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ドワーフ強襲

 昨日は休んでしまいすみません。体調不良で、まだ全快には程遠いので、明日もお休みさせていただきます。

 読んで頂いているのに本当にすみません。

 森全体を覆った霧は晴れることなく、すでに一日が経とうとしていた。

ガルガンディア要塞以外を包んでいる霧のせいで、俺達は一歩も外に出ることができずに後手に回ることになった。

 また、一日が経とうとしていることでガルガンディア要塞の前に精霊族と思われる影が現れた。

現れたというのも物見から見ても、影しか見えずいるのかいないのかわからない。何もしてこないので敵かどうかもわからない。


「大丈夫か、シェーラ」


 霧に対してガルガンディアを護っているのはシェーラの精霊魔法である。シェーラが仲良くしている精霊たちが、この要塞に結界を這ってくれているのだ。


「うん、私はあの子たちを維持するだけだから、ここから動かなければ問題ないよ」


 シェーラがいるのはガルガンディア要塞の中で一番高いところであり、ガルガンディアから森を見渡せる天守閣のような場所だ。


「そうか、必要な物があれば言うと言い」

「ご主人、ありがとう」


 シェーラの世話は女性ゴブリンに頼んだ。ガルガンディアはシェーラに任せればもう少し耐えられるという。

 

「すぐに何とかする」

「うん。待っているね」


 俺の言葉を一切疑うことなく頷いたシェーラに俺は片手をあげて天守閣から降りる。


「サク、策を言え」


 天守閣の階段を下りていくと、サクが頭をさげて待っていた。


「はっ、この霧は魔力ではありますが、精霊が生み出したものです。我々人間では対処しようがありません」

「では、どうする?」

「今回、私が考えた作戦は二つです」

「言ってみろ」

「まずは、霧を吹き飛ばします」

「どうやってだ」

「爆発を起こします」

「爆発?」

「はい」


 火薬の無いこの世界でどうやって森全体を覆うような霧を吹き飛ばすだけの爆発を起こすのか。


「ガルガンディアにいる魔力を持つ者に、魔力を集めさせて一気に解き放ちます」

「どうやって魔力を集める?」

「魔力を蓄積する水晶があります。それに溜めれるだけの魔力を集めます。水晶に込められた魔力が一気に外に放出する際に強力な爆発が起きます」


 火薬ではなく魔力を下に爆発を起こすのだという。


「それではガルガンディアにも影響が出るんじゃないか?」

「多少は致し方ないかと」

「そうか、二つ目はなんだ?」


 俺は一つ目の策を念頭に置きつつ、二つ目を聞いたうえで考えようと思った。


「二つ目は」


 ドッゴーンー!


 サクが言葉を発する前に、ガルガンディア要塞門前に轟音が鳴り響く。


「なんだ!」

「敵が攻めてまいりました」


 ゴブリン兵が駆けこんできて、俺の疑問を解消する。


「敵の方が早かったようですね」

「どういう意味だ?」

「私の策は、霧があろうと、こちらから攻撃を仕掛けるというモノでした」

「どういうことだ?」

「シェーラ殿が霧を退けられるのであれば、逆に敵の霧を利用して、身を隠しつつ敵の本陣に強襲をかけるというものでした」


 サクの言葉に納得しながら、すでに敵の攻撃を受けている今となっては手遅れだ。


「ゴブリンとオークを門に集めろ。指揮はリンが、いや俺が行く。他の門も囲まれているかもしれない。ミリー殿とガンツ殿に各門の防備を」

「はっ!」


 ゴブリン兵はすぐに踵を返して、階段を駆け下りた。


「サク、今の現状を打破する策を考えろ。すでに時は動いた」


 俺の言葉にサクも頷き、行動を開始する。俺は門へ駆ける。門が破られてはシェーラがせっかく守ってくれている結界が破れてしまう。


「門は俺が護る。必ず知恵を絞れ」


 サクには考える時間を与え、俺がこの砦を護る。


「はっ!」


 彼女は後ろ手に返事を返し、俺は門へ向かう。門の向こうでは一人のマッチョな小男が巨大な鎚を持って門を叩いていた。


「なんだあの化け物は!」

「ヨハン様、あれはドワーフ族です」

「あれがドワーフ……」


 身長が150そこそこの小兵が身体よりも大きな鎚を振り回している。


「私も見るのは初めてですが、なんと凶暴で恐いのか」


 そのドワーフは白目を向いて、一心不乱に鎚を振り回す。


「あれは完全に操られてるな」

「そうなのですか?」

「どうやら、今回の大将さんは相手を幻覚で操るらしい」

「じゃあ、あのドワーフさんは操られているのですか?」

「そうなるだろうな」


 俺は門を叩くドワーフを見て溜息を吐く。


「とりあえずあの化け物をどうにかしよう」


 門を隔てた先で、ドワーフが鎚を振るい続けている。俺が到着した時点で、門の隙間を全て土魔法で塞ぎ、いくら叩いても壊れないような作りにしている。しかし、ドワーフの勢いがあまりにも強いため大丈夫だろうかと心配になる。


「一先ずはこれで大丈夫だろうが、あいつをどうにかしなくちゃな」


 門を強化するだけではダメだ。壁も攻撃され続けていればいつかは壊れる。


「どうにかこちらに引き入れれば」


 シェーラの結果内なら正気を取り戻すかもしれない。


「では、こういうのはどうでしょうか?」


 リンが俺に耳打ちしたことで、俺はリンの案を採用することにした。


「やってみよう」


 俺とリンはドワーフが見えるように門の上に上がり、魔法を唱える。風魔法のストリームを魔力を注いで大きくする。


「いきます」


 リンの掛け声で、俺はストリームをドワーフめがけて放った。

ドワーフを包み込んだストリームは周りの霧を吹き飛ばし、隠れていた他のドワーフたちを一瞬見せる。

 俺の魔法に合わせるようにリンがストリームの横から門を叩いていたドワーフをこちらに吹き飛ばす。ドワーフはガルガンディア内の広場に落下してきた。


「どうだ?」


 俺が門から降りて、ドワーフから距離を置いた状態で見つめる。周りにはゴブリンやオークが武器を構えて警戒を続けている。 


「うぁ、ウガアアアアア!!!」


 呻き声を上げたと思えばドワーフは雄叫びを上げて起き上がった。鎚を握り締めたことで、俺も斧を構える。


「失敗か?」

「ふん、スッキリしたわい」


 ドワーフはそういうと鎚を肩に担いでこちらを見た。


「成功か?」

「いちいちうるさいガキじゃな。じゃが助けてもらったようじゃな。礼を言う」


 どうやら成功したらしい。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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