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ふむ、どうやら私は嫌われトリップをしたようだ(連載版)  作者: 東稔 雨紗霧


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一部残酷な描写を含みます。

自己責任でお願いします。

 床に伸びている水無鳥を冷めた目で見降ろす。

 軽~いチョップ一撃で倒れるとは何とも笑えるものである。

 愛は全ての不可能を可能に~とか僕の妹への愛情~云々言っていたわりには全然大したことなかった。

 所詮その程度の愛情だったわけか。

 前々から思っていたが薄っぺらい奴である。



 「連れて行って下さい」

 「了解しました」



 廊下に待機していた黒服に指示して気を失っている水無鳥を回収させる。

 


 刑法の世界では、「人をあたかも道具の様に操って」犯罪を実行させた人間を「間接正犯」と呼んで処罰している。

 直接命令したのかどうかは不明だがマインドコントロールをかけて様々な犯罪を誘発し、更には結果的に未遂とは言え放火殺人が引き起こされるところだった。

 一体何にどれだけ関与していたのか未だ全容は掴めていないがかなりの件数に関与していることが窺えるので起訴から裁判に至るまで結構な時間を有するだろう。

 逃亡の恐れもあることから勾留は確実だし彼の愛する妹にはもう二度と会えない事が確定している。

 正直言うと確かに記憶を消す事は不可能ではないのだが現代医学では実現には程遠い。

 つまり記憶消去云々ははったりだ。

 だが、転生者というアドバンテージが信憑性を高めてくれる。

 幼少期から施されていた根深い洗脳が解けるかどうかは不明だがもしも妹さんが他に恋人ができたり結婚、出産をしたあかつきには近況報告と言う名の嫌がらせをする予定だ。

 自殺されてはつまらないから他の生徒会役員含めそこら辺は細心の注意を払う。


 今日は生徒集会が終われば授業も終わりなので今日の所は一先ず終わりと言う事で一足先に帰るとしよう。

 事後処理はまだ残っているが今日は久々にゆっくり寝たい。








 自分が寝ていたベッドの軋む音で目が覚めた。

 誰かが自分の頭を撫でている。

 心地よい微睡みに包まれながら目を押し開くと微笑みながらおはようと告げられる。

 ぼんやりしながらおはようと返し、意識がまた沈みそうになったところでハッと覚醒し、叫んだ。

 




 「何であんたがいるのよ!!」



 起き上がり、そう私に向かって叫んだのは羽崎さん。

 さっきまでぼんやりしていたのにいきなり威勢の良いことだ。

 乗っていたベッドから降り、私が羽崎さんのベッドにいる理由を説明する。



 「なんでも何もここ、私の私有地で、この建物の持ち主も私ですから」

 「はぁ?!私有地って一体どういう……思い出した、私あんたに嵌められて誘拐されて、途中で気を失って……ここはどこ!?みんなは!?」



 嵌めたも何もただの羽崎さんの自業自得だし誘拐なんて人聞きの悪い事を言う。

 



 「先ほど説明した通りここは私の私有地の一つ、体育館で説明したとおり他の生徒会役員達は今頃警察署で身柄を拘束されているのでは?」

 「警察?!ふざけんなバグ風情が!!さっさとみんなを返せ!!」



 そう言ってベッドがら降りてこちらに詰め寄ろうとした羽崎さんは数歩歩いた所でつんのめって転倒した。



 「痛っ……もぅ、なんなのよ!!」

 「本当にお馬鹿さんですねぇ、羽崎さんは」

 「はぁ?!馬鹿にするな!!」

 「普通知らない場所で目が覚めたらまず周囲の状況と自分の状態を把握しようとすると思うのですが」

 「…状態?……なによこれぇ!!」



 そう叫んだ羽崎さんの左足首には足錠がかかっており、そこから出ている鎖はベッドの足元へと繋がっている。

 羽崎さんはこれに足を取られて転倒したのだ。


 外そうとしばらくガチャガチャやった後に羽崎さんはこちらを睨んだ。



 「ちょっと!!外しなさいよこれ!!あたしにこんなことしてタダで済むと思ってんの?!」



 羽崎さんの言葉に思わずふきだしてしまう。



 「何笑ってんのよ!」

 「ふふ、いえ……本当に羽崎さんはお馬鹿さんだなぁと。

 逆ハーを形成しようとするところから始まって幼稚な言動、詰めの甘い偽装の他に胸にナイフを突き立てようとする所とか全てをひっくるめてお馬鹿としか言いようがないですよねぇ。

 今貴女は外部との連絡も取れない状況なんですよ?

 その状況で自分にこんなことをしてタダで済むと云々と吠えるその度胸は本当に愚かですね。

 私が貴女の言う事を聞くと思いますか?」

 「ふんっ、私は女神さまに愛されているのよ?あんたと違って選ばれた人間なの。

 つまりあんたが私の言う事を聞くのは当然。

 バグは黙って消えるか私にかしずいてればいいのよ、分かった?」



 ここまで愚かだとある種の哀れみさえ覚えてくる。



 「女神さまに愛されている?何を根拠にそう思っているのですか?」

 「あたしが前の世界で困っている時、女神さまはあたしの前に現れたのよ。

 可哀想なあたしを助けてくれるって、嫌なことは全部リセットしてしまえば良いって前の世界からこの世界へ連れ出してくれたの。

 みんなを攻略するのに困った所では必ず現れて手を貸してくれたしいつも親切だったわ。

 それが愛されてる以外に何があるのよ。

 あんたがくるまではイベント回収も順調だったし、後は静夜君だけだったのに……それなのに、それなのに邪魔しやがって!!

 あんたが来てから女神さまも現れなくなったし静夜君は攻略できないし、みんなは捕まっちゃうし、全部、全部全部全部あんたのせいで可笑しくなったのよ!!!

 ヒロインはあたしなのよ!!?あんたなんて『君と永久に』に出てこなかったじゃない!!

 ただのバグじゃない!!バグのくせに調子に乗るな!!さっさとそこの窓から飛び降りて死ね!!!!」

 「死ねだなんて随分酷い事をいいますね」

 「あんたがあたしにした事の方が酷いじゃない!!」



 そんな酷い事をした覚えはないのだが。

 どちらかと言うと酷い事をされたのはこちらである。



 「因果応報と言う言葉を知っていますか?

 過去及び前世の行為の善悪に応じて現在の幸・不幸の果報があり、現在の行為に応じて未来の果報が生ずることです。

 羽崎さんがこの世界で行ってきたことは婦女暴行、売春強要、違法薬物の使用及び販売、窃盗、横領、恐喝とまあ華々しいラインナップですが因果応報説に則ってそれなりの報いは受けて貰います。

 本来は刑務所行きなのですがそれでは面白くない。

 なのでここは一つ羽崎さんが他人に対して行ったことを体験して貰おうかと思います。

 良かったですねぇ、生徒会役員の誰かと肉体関係に至る前の清らかな体で。

 初めてが暴行と言う方の気持ちを貴女も知ることができますよ」



 私の言葉に青褪めた顔をする羽崎さん。

 震える口で声を絞り出す。



 「あ、あたしにそんな事して許されると思ってんの?!

 そんな事女神さまが許さないんだから!

 今あたしを解放して謝るなら許してあげない事もないわ。

 ほら、さっさとしなさい」



 ここまで言ってこの態度をとるとは羽崎さんはある意味大物かもしれない。



 「ところで羽崎さん、さっきから私の事をあんたあんたと言っていますが、私の名前知っていますか?」

 「はぁ?あたしにあれだけの事をした相手なんだからそんなの知って………あれ?」



 私に言われて初めて気付いたようだ。

 名前も覚えて貰えていないとはなんとも悲しい。



 「…ちょっと待って……あんた、一体なんなの?

 そうよ、そう言えばあんたの名前を誰かが呼んでもあんたの名前だと思っても何て名前かは認識して無かった。

 そんな事、ありえない………あんた……何?」



 怯えた様にこちらを見つめる羽崎さんに笑みを深める。

 その笑顔を見て更に怯える羽崎さん。

 あぁ、いけない。

 そんなに怯えられたらますます怖がらせたくなってしまう。


 おもむろに羽崎さんに近付くと羽崎さんは私から逃げるように後ずさる。

 壁際まで追い詰めるとへたりこんだ。

 目を離した瞬間殺されるとでも思っているのか怯えながらもその視線は私からは逸らさない。

 しゃがんでへたりこむ羽崎さんの耳元へと口を近付け、私はそっと自分の名前を囁いた。



 「私の名前は―――」

 



 囁いた後に身を引いて羽崎さんの顔を見ると大きく目を見開いていた。

 その後徐々に震えだす体。



 「どうしたんですか?そんなに怯えて」

 「あ……ああ」

 「なんですか?言いたいことがあるならはっきりと言ってくれないと」

 「な、なんで?なんであんたが……ここに……!前の世界じゃないのに!!」

 「あら?覚えててくれたんですね?」

 「あんたのせいで、あたしが…どれだけ大変な目にあったと……!」

 「前回に関しても全て因果応報で羽崎さんの自業自得なんですけどねぇ」



 前回、つまり前の世界。

 前の世界もこの世界と同じように乙女ゲームを題材にした世界だった。

 その名も『LOVE♡HOSPITAL』

 その名の通り病院を舞台にした乙女ゲームだ。

 内容としては新人看護師として新しく舞台となる病院に赴任してきた主人公がそこにいる数々の名医や同じ新人看護師のイケメンたちと恋愛を繰り広げるという物だ。

 そこに羽崎さんは主人公ではないものの、新人看護婦としてやってきた。

 何もしないか大人しく一人に絞れば良いものを彼女は欲をかき主人公であった友人を差し置いて逆ハーを形成した。

 そして私はそのゲームの攻略キャラの一人の婚約者だった。


 医者でありながら全員彼女にかまけて金を払ってまで仕事をしない上に主要な医師全員が攻略キャラだったと言う最悪の状況。

 羽崎さんに私の前世での名を明かし、前世での恨みも込めて攻略キャラたちに仕事をする様に言う事とこれ以上病院をかきまわすのならお前を徹底的に潰すと忠告したのだが、それを鼻で笑い飛ばされた。

そう、彼女は私の事を完璧になめていた。

 そしてそれから開始される私個人への嫌がらせ。

 ロッカーの中にある個人の荷物を荒らされるから始まって自宅への無言電話に不審物の輸送、動物の死骸を玄関に置くとまぁ、もしかしなくともお前暇なんだろと思う程バリエーション豊かな嫌がらせの数々。

 こちらとしてはその反応は予想していたし訴える証拠として使えるので狙ってやった面もあるとはいえ乾いた笑いが止まらなかった。



 悪化していく勤務環境に何とか婚約者の目だけでも覚まそうとしたが恋に盲目、全て年増の嫉妬からの行動と見なされ無駄だった。

 更には攻略キャラの中に病院の医院長もいたのだから大変。

 私への嫌がらせとしてあんな異常な勤務体制がなされたのだ。

 他の病院から人を借りようにも医院長が敵ではそれも叶わなかった。

 人の命を預かる場所で私利私欲の為にその命を危険に冒す。

 何とも愚かだ。

 流石にその頃には私も諦めがついて友人や他の看護師、ハーレムに加わっていない人たちと結託して仕事しない奴らを何とかして患者を守ろうとしたのだがその志半ばで過労死。

 まぁ、その結果異常な勤務体制や医師たちの行動などが公に発表される事となり病巣が一気に摘出される事となったのは不幸中の幸いだった。



 本来なら私はあの世界で幸せに過ごすはずだった。

 何故ならばそれは更にその前の世界で私は友人に対するいじめを庇った結果殺され、その慰め代わりに用意された世界だったからだ。

 私は特に興味も無かったのだが一緒に殺され転生することになった友人が当時嵌っていたゲームが『LOVE♡HOSPITAL』だった。

 そして友人の要望によりその世界に転生した。



 だが、そこに何故か異分子、いじめの主犯であり私と友人を殺した犯人、羽崎明がやってきた。

 その結果本来の軌道を無視し、私や主人公であった友人の幸せどころか間接的にとは言え私はまたも命を奪われた。

 どうやら神の方の完璧な手違いだったらしい。

 管理が杜撰にも程がある

 


 そして今回もこの世界に羽崎明がいる理由。

 それは単純明快、友人のためだ。

 前回の彼女は逆ハーを形成し、人生イージーモードの所を私の残した証拠を使った友人が叩きのめした。

 だが友人は私とは違い優しい子だったので逆ハー組と羽崎さんの医師免許及び看護師免許の取り消しの後の追撃はしなかったらしい。

 少しは懲りれば良いものを彼女は全く反省していなかった。

 己の逆ハーが壊された事に嘆いた後は私と友人を逆恨みにし、残った友人の殺害計画を立て始めたのだ。

 慌てた神がそれを阻止するべく女神の救済と言う名の自殺を促し、強制転生がなされた。

 


 最初は羽崎明がいるとは思わずただ偶然に同じ名前の主人公だと思って接触した。

 だが、その後に私の知る羽崎明と同一人物だと判明した。

 事後承諾でこの世界に強制転生させたようだ。

 ついでに彼女が死んだ暁には地獄に落とすからこの世界でも地獄を見せてやってくれと神に頼まれた。


 どこまでも適当な神に呆れたが彼女を好きに料理していいとなったのは好都合だった。

 友人に嫌われたくないから前回は程々にしていたがこの世界には友人はいない。

 お陰で思う存分彼女を料理できると歓喜したものだ。

 そして私は条件を一つ追加して神の頼みを聞き入れた。

 その結果実際に私が手を出して救えた患者は3万人もいなかったのだが病院の環境改善により未来で救われる事になった患者の数割+手違いの謝罪+今回の迷惑料も換算され、あの3万と言う数字になったようだ。

 ある意味棚ぼただった。



 羽崎明が乙女ゲームの大好きな男狂いだと言う事は理解していた。

 そもそも彼女が友人をいじめた切っ掛けも乙女ゲームだった。

 好きなジャンルや属性もモロ被りだった様でお前みたいな奴が自分と同じゲームをしている上に同じキャラが好きなのが気に食わないと言う何ともアホらしい理由で友人をいじめ始めたのだ。



 そして、この世界に来た羽崎さんは思ったとおり乙女ゲームの世界だと理解し、前回と同じく逆ハーを形成し始めた。

 少しは前回で反省したのかと思って様子を見ていたが全く懲りていなかった様だ。

 お陰でとてもやりやすく、手のひらでコロコロと転がる羽崎さんは何とも愉快で可愛らしかった。



 ちなみに条件として私が提案したのは元婚約者の転生。

 年下の婚約者だった彼に裏切った報いを受けさせるべく彼を攻略キャラの水無鳥静として転生させて貰った。

 最初は攻略キャラの誰に転生したのか分からなかったがなんとかあぶり出しに成功してよかった。

 途中転生させていた事をうっかり忘れていたがまあ終わりよければ全てよしだ。

 羽崎さんに簡単に骨抜きにされ、自分から10歳年上の私に言い寄って来た癖に年増と罵倒した元婚約者。

 前回で愛想は尽かしていたが私は根に持つタイプだ。

 一度裏切った者は絶対に許さない。

 今はまだ私の正体は明かさないがいずれ時期を見て最高のタイミングで暴露してやろうと思っている。

 その時が非常に楽しみだ。



 「さて、私が貴女を絶対に許さないと言う事が理解できましたか?

 なんせ、貴女に二度も殺されたんですからね。

 私、根に持つタイプなんです」

 「ご、ごめんなさい!謝るわ!謝るから許して!!」

 「謝って済むなら警察はいらないですよね」

 「あたしが頭を下げるのよ?!そこいらの奴とは謝罪のレベルが違うのよ?!許してくれても良いじゃない!」

 「…本当に馬鹿だな」

 「なっ!!」

 「おっと失礼、呆れて思わず言ってしまいました。

 長話が過ぎましたね、ドアの外で待っている方も大分待たせてしまいました。

 そろそろ入って貰いましょうか」



 私の言葉にドアが開き、薄汚れた格好のおじさんが数人入ってくる。



 「な、何?なんなのよ?」

 「この方々は羽崎さんのお父様や貴女のわがままにより会社が倒産され、家も家族もなくした人達です。

 今現在は公園の一角で暮らしているそうですよ。

 今回の羽崎さんの相手をして下さる優しい方々です。

 大分溜まっているみたいなので激しくなると思いますよ。

 良かったですねぇ」

 「本当に良いのかい?」

 「えぇ、思う存分やっちゃって下さい」



 下卑た顔で羽崎賛さんに近付いていく男達。



 「ひっ……や、やめて!来ないで!!そ、そうだ!あたしを解放してくれたらパパに言って貴方たちの会社を元通りにしてあげる!家も前のよりも立派なのを用意するわ!!お金もあげる!!!どう?良い条件でしょ?だから私を逃がして!」



 羽崎さんの言葉に顔を見合わせた男たちはその顔を怒りに歪ませる。

 そしておもむろに羽崎さんに近付き、全力で怒りを振るい始めた。



 「お前の!!せいだ!」

 「お前の!父親の!!せいで!全部!なくなったんだろうが!」

 「家があっても!!家族は!!戻らねぇんだ!よ!」

 「死ね!!」

 「疫病神どもが!」

 「ひっ……痛っ…やめっ!助け……!」



 頭を手で庇い、亀の様に蹲る羽崎さんに男達は殴ったり蹴ったりを繰り返している。

 それをしばらく無言で見つめた後に制止する。



 「痛めつけるのは構いませんがくれぐれも殺さない程度にお願いしますね。

 死なれては困るので」



 そう言うと不承不承と言った風に手を止める男達。



 「ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさい!!謝るから、謝るから助け……ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 「五月蠅い」



 こちらに向けて手を伸ばす羽崎さん。

 その手を男の内の一人が踏み付けた。


 「あ、丁度良いですね。そのまま手を押さえてて下さい」



 合図すると黒服が用意させていた物を持ってきた。

 中に焚かれた炭が入っている壺に鉄の棒が突っ込まれている。

 渡された皮手を嵌め、その棒を引き抜くとその先には判子のように紋章の刻まれた丸い板がついている。

 ちなみにこの紋章は彼女の大好きな『君と永久に』の舞台である学校の校章だ。

 大好きな乙女ゲームの舞台の校章なんだからきっと喜んでくれるだろう。

 真っ赤になったそれを羽崎さんへと向ける。



 「ひっ……何すっ……やめて!放して!!」



 何とか逃げようと暴れる羽崎さんを他の男たちが抑える。



 「暴れると余計な所に当たって大怪我するかもしれないですよ?」



 そう言うとぴたりと動きを止めた。



 「そうそう、その方が早く終わりますよ」



 そう言いながら何気ない動作で鉄を押し当てた。

 ジュウッと音がすると共に何とも言い難い臭いが立ち込める。



 「ぎゃああああああああぁぁあぁぁ!!!!」



 男達を跳ね除け手を抱え、のたうち回る羽崎さんを見つめる。



 「すみませんが簡単な手当をお願いします」



 男達が再び羽崎さんを押さえ、私の言葉に救急箱を用意した黒服が手当をする。

 それが終わり、解放された羽崎さんは手を抱えて蹲り、うわ言の様にごめんなさいと謝罪の言葉を繰り返し口にする。




 「そうですねぇ……流石の私も鬼ではありません」



 私の言葉にハッとし縋る様な顔をする羽崎さんは。



 「殴る蹴るはこの程度にして後は女としての尊厳を奪う程度でお願いします。

 傷に障るといけないので

 あぁ、平手打ち程度なら許可しますよ。

 道具が欲しければベッドの横にある扉の奥の部屋に色々用意してあるのでご自由にどうぞ」



 私が言った事を理解すると絶望した表情を浮かべた。

 その表情に込み上げてくる笑みを私は抑える術を知らない。

 恐らく今私は満面の笑みを浮かべているだろう。

 私の笑みを見た羽崎さんは今までの比ではない位怯え始めた。


 ふと鼻につく異臭に彼女を見る。

 どうやら失禁してしまったようだ。

 焼き印には耐えたのに人の笑顔を見て漏らすとは何とも失礼な人だ。

 保健委員長と言い、この世界ではお漏らしするのがブームなのだろうか。



 注意事項だけ言うと私はその部屋を後にした。

 後ろ手に扉を閉めると羽崎さんの叫びは聞こえなくなる。

 


 目を閉じ、息を吐くと再び笑いが込み上げてきた。

 最初はくつくつと、ついには廊下に大きく響く音量で笑い声をあげる。

 


 あぁ……人様をなめきっている人間を蹂躙するのは何て楽しい事か。

 敵ではないどころか対等な人間だとすら思っていない人間に全てを奪われる様はとても無様だ。

 まぁ、それもこれも全て彼女達の日頃の行いから生じただけの結果なのだが。



 ひとしきり笑った後、その場を後にする。

 今の行為が終わった後にも様々な行事が目白押しで用意してある。

 羽崎さんには存分にこちらの用意したメニューを味わって貰いたい。

 何しろ、宴はまだ始まったばかりなのだから。


これ以上やると規制入るかもなので自重しました。

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