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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
ガルガンディア要塞攻略戦
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500人隊長就任

 ずらりと並んだ500人の軍人達、多いのか、少ないのか。

一万三千人の内の500人である。数にしてみれば少なく感じるかもしれない。

 それでも初めて500人が並んでいる姿を見れば、こんなにも多いのかと圧倒されてしまう。


「皆さん、彼があなた達を指揮するヨハン殿です」


 俺の横にはセリーヌがいた。500人の人間に俺を紹介するためにやってきたらしい。セリーヌの存在は正直めんどくさいが、圧倒された自分としてはありがたくもある。


「セリーヌ様。よろしいでしょうか?」


 セリーヌの気の抜けた紹介に対して、挙手して質問を求めた騎士がいた。


「はい。ミリーさんね。どうしたの?」

「どうして騎士である私達の指揮をそんな少年がとるのでしょうか?トリスタント様やセリーヌ様ならば分かりますが」


 騎士と言ってもミリーと呼ばれたのは女性だった。というか、この場にいる騎士は全てが女性なのだ。

 第三騎士師団に所属している騎士は全て女性で構成されている。また第三魔法師団の100名は半分が女性である。

 第三軍は元々王女様のために造られた軍であり、六羽も含め女性で構成されていた。そのため基本的に女性だけの部隊なのだそうだ。

 そこに王女様が見込んだ男性、つまり俺や他の数名の男性が所属しているらしい。

 俺は500人を見るまでそんなことも知らなかった。


「それはね。今回の作戦にあなた達の働きが重要な役割を持っていて、そして彼が指揮することが、その任務に適していると判断したからよ」


 セリーヌの物言いに騎士達は俺の方を見る。


「私達は、自分の仕える主君は自分で決めたいと思います。よろしいでしょうか?」

「まぁ、あなた達はそういう人種だもんね」


 ミリーの言葉にセリーヌも同意を返すが、何を言っているのかわからない。


「じゃあヨハン殿、ミリーさんと決闘しなさい」

「はっ?どういう流れでそうなったんですか?」

「何っ?聞いてなかったのか?」


 セリーヌは仕方ないわねと言いながら耳元で説明てしてくれる。

その話を要約すると、ミリーは自分達の主人としてヨハンを認められない。

 しかし、ヨハンが強さを示し自分を倒すほどの強者であれば従うという脳筋発言をしていたらしい。


「とっいうわけで、皆さんもミリーさんが代表で問題ないわね?」


 セリーヌは400人の騎士を見渡して反対がないか確認をとる。

どうやらこの中でもミリーと呼ばれた騎士殿は相当な実力者ということだ。


「ヨハン殿に説明しておくと、ミリーは五千人将よ。トリスタントさんを総大将である団長とするなら、次の次ぐらいに偉いわ」

「それっと俺に戦うメリットあります?」

「皆に認められるわよ」

「それだけじゃあな」

「それじゃあ、あなたが勝ったら望むことを一つ叶えてあげるわ。もちろん仕事に関してだけど」

「それいいですね」

「無茶な要求は飲めないわよ」

「もちろんですよ。仕事に関することだけにします」


 セリーヌに報酬をもらうことを決めて、ミリーを見る。

副団長の次に偉いということは、三番目に強いということだろうか。


「わかりました。なんとかやってみます」

「へぇ~勝てるつもり?」


 俺の返答にセリーヌは嬉しそうな、楽しそうな顔になっていた。

もしかしたらミリーを事前にたきつけていたのも、セリーヌかもしれないと思いながら、俺は全員が見えるように中央へと移動する。


「ちゃんとした自己紹介がまだだったですね。俺は第三魔法師団副団長ヨハンです。どうぞよろしくお願いします」


 俺はミリーだけでなく。集まった500人に聞こえるように自己紹介をする。


「余裕があるんですね。副団長殿」


 そんな俺の自己紹介を聞いて、ミリーが剣を肩に担いで待ってくれていたらしい。


「余裕なんてないですよ。でも、多分この中では俺は年下です。礼儀を忘れてはいけないでしょう?」

「年なんて関係ありませんよ。礼儀もね。あなたが力を示せば、私達は納得します」


 ミリーの言葉に多くの騎士が頷いた。

本当に脳筋集団だと思いながら、100名の魔法師団の方を見れば、俺が勝つことに期待しているのか祈るようなポーズをとっている人までいる。


「それでは始めましょうか」

「ええ、では遠慮なく」


 ミリーは持っていた剣を肩からそのまま振り下ろした。

予備動作がないので、反応が遅れる。なんとか二本の斧で受け止めることができた。


「へぇ~魔法使い様なのに斧を使うのですか」

「俺は、元々冒険者で戦士ですからね」


 俺はそのまま両手で押し返し距離をとろうとするが、それを許してくれるはずもない。


「ふふふ。面白いですね。ではこういうのはどうですか?」


 中途半端に距離を空けたことが仇となる。中距離はミリーの距離だったらしく。剣の突きが放たれる。

 高速の剣は数本に見えるぐらいに速く、魔法が使えなかったら危なかった。


「無詠唱!」


 セリーヌの叫び声が聞こえた気がしたが、今は聞いてる余裕なんてない。

 

 俺はミリーと自分の間に氷を作り出して剣を止める。

さらに、スタンガンの要領でサンダーを指サイズで造りだし、ミリーとの距離を一気に詰める。体に触れるか触れないかの距離でミリー防御した上から電撃を放った。体が軽く痺れるぐらいの雷が防御を突きぬける。


「ウグッ!」


 身体が痺れる感覚など味わったことがないのだろう。突然の痛みにミリーが戸惑い、剣を落として座り込んだ。


「あまり傷つけたくないので」


 俺は決着をつけるため、ミリーの首筋に斧の刃を向ける。


「降参して頂けますね?」

「ああ。私の負けだ」


 俺達のやり取りを見守っていた500人近くの人間のほとんどが、俺が何をしたのかわからないだろう。


 ミリーとの決闘で、俺はある確信を得た。

この世界に来て、魔法とは元の世界にあった便利な道具の応用で、いくらでも用途を変えてくれるし、加減もできる。

 まだまだ知識が足りないが、知識は本を読めば手に入る。

知識を得ればレベルが上がる。俺は最高の環境に身を置いているのかもしれないと実感できた。


「それまで勝者ヨハン!」


 負けを宣言したミリーを見て、一番驚いていたセリーヌが何とか覚醒して、勝利宣言告げる。


「大丈夫ですか?」


 スタンガンで一時的に動きを止める不意打ちだったから、次は効かないだろうなと思いながら、ミリーに手を差し出す。

 すでにスタンガンによる痺れはとれているはずだ。


「ああ、ありがとう」


 俺の手を握るミリーの頬は若干赤かった。

ミリーを起こして、500人の正面である所定の位置に戻るとセリーヌが脇腹を小突いてくる。


「ちょっとどうなっているの!あれは何よ」


 小声なのに偉くデカい声で質問してきた。

それはセリーヌだけでなく、他の者も思った疑問だったらしく興味津々な視線を向けてくる。


「簡単なことですよ。サンダーの魔法を指サイズに縮小して、瞬間的にミリーさんの身体を痺れさせて動けなくしたんです」


 俺の説明を聞いても理解できていない者がほとんどみたいだが、魔法師団の連中はなぜか誇らしげな顔をしていた。


「まっまぁ、これでみんなもヨハン殿の力はわかったわね」


 多分俺の力をわかっていないセリーヌが、話をまとめようと話を切りかえる。


「ええ。私は認めます。魔法使いとの戦いは想定外なことがたくさんと起こると勉強になりました」


 ミリーの発言に分かっていなかった者達も、納得し始めて拍手が起こり始めた。


「ヨハン隊長!よろしくお願いします」


 ミリーの声に続いて、500人が敬礼する。


「「「よろしくお願いします!!!」」」


 拍手のなかで、俺はセリーヌに近づき。


「約束守ってくださいね」


 と囁いておいた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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