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騎士に成りて王国を救う。  作者: いこいにおいで
最終章 誰がために
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巨人と冥王

 雲まで届くほど高くまで巨大化したジャイガントは、拳を握りしめて冥王に向けて振り下ろす。その手には武器は握られておらず、ただ拳があるのみだ。

 

「武器はどうした?」

「あれは我の力ではない。お前を倒すには我自身の力で成さなければならないのだ」

「ふん。戦士としての教示か」


 冥王はジャイガントの男気を嫌いではないと思えた。同じ八魔将と言われていても、それぞれが個々であったときから共感できる。ほとんど話すこともなかったが、戦場を好み戦いに生きるジャイガントは唯一自分と似ていると思えたからだ。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ」


 ジャイガントから降り注ぐ拳は一度で終わらない。天空から振り下ろされる拳は、休むことなく冥王へ叩き込まれる。砂煙が上がり、地面に穴が開いていく。二人の戦いは前回同様人智を越えた戦いと化した。土が割れ、地響きがおき、立っていることすら危なくなるほどの衝撃が辺りを巻き込み出す。


「当たらぬ攻撃を続けても意味はないぞ」


 冥王は凄まじい衝撃波と、速く強い攻撃を繰り返してはいるが、冥王を捕らえきれずにいた。


「ならば、反撃してみせよ。貴様の攻撃など食らわぬ」

「なら受けてみろよ」


 魔剣を握りしめた冥王が、ジャイガントの攻撃をかいくぐり魔剣を振るう。それは凄まじい斬撃となってジャイガントに襲いかかる。それを食らっていればジャイガントは前回と同じように、ここで戦場を離脱していたことだろう。しかし、凄まじい斬撃であろうと、わかっていれば問題ない。ジャイガントは冥王の斬撃を予測していた。だからこそ、冥王の動きを見ていれば、いつ攻撃をするのか予測できる。


「なっ!」

「お前に我の攻撃が当たらないように、お前の攻撃も我には届かん」


 斬撃を放ったことで無防備になった冥王めがけて、ジャイガントは拳を振るう。冥王はジャイガントの拳を魔剣で受け止めるが、その勢いを止めることはできずに冥王の体は地面へと突き刺さる。


「グハッ!」

「やっと一発か」


 ジャイガントはやっと入れれた一発に息を吐く。それはコンマ数秒の出来事であったことに間違いない。間違いがないが、冥王が次の動きをするのには十分な時間だった。


「舐めるなよ」


 冥王はジャイガントの拳を地面に受け流し、さらに体ごと回転して強力な斬撃をジャイガントの左腕にたたき込む。

 コンマ数秒で行われたそれらの行動に、ジャイガントは考えるよりも先に体が動いていた。それは自らの腕を捨てるという行為に繋がった。魔剣の呪いが体を伝わるよりも早く。ジャイガントは右手で出現させた武器によって、自らの腕を切り落とした。しかし、次の瞬間にはその腕は新しく生え替わり、冥王を殴りつける。


「ぐっ!」


 落ちてくる腕と、振り下ろされる拳を同時に裁くことはできず、冥王はその場から身を引いた。


「逃げるか。それもよかろう」


 この戦いにおいて、初めて冥王が退いたのだ。それはジャイガントの猛攻が冥王に勝ったことを意味する。ジャイガントは出現させた武器を冥王めがけて振るう。

 それはこの戦いにおいて初めて、ジャイガントが冥王に向けて放った武器による攻撃であった。そして冥王自身もわかっている。前回の戦いで、冥王の武器は冥王自身に傷を負わせた。

 冥王は魔剣を横にして、ジャイガントが振るう神の武器を受け止めた。それは神が造りし武器同士が衝突し合った。


「冥王!!!貴様の最後だ!!!」

「俺は負けん。これから、俺は俺の世を造るのだ」


 二人の思いがぶつかり合い、最大限に武器の性能が発揮される。魔剣は禍々しい黒きオーラを放ち、ミョルニルは碧き雷を放ってぶつかり合う。均衡していた二つの力は、中央で力を集約していく。

 それはとてつもない力を持っており、押し負けた方にその力が全て加わることだろう。力と力のぶつかり合いは、ジャイガントに有利に思えたが、冥王はその禍々しい技を持ってジャイガントと均衡し合う。


「滅びよ!!!」


 ジャイガントは叫びながら力を増していく。


「馬鹿力め」


 冥王は苦しくなる。魔剣の力は、この世界に二つしかない選ばれた武器なのだ。だからこそ同じ神の武器であったとしても、ランクというモノは存在する。魔剣とミョルニルでは、魔剣の方が上だということだ。

 

「巨人風情が勝てると思い上がるな。俺こそが冥界の王である」


 冥王は押され始めた自らの力をプライドと怒りを持って押し返す。均衡は数分続いたが、それでもいつか終わりは来るというものだ。大気中に渦巻く魔力を吸い続けるジャイガントの力は、衰えることなくさらに増していく。ランクなど覆すほどの怪力を持って、冥王に止めを指すため全てを注ぐ。


「王には民がいるのだ」


 冥王は力を振り絞り均衡する力を支えながら片手をあげる。それを合図にジャイガントの背中へ衝撃が走った。ジャイガントの後ろには、数千のホーンナイトたちによる矢が射られていた。


「卑怯な!」


 二人の戦いを見守っていた死霊王が、すぐさまジャイガントの援護に入るが、すでにホーンナイトの邪魔は入ってしまった。均衡していた二つの力が傾き始める。


「小細工でどうにかできると思うな」


 ジャイガントは邪魔が入ったことで、更なる力を込めて冥王を押し始めたのだ。


「バカな!」


 均衡していた力の集約が一気に冥王へ流れ込む。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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