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敵は死霊王

総合評価が800ポイントを超えました。

ブックマークも300件を超えました。


評価、ブックマーク頂きありがとうございます。

沢山の方に読んで頂き本当にうれしく思いますm(__)m

 ヨハンとリンが王都を立ったのは、挨拶を済ませてから三日後のことだった。


 カンナたち第二軍は通達をしていたこともあり、挨拶を済ませるとすぐにランス砦に向かって軍を移動させた。セリーヌも、カンナが移動を開始した二日後に辺境伯領へ向けて軍を出立させた。


「ヨハン元帥、本当によかったのですか?」


 横に並び立つリンは、青い将軍服に身を包み、質問を投げかけてきた。


「何がだ?」

「元帥自ら出陣してもよかったのですか?何より、王都を離れてもいいのですか?」

「元帥自ら出陣したほうが、兵の指揮は上がるだろ。何より出陣自体は問題ないだろう。王都を離れたことも、その方が丸く収まるのも事実だよ」

「丸く収まる?」


 リンはヨハンの言葉の意味が理解できずに聞き返してきた。


「リンは自分が育てている畑によそ者がやってきて、畑を好き勝手にいじられていい気がするかい?」

「はっ?なんの話ですか?畑?」

「いいから質問に答えて」


 リンは黙って考え込み、答えを出そうとしていた。


「……畑を育てたことはありませんが、確かにいい気はしませんね」

「だろ?王都っていうところは畑なんだよ。良くも悪くも貴族社会だ。そこに成り上がりの元帥に、あれやこれやと言われていい気がするかい?」

「あっ!なるほど」


 ヨハンの言いたいことを理解したリンは何度も頷く。


「お偉い人たちにも、お偉い人たちの仕事があるんだ。俺たちが好き勝手していいわけじゃない。なら今まで通り丸投げにして、戦場で戦っている方が気が楽だろ?リンならそんな場所で働けって言われたらどうする?」

「……かなりしんどいです。確かにヨハン様の言う通りですね。でも、ランス様はどうしてヨハン様を元帥になされたのでしょうか?」


 リンの疑問はもっともである。


「ランスは楔を打ちたかったんだろうな」

「楔?」

「一つは、貴族や王族が好き勝手しないように。一つは、軍を任せられる頼れる人物がいないことに。そして最後に……」

「最後に?」

「自分の帰れる場所を残しておけと言いたかったのだろうな」


 俺の言葉にリンは感心するようにこちらを見た。


「まぁ元帥とか言われるより、様の方がいいから、リンは今のままでいてね」

「えっ!もう、二人だけの時だけですよ」


 自分が元帥ではなく様付けで呼んだことにリンは不満そうだが、ヨハンとしても元帥になってから閣下か元帥と呼ばれるのでげんなりしていた。


「それに次の相手からは、かなり警戒しなくちゃいけないと思うんだ」

「次の相手ですか?」

「うん。次からが本命の相手だからな。今までの力押しじゃなく、ちゃんとした戦略を練ってくる」

「次の相手って誰なんですか?」

「死霊王」

「えっ!それって英雄様が倒してに行った人ですよね?」

「まぁそうなんだけど。たぶんランスが死霊王と戦うことはないよ」


 ゲームのシナリオを思い出す。英雄ランスは騎士になって、魔王こと天帝を討伐する旅に出る。これはこのゲームのクライマックスが近いことを意味しているんだ。

 英雄ランスが討伐するゲームの中に死霊王との戦いはない。もちろんランスが死んだ時点で王国は滅びて終わりだが、ランスが戦う相手はあくまで竜騎士と天帝の二人なのだ。

 ランスは旅の途中で、竜騎士の配下たちと戦闘をすることだろう。ヒロインが決まっている時点で、ランスは無敵みたいなもんだから、エンディングは見えているといってもいい。


「ヨハン様にはどんな世界が見えているんでしょうね?」

「うん?急にどうした?」

「いえ、いつもヨハン様には驚かされてばかりですから」

「そうか?それを言うなら俺もリンに驚かされてばかりだぞ」

「私がすることなんて大したことではありませんよ」

「そんなことはないさ。冒険者として初めて会った時はオドオドして俺のことをビビっていたのに、第三魔法隊に入隊してくるし。俺が貴族としてガルガンディアをもらい受けたときは、ついてきてくれたしな」


 俺はリンとの思い出を一つ一つ思い出す。


「もう、そんなこと思い出さないでください」

「ダメか?」

「ダメではありませんが……」

「ウォッホン!」


 咳払いの方を見れば、フリードが咳払いをしていた。


「風邪か?」

「そんなわけないっす。はぁ~二人がラブラブなのはわかっていたつもりっすけど、ほどほどにしてほしいっす」


 フリードの言葉を聞いて、後ろを振り返れば、兵士達が顔を背けた。リンの方を見れば顔を真っ赤に染めて照れていた。

 

「ラブラブでいいだろ」

「いやっ、そこで開き直らないでほしいっす」


 久しぶりのメンツに懐かしさを思い出しながら、戦場へ馬を向ける。 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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