕事は出来なくなってしまうのですが・・・」

「まぁ従魔にしたのはヨークルの街の中の手続き上だけで、そのまま君らを使っていくという意味ではないよ。君たちには幸せになって欲しいからな。大黒豹として生まれてきたんだから水影達と一緒に過ごすのは自然の事だろう」

「ここで暮らしていけるんですか?」

「俺はそのつもりだよ。とりあえずは今夜は残りの時間を水影達と大森林の深夜の狩りをして遊んでてくれ。俺も今夜はみんなと一緒に深夜の狩りを楽しむ事にするよ」

「ご主人様も一緒に遊んでくださるのですか? わかりました。ありがとうございます」


後は全くの自由な状態で遊んでもらおう。

自由に狩りをすることは初めての経験だろうし、今から水影と一緒に遊びながら狩りをする事は・・・エドガー・アラン・ポーズの3頭にとって、永遠に忘れることが出来ない『初めて経験する自由気ままな狩りの経験』となるだろう。


それから朝まで俺も大森林の中で深夜の狩りを楽しんだ。

漆黒の闇の中を目の周りの銀色のクマドリがボゥッと淡く光る・・・るびのの眷族に新しく契約した水影と一緒に遊びながら、幾つものトロールの集落を俺と水影とエドガーたち3頭で襲撃をする。

トロールは別に光り物を集めるという収集癖がある森林モンキーや、武器や防具になりそうな獲物の装備や骨などを集めるクセのあるオークと違って巣の中には戦利品となるものも無く、俺は狩りの方をエドガーたちに任せて討伐したトロールの回収係をすることにした。

大黒豹が水影・エドガー・アラン・ポーズと4頭いて、俺の前後左右に展開しているので手の出す隙間がないってのが真相なんだけど。

元々暗闇の中で狩りをしていたので周囲の気配を探る能力が高かった黒豹が、るびのと眷属契約をして大黒豹という種族になってから周囲の気配を察知する能力を大幅に上げて貰ってるので、俺がいちいち声を掛ける必要もないのでホントにトロールを拾って回ってるだけだ。

武器も狩りの始めは二刀流を装備をしていたんだけど途中で武器の必要性を感じなくてアイテムボックスに仕舞った。


始めのうちは狩った獲物のトロールをワザワザ俺の元に運んで『持ってきました! 褒めてください!』と俺の顔色を伺っていた『エドガー』『アラン』『ポーズ』の3頭も、時間がたつにつれて次第に自由に狩りをする楽しさに目覚めたようで、水影と同じように狩った獲物は運んでくるのだがそのまま次の獲物まで走っていってしまうようになった。

自分のする狩りに喜びを感じてきて夢中になってきてるようだ・・・いい傾向だろう。

途中でエドガーたちに自分で狩った獲物のトロールを食べさせた。

水影だけは最近トロールばかり食べてて食傷ぎみだったみたいなので、俺が骨付きトロール肉を焼いてあげたらメチャクチャ美味しいと絶賛してバリバリ食ってた。


夜が明けてみんなが少し眠くなってきた頃に狩りは終了して水影の本拠の大樹に戻ってきた。

巣に帰ってからエドガーたちそれぞれの考えてる本音を聞いた。

『楽しかったから大森林の中で暮らしていきたい』というのが結論になったので、水影に3頭の面倒を見てもらうようにお願いしたら快く受けてくれた。


『私も早乙女様の子分にさせていただいてるから。離れていても子分と親分の関係が変わるわけではないよ。私だけでなくここに今、続々と帰ってきてる大黒豹は全員が早乙女様の子分なんだよ。ここに暮らしていても子分をやめる必要なんてないんだよ』

結論が出る前は凄く悩んでるような様子を見せていた3頭だったが、水影のかけてくれたこの言葉で救われたようにこの大森林の南側で水影たちと暮らしていくと決まったのだった。


るびのやフォクサへの説明も後は全部水影に任せて俺は転移魔法で夜が明けて徐々に太陽が昇る中を帰宅した。




転生して31日目でイーデスハリスの世界で5月1日の朝はこうして迎えた。

天気は昨夜お風呂で予想していた通り少し曇っている。

外は風は少し強く吹いているので午後からは雨が降ってきそうな、余り良くはない天気。

俺は予定がある9時まで寝ることにした。

丁度俺の帰宅時間に起きてきた嫁達は、昨日の予定通り過ごすと言ってる。

俺は今日の午前10時に冒険者ギルドランクがAクラスに昇格して記念式典が開かれるけど、みんなは来ないでねとお願いしておく。

俺に逆恨みをしてる連中が俺を標的にするのは構わない・・・っていうか俺を傷つけることすら出来ないだろうが、アイリ・ミー・クラリーナの3人は人質にされる可能性が否定できないからな。

俺の説明に納得してくれた嫁たちの返事を聞きながらベッドの横で防具からパジャマに着替えて寝る。


起きた時には誰もいなかった。

ミーとクラリーナは地下練習場で特訓中らしいが見に行ってないのでわからない。

俺はクロが起こしてくれたので目覚めた。3時間しか寝てないが頭の中はだいぶスッキリしてる。

朝食を食べながら今日はサイラスの甲殻鎧を装備する。

今日は10時から冒険者ランクのAランク昇格の記念式典があるとラザニードが言っていたので・・・着ていく服を悩んだが、とりあえず『冒険者の正装は防具だろう』と思ったので、武器は腹の前側のホルダーに入っている『白扇子』のみを装備した。

おやっさんの防具だとガチャガチャ音もしないし大丈夫だろう。


ノンビリとした朝食後のコーヒーを飲み終わって9時40分。

もふもふ天国ヨークル1号店の裏にある早乙女商会ヨークル支部に転移魔法で移動して、そこからホップボードに乗って冒険者ギルドヨークル支部に移動した。

深く考えてなかったが今日は冒険者ギルドの裏側に直接転移するのは辞めておいた。

もしかしたら裏庭で記念式典が行われるかもしれないと思ったからだった。

冒険者ギルドの到着してその心配は杞憂に終わったけど。


冒険者ギルドの到着すると中は俺を一目見ようと冒険者がごった返していた。

俺は周囲の冒険者からの色んな感情が複雑に入り混じった突き刺さる様な視線のなかで、入り口に待機していた職員にラザニードの待つギルドマスター室に案内された。

ギルドマスター室内でラザニードから式典で行われる行事の説明を受ける。

俺のAランク昇格の記念式典はヨークルの街の中央にある時計塔前広場で行われるとのことだった。

それで冒険者ギルドカードの交換と記念の旗が授与されるんだと。

Aランクのカードは今までの黒色のカードではなくて銀色のカードとなる。

Sランクが金色になってSSランクでは白金・・・白色のメタリックなカードになっていると見本品のカードを見せてもらった。


授与される記念の旗というのは・・・

冒険者は母国や都市の防衛の戦争に駆り出されることが多くてAランクは冒険者の軍勢を任されたりなどと指揮官を任命される事が多くなってくるので、その時のための目印の戦旗というのが古代からの名残のようだ。

この旗は無地で自分の好きなように染めることが許されてるので、ここに自分の紋章を入れることが多いのだそうだ。

俺の紋章なんて無いと言ったら自分で好きなように考えてもいいそうだ。

が、しかし他国の貴族・王族などには紋章など様々なモノが数多くあって同じ紋章にならないように首都シーパラの『紋章師』が所属している評議会に行って直接相談して欲しいと言われた。

面倒だけど仕方が無いか。


『自分の紋章を作るなんて、まるで貴族の仲間入りを果たすみたいだな』

・・・と、ボソッと言ったらラザニードも同感だといっていた。

シーパラ連合国は王侯貴族制度を完全に否定して、白虎戦争で生き残った貴族を全て排除するために戦争までして滅ぼした上に成り立った商人の国家なんだけど、国防や都市防衛の指揮官の人材不足を補うために冒険者の高レベル者をいざと言う時の為に国で管理しておきたいのだ。

ある程度は国に縛られる部分も出てくるので、そのかわりに特例として冒険者ギルドランクのAランク以上は土地建物の購入の時に税的に少々優遇されるのが特例としてあるらしい。

Aランクともなると指名依頼一つで大金が動き、商人も高ランク冒険者とはつながりを持ちたいと大金を払ってでも冒険者ギルドに指名依頼を入れてくる。

稼いだ大金を大きな家を購入したりして地域経済に金を回せってことだろう。


時間になったので時計塔前広場に移動をすると急遽決まったはずの記念式典の割には2000人以上の観衆が広場に集まっていた。

時計塔前広場の外周には屋台も立ち並んでいて、ちょっとしたお祭り騒ぎになっている。

記念式典は久しぶりだったのでお祭り騒ぎになってるだけだと、俺を先導して案内してくれてる冒険者ギルド職員に教えてもらう。

最近はギロチンの公開処刑などで時計塔前広場を使うことが多くて殺伐としていたのだろう。

道を歩きながら久しぶりのお祭りに住民から笑顔が溢れているのがわかるし、あちこちから笑い声が聞こえてくる。


・・・だけどここまで歩いてくる中で、俺の背中に刺すような殺気を何度か感じたので、嫁たちを連れてこなくて良かったな。

午前中に買い物に行ってるアイリにはマリアとユーロンド1号が周囲を警戒して同行しているので、100や200の軍勢からの襲撃ではアイリに近寄ることすら出来ないだろうし、その程度の襲撃ではマリアからの連絡も事後報告になるだろう。

早乙女邸の襲撃なんて1000人以上の結界師が組んで数万人規模の軍勢が攻め込んでもビクともしない。

師匠ゴーレムと魔獣ゴーレムまで応援にこれるようにしてある完全防御になってる。


不審者の数が結構いる・・・これは記念式典自体が何かされる可能性もあるだろう。

俺に殺気を向けてきた5人以上の人間と、そいつらに話をしている人間の魔力パターンや気配パターンを全てマーキングして警戒している。

たくさんの人間が連携しているらしいが、祭り騒ぎの中で不審な行動をとる人間は総勢150人以上に既に膨らんでいる。

俺は記念式典を行う舞台の上にあがりイスに座って静かに待つ。

舞台の上には様々な封印結界が施されており、何らかの襲撃が予想されているのを見て取れたので隣に座っているラザニードに小さな声で聞いてみた。


「150人以上の不審な行動をとっているヤツラがいるんだけど、冒険者ギルドはいったい公衆の面前でどう対応するつもりなんですか?」

「ああ、そのうちの100以上はこちら側の人間で『冒険者ギルドの裏の実行部隊』だな。青木さんが作った裏組織のシーフマスターの影の軍団だ。青木さんがシーパラから連れてきたんだと前もって早乙女君には言っておかないといけなかったな。不審者どもの狙いはここに必ず姿を現す青木さんと早乙女君の2名だろう」

「じゃあ、ヤツラを自由にさせて事件や行動を起こさせた後に現行犯で逮捕していくおつもりですか?」

「早乙女君、我々もそこまで悠長に考えてないし、観客に被害者を出すつもりもない。時間的に開始10分前・・・そろそろ味方が動き出す予定時刻だ」


ラザニードがステータスカードで今の時間を確かめた頃に記念式典の会場の観客席だけでなく関係者席も含めたあちこちで、強引に隷属の腕輪を装備させられて声も出すことも出来ずに不審者が30人以上連れていかれた。

開始時間2分前には会場は静けさに包まれていたところに何かの合図が出たのかわからなかったが、司会者が冒険者ギルド本部ギルドマスター青木勘十郎の来場を告げると、観客から大きな拍手に包まれながら青木が舞台の上のイスに座る俺の対面になる場所に座る。

青木の隣にはビッタート卿まで来ているのには少し驚いた。

昨日の夕方までゾリオン村で引継ぎしていたらしいから、夕方にゾリオン村を出発して早朝にヨークルに到着したんだろう。

青木とビッタート卿が登場してから俺の冒険者ギルドランクAランク昇格授与記念式典が開始された。


不審者は全部排除された後なのでスムーズに記念式典は進んでいく。

式典の中で俺は青木に自分の持っている冒険者ギルドカードを渡し、銀色に輝く新たな冒険者ギルドカードを受け取って握手と簡単な挨拶をかわす。

続けて青木の隣に立つビッタート卿から真っ白の旗を渡されてビッタート卿とも握手と簡単な挨拶を交わしてから、俺はこのヨークル中央時計塔前広場に集まってきた観客に見えるように旗と新ギルドカードを掲げると、会場に集まった2000人以上の観客から歓声と万雷の拍手が巻き起こって記念式典は終了した。


Sランク昇格だとここで俺は司会者に色々とインタビューされて答えなきゃならなくなるが、Aランク昇格では俺はただカードと旗を見せびらかすように上に掲げるだけでいいと聞いててSSランク昇格の式典ともなると、既に国家主催の記念式典となるので首都シーパラの大聖堂で行われると聞いた。

10年前から太陽神アマテラス様の承認がないとSSランクに昇格といっても、冒険者ギルドカードは変更できてもステータスカードの方がSランクのままで変更できないので、アマテラスに承認してもらうためにもSSランクの昇格記念式典は大聖堂の中で行われるようになった。

もっともSSランクに大聖堂で記念式典を行ったのは青木勘十郎しかいない。

逆にSSランクに国や冒険者ギルドが認めて記念式典を行ったのにSSランクへの昇格をアマテラスに認められなかったのは2人いる。

2人とも犯罪行為と評議会の人間に贈った賄賂がアマテラスの神託ですぐに発覚して関係者は全員すでに犯罪者奴隷となって鉱山の町『グレンビーズ』に送られているとラザニードに教えてもらった。


記念式典が終わり青木勘十郎とアクセル・ビッタートとラザニード・ヴェイケルシュタットの3人に連れられて、俺は冒険者ギルドヨークル支部のギルドマスター室にまた戻った。

俺がギルドマスター室に結界を掛けてから、ラザニードが入れてくれたコーヒーをすすりながら4人で今回の一連の騒動の話をしはじめる。

冒険者ギルド本部の次期ギルドマスター騒動の首謀者が2名逮捕されて隷属の首輪によって騒動の真実が明らかになってくると、全ての事件の関係性が明るみになってきたらしい。

元々この騒動がおきはじめた頃からラザニード・ニール・ペスカトの3人が捜査して調べた結果1つの商会の名前が浮かび上がっていた。

『ブライスナック商会』

ヨークルに本拠を置き、今までに俺が崩壊させた昇竜商会と天上天下商会とザイモア商会の3つの犯罪組織と親密な連携をしていた犯罪組織で表向きは奴隷商を営んでいるが、裏は他の犯罪組織によって誘拐されてきている人を隷属の首輪などで奴隷にして世界中に流す奴隷流通の部分を請け負っていたみたい。

今頃はヨークルのブライスナック商会本部・倉庫・秘密にされていた別の商会所有の倉庫にも強制捜査が入ってる。青木はこのために国軍までシーパラから引き連れてきているのだ。

相当な数の誘拐されてきた人達が倉庫に隠されていると見られている。


まぁ、今後の捜査などは俺に関係ないと思うので頑張ってくれってしか言いようがないな。


まだはっきりわかったわけではないが青木達が捜査状況で次々に明るみになってきている事実を総合して予想すると・・・


草原の暴風などを使って昇竜商会が中心となり、ザイモア商会・天上天下商会・ブライスナック商会が手を組んで自分達の都合のいい街をシグチス以外にも増やそうとしていた。

始めは夜の街マヅゲーラに進出しようと計画して実行したが・・・裏の部分の大半が任侠ギルドに力で押さえられていて自分達が入り込む隙すらなく、逆に自分達の方が簡単に追い出されてほんの少しも食い込めずに排除されてしまった。

裏で数店の店を管理しているだけしかできなかったし、任侠ギルドに金を払ってるほどだ。

ヨークルの冒険者ギルド前任のギルドマスターを金で仲間に抱え込むことに成功はしたが、ヨークルでは冒険者力よりも商業ギルドの商人達の権力が強く、なかなか美味しい部分には入り込めない状態のまま時間だけが過ぎていく。

そこに転がり込んできた話が『バイドが作る開拓村の話』だった。

ここを乗っ取って一大奴隷センターを作ってしまおうとしていた矢先に、俺の出現で自分たちに都合の良かった流れは完全に失敗になった。

俺の攻撃によって先遣隊の草原の暴風を丸ごと1日で壊滅させられてしまった。

それからは全部が俺によって力ずくで何もかもが叩き潰されていく。

仲間だった商会もギルドマスターも枢機卿もスパイギルドも全部が逮捕されていって、自分達が関わってきた犯罪の全てを洗いざらい明るみにさせられて処刑が決定。

仲間だった者たちは毎日のように逐次ギロチンにかかって消えていく。

もはやブライスナック商会には仲間も協力者も資金源も取り上げられてしまい、今回のギルマス後継者騒動は起死回生の溜めの最後の一発狙いでしかなく、持ち駒の戦闘奴隷も全てつぎ込んでいる。

自分達が自由にしていたシグチスも天上天下商会の本部が強制捜査を受けた翌日に、国軍によって強制的に封鎖されて、今やシグチスに残ってたはずの仲間とも連絡すらもつかなくなっているだろうという話だった。


1時間以上も色々な話をして俺の知らない情報を襲えてもらった。

色々と問題の多かった都市シグチスも最近は落ち着きを取り戻しつつあるようだ。

ついでにお昼ご飯も食堂からの取り寄せでご馳走になった。

食堂からビッタート卿と一緒に弁当を運んできたのは見覚えのある女性だった。

草原の暴風の残党に誘拐されていて俺が救い出した時に、このイーデスハリスの世界で唯一、俺の魔法を2回もレジストしたエルフ女性だ。

再会に驚き握手をするが名前を聞いてなかったことで自己紹介まじりの再会の挨拶になった。

彼女の名前は『ナディア・グラナド』といって母はやはりシーパラの司教『シル・バリトネット』の姉で間違いがないみたいだ。

父親は木工職人だったが街の暮らしに嫌気がしてゾリオン村に移住して米作りにハマって農家になった。


ナディアはここの食堂で働き始めたわけではなく、ゾリオン村に帰ってから出会った『おにぎり』に魅入られてガルディア商会に入社してビッタート卿とともに首都シーパラに向かう最中だったみたいだ。

俺の企画した『早乙女式馬車の移動おにぎり販売』の職員募集に応募したら合格となってガルディア商会に入社できた。

昨日の夕方までに『おにぎりの製作研修』を終了した。

今日の朝出発して今日の夕方に到着する定期便に乗ってヨークルにやって来る予定だったのだけど、昨日の夕方にビッタート卿に挨拶しにいったら、丁度出かけるところで朝には俺に会うという話を聞いて俺にお礼を言いたいと無理矢理に親に別れを言ってからビッタート卿のチャーターした夜行馬車に乗って付いてきたみたいだった。

俺はナディアの可愛い顔からは予想できない行動力にビックリしていた。


俺とナディアの話に急に『おにぎりって何だ?』と加わってきたのは青木勘十郎だった。

青木だけがおにぎりを食べたことがないらしい。

俺がアイテムボックスから取り出したおにぎりの『梅干し・昆布・オカカ・刻み赤シソの混ぜご飯』と今後は、早乙女式馬車で販売される4つの味のおにぎりを出してあげた。

青木は自分の分の弁当を食べずに4つのおにぎりを完食していた。

かなりの美味さで今度は自分で買いに行くと言ってくれたので、冒険者ギルドシーパラ本部に1番近い場所のガルディア商会の駐車場で販売予定となってると教えてあげた。

青木の分の弁当は俺が食べた。

雑談も終わったようなので俺はもふもふ天国のヨークル1号店と2号店の両方に顔を出しに行く。


ナディアもモフモフが大好きとの事だったので近くの1号店の方に案内してあげた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ