紅き眼の青年
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オヤジの治療を終えると、声をかけた。
「どうなっているんだ?」
「さぁな。俺にも分からん。一週間ぐらい前から噂があった。夜になると、人を襲う奴が出るってな。最初は一人の奴が夜に徘徊していたらしい。それを見つけた奴が襲われた。次の日、襲われた奴と襲った奴がまた違う奴を襲って、噂が流れ出して一週間でこの有様だ。まさかここまで大きな事件になるとはな」
最初は噂程度だった。村長も噂話があるとか言っていた。
「お袋達は無事なんだな」
「もちろんだ。指一本触れさせてねぇ」
力こぶを作って笑う中年オヤジに、昔を思い出して嬉しくなる。
「そうか、ならここは任せる。俺はこいつらがどこから来てどこに帰るのかを調べてくる」
「本当に……」
「うん?どうかしたのか?」
「何でもない。ハンスの奴が辺境伯様に知らせに行っている。それまでどうにか持ちこたえろ」
オヤジは何かを言いかけて、話を逸らした。
ハンスとはランスの父親で、昔は冒険者をしていたオッサンだ。かなり強くて何度か稽古をつけてもらったことがある。親父と違って頭もいいから安心だ。
「わかった。後は頼む」
リンを連れて駆け出す。ガッツにも知らせた方がいいかと思ったが、今から探している時間惜しい。
何より夜明けが近くなってきて、間に合わないと判断した。
俺は変になっている人間たちが多く集まっている場所へと向かう。その様子を伺いながら、夜が明けた後はどこにいくのかを突きとめるのだ。
「お父様、良い人でしたね」
「そうか?」
「はい。ヨハンさん笑っていますから」
俺はどうやら気付かぬうちに笑っていたらしい。
「私、安心しました」
「心配かけたな」
「いいえ」
リンもニコニコと笑っていた。
日が昇る少し前、変になった奴らが同じ方向に退去していった。
俺達はそれを追いかけ、変になった奴らが森の中に入って行くところまでつけてきた。
「リン、ここからは俺一人で行く。退路の確保を頼む」
「私もお供します!」
俺の言葉にリンは逆らい、声を荒げるが認めるわけにはいかない。
「ダメだ。もしも俺が帰らないときは、ガッツに俺が森に消えたことを伝えるんだ」
「でもっ!」
「頼むぞ」
俺はリンの返事も聞かず、森へと足を踏み入れた。どんな奴がいるかわからないためリンの世話までしていられない。いつも以上に警戒を強めなければならない。
俺はステータス画面を開く。
名 前 ヨハン
年 齢 14歳
職 業 冒険者(ランクC)戦士、エリクドリア王国第三魔法師団副団長
レベル 42
体 力 270/350
魔 力 200/256
攻撃力 223+10
防御力 261+10
俊敏性 270+10
知 力 282
スキル
斧術 6/10
投擲 4/10
乗馬 3/10
攻撃力上昇
防御力上昇
敏捷性上昇
体力自動回復
魔力消費半減
経験値アップ
アイテムボックス
魔 法
ヒール 6/10
ウォーターカッター 4/10
ファイアーアロー 3/10
ファイアーボール 1/10
ストーンエッジ 1/10
ウィンドーカッター 1/10
ライト 1/10
サンダー 1/10
アイスカッター 1/10
兵 法 背水の陣
協力技 雷神剣
スキルポイント 34
さらにスキル覧を開いて、夜目と探索を修得する。
夜目、暗闇でも視界がクリアになるスキル
探索、レベルに応じた半径の生物がどこにいるのか知ることができるスキル。
どちらもレベルがあるので、1ではあまり期待できないが、無いよりはマシだろうというぐらいだ。
さらに、レベルが40を超えたことで、違う職業のスキルが習得できるようになった。
本来戦士である俺が習得できない。『気配断ち』と呼ばれる職業忍者でしか習得できないスキルが入手できた。
スキルポイントの消費は多いが、今の状況ではありがたいスキルだ。
気配断ち、自身の気配を消すことができる。その気配を消した場所から身動きが出来なくなる。
三つのスキルを修得したことで、スキルポイントを使い果たした。
それでも変な奴らを追いかけるのには最適なスキルを修得で来たため、森を突き進んだ。
探索のスキルを使うと大小様々な点が左目に浮かびあがり、色分けされている。ゲームの時を思い出すならば、赤点は敵、青点は味方、緑はNPC、オレンジは敵になり得る存在と認識される。
現在、リンは青、変になった男は赤で表示されていた。
後はほとんどがオレンジに表示されているので、動物か魔物がいるのだろう。
「起こさないようにしないとな」
俺は警戒を強めながら夜目を使い、変になった男の後をつける。
「どうやら今日も成功したみたいだね」
変になった奴らをつけていくと、白髪頭の青年が両手を広げて変になった奴らを出迎えた。
青年が見える位置で物陰に隠れ、気配断ちのスキルを発動させる。
「どうやらあの男の言っていたことは本当だったみたいだね。この僕こそが王に相応しい。まぁ忌々しいのは太陽と言ったところか」
キザッタらしく髪を書き上げ、変になった女に近づいて首筋に歯をたてた。
「何をしているんだ?」
俺の呟きは誰にも届かない。
「美味い。やはり飲むならば女性に限るな。体も元気になるし、何より雑味が無い」
訳の分からないことを言いながら、青年は飲み終えた女を退かせて、一人一人女性の髪を撫でていく。
「うむ。男共など使い捨てればいいが、女性は代えを探すのが大変だからな。大事にしなくては」
青年は一通り女性たちの髪を撫で終えると、変になった者達を連れて歩き始めた。
このまま追っても良いモノかと考えている所で、馬鹿でかい声が森中に響いた。
「ヨーハーンーーーー!!!どこにいるのだ!単身で乗り込むととはどういうことだ!」
聞き覚えのある怒鳴り声が森中に響き渡る。
「無粋。しかし、誰かを探しているのか」
青年は声に反応して周囲を警戒する。紅い目に殺意が込められ俺のすぐ上に視線を止める。
圧倒的な力を持った強者が放つプレッシャーに両肩が震えだす。紅い目を見た瞬間から相手が化け物だと判断できた。
俺は見つからないように息を殺し、気配断ちに集中する。
「ふむ。この辺には誰もいないようだ。しかし、先ほどの声を聞く限り、調査が始まっているのかもしれないな。この辺で実験するのは今日で最後だ。行くぞ」
青年はそのまま変になった奴らを連れて去って行った。
俺は青年の姿が消えるまで必死に息を殺した。姿が見えなくなると、聞こえてくるガッツの声に安心感を覚えていた。
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