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大神課長は見守っている。

おや、あそこにいるのは…



「あっ!!大神課長~!!!

こんばんは~!お買い物ですか?!オレもなんですよ~」



目が合ったと思えば目の前にもう来てる丹波君。

おやおや、だいぶ俊足だねぇ。



「あなた、部下の方ですか?」



下から声がかかる。

車椅子に座った妻がにこやかに問い掛けてくる。



「うん。新人さんなんだよ。」



「主人がいつもお世話になってます。ふふ、元気な子ねぇ。」



「あっ!大神課長の奥さん…えっと、奥さまですね、大神課長にはいつも大変お世話になってます!本当にすんごく!!」



「あらあら、そうなの」



「丹波君、ここは君の家から遠い店だけど、いつもここまで買い物に来るのかい?」



「豆っ子~、いきなり走るな。」



おや、この声は…



「あれ?

大神課長、お疲れ様です。奥様とお買い物ですか。

はじめまして、水卜といいます。

大神課長とは別の課に所属していますが、課を越えて大変よくしていただいてます。」



流れるように水卜君が挨拶をする。

ちょっとチャラチャラしているが礼儀もなっているし、ユーモアも溢れる優秀な子だ。

うちの樋口君も優秀なんだが、人間味的に危ういところがあるから見習ってほしいと思う。



「水卜君と丹波君は一緒に来たのかい。」



「えっと、穂積先輩と鈴木先輩も一緒なんですよ!

穂積先輩に唐揚げ作ってもらうんです!!」



うん?

ちょっと分からないな。つい水卜君の方を見てしまう。



「あー、ちょっと説明が難しいんですが…

明日、大神課長達の課の何人かでバーベキューすることになっていて、俺も流れで一緒に行くことになりまして。

鈴木が穂積さんの家に泊まって一緒に参加する時に手料理をごちそうになるのに便乗して、朝ごはん用の弁当を作ってもらう事になったんです…

ってよく分からないですよね、ははは…」



「いや、なんとなくわかった気はする。」



おやおや、穂積さんが社外で会社のメンバーと出掛けるなんて珍しい。

やはり同じ女性の鈴木さんが入ったことで少し変わってきたのかな?

色々大変な時でも多方面に手を差し伸べてくれて、とても頼りになるけれど、危うさも感じて心配になる子なんだよなぁ。

この前相談を受けてもなかなか力になれず申し訳ない思いをしていたので、楽しい…多分楽しいんだよね?な予定があるのは良いことだ。



「大神課長!

それに早苗さんも!お久しぶりです。調子どうですか?」



そんなことを考えていると本人がやって来た。

若い女性にしては洒落っ気があまり無いけれど穏やかで優しい娘さんだ。



「まぁまぁ、さやちゃん。

そこそこの調子よ。ふふ、会えて嬉しいわ。

私の時もだけど、主人が大変な時もお見舞に来てくれたり、美味しいお菓子をもって話に来てくれたりして本当に嬉しかったのよ。

なかなか直接会えなくて、お礼を言えなかったわね。

ありがとう。もしかして…今日はデートなの?」



「…え?」



きょとん、とした顔で穂積さんが首をかしげた。

ああ、これは分かってない顔だね。妻は恋愛話が昔から大好きだからついつい男女が仲良くしているとそういう風にみがちなんだよなぁ。



「ははは、今日は違うんですよ。」



意味が分かってない穂積さんの代わりに水卜君が答える。



「まぁまぁ、そうなの?

さやちゃん。あなたお年頃なんだから。そろそろ好い人見つけたら…?

って、こんなこと言うの失礼かしら…ついついおせっかいおばあさんになっちゃうのよねぇ…

さやちゃんとても良い子だから幸せになってほしいの。

まぁ、結婚だけが幸せじゃないけど…

さやちゃんはとても素敵なお嫁さんにもなれると私は思うの。」



にこにこと妻が言う。

結婚が幸せになる事とは限らないものだが…

張りつめて折れそうで心配になる穂積さんが寄りかかれる存在ができたらいいのになぁと願ってしまう。

しかし、水卜君はないんじゃないかな?妻よ。

確かに優秀なんだが、穂積さんにはちょっと合わないんじゃないのかな?少しチャラチャラしすぎてるんじゃないかな?






★★★★★




鈴木さんは化粧室に行っているということで会わずに3人と別れたので、妻に先程思ったことを伝えると何故か鈍すぎるとなじられた。

全く…恋愛好きにも困ったものだ。



「あなたの部下は良い子達ですねぇ。」



「そうだねぇ。

部下もだけど上司をはじめ、会社も色々理解した上で助けてくれているから今も仕事ができているんだよ。

ありがたいことだね。」



「あなたが積み上げてきたものがあるからこそね。ふふ、鼻が高いわ。」



「誉めてもなにもでないけど…今日は給料日だから、君が好きなもの食べて帰ろうか。」



「ふふ、言ってみるものねぇ。」



買い物を済ませ、レストラン街に向かう。

とても穏やかに今は妻と過ごせてるが、これは私が病で倒れ、その後妻が事故で歩けなくなってからの事だ。


元々部長をしていたが病に倒れたので後任を出世株で有能な樋口君に任せた。

病後復帰して、私としては課長代理から課長に水海道君を推したかったのだが、樋口君のフォローはもう無理だと断られてしまった。

まぁ樋口君の言い方はきついし、人の心の機微に疎い子ではあるけれど優秀なのは間違いない。

暫くは私がとりあえず緩和材や繋ぎになって後任を育てよう…と思っていた矢先に妻が事故にあい、介護も視野にいれなくてはならなくなった。

仕事を辞めなければならないかと思ったが…会社が引き留めてくれた事や、部下達の助けのお陰で今も仕事を続けられている。

穂積さんはそれ以前からできた子ではあったけれど、こちらが大変な時にとても力になってくれた。

いつかもっと力になれるといいなぁと思っている。




とりあえず…

最近おかしくなってしまっている課の空気や昔に性格が逆行しかけている樋口君を良い方に導けるようにしたいと思う。

今のところ樋口君も私に対してはそこそこの遠慮したり配慮する心が残っているうちに、ね。



思い入れの差はもちろんあるけれど、私にとってはみんなかわいい部下や元部下であるから、彼らが良い環境で良い仕事ができるよう見守っていきたい。







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