『次回 臆病娘は笑えない』
『これにて≪幽霊娘は笑わない≫完結です。』
全部で55話。大変長々と付き合って頂きありがとうございました!!
以前に一度完結していたのですが、ある大会に出品させて頂く為に一度消させていただきました。
結果は残念なものでしたがこれを機に出来るだけ多くの人に見てほしいと思い、修正しなおし毎日更新とさせて頂きました。
もしよろしければ批評・感想などありましたらこれからの励みになります!
『次回に関して。』
彼と彼女の物語がまた書けたらと思っていますがそれはまた先の話になるかもしれません。
『ちょっとした小ネタ』
医者の正体は別途の作品にて登場しているかもしれません。
パラレルワールドのように、ifのような感覚でしたがもしよければ「暴力熱血女と貧弱毒舌男」もどうぞ!(宣伝)
今回の主人公、河合君に関してですが本名は『一宮 扶郎』ですが華の名前から持ってきています。
ふろうか、という、ガーベラの日本名。
花言葉は「我慢強さ」「希望」「常に前進」
そんな華に、アゲハ蝶が引き寄せられる。という気持ちで書いておりました。
笑わない幽霊娘、影宮 阿夏羽の名前はそこから来ています。
『活動において』
【女子高生と七人のジョーカー】
ハーメルンという別途サイトにてPSO2のパロディ作品を毎日更新(約)させて頂いています。PSO2を知らなくても解るように努力しているのでよければどうぞ!未来系ダークファンタジーです。
https://novel.syosetu.org/95041/
【暴力熱血女と貧弱毒舌男】
暴力的で熱血的な少女ユカリと体も弱いし口も悪い、おまけに性格めで悪いヘージの二人の学園物。
コメディ型で一話一話が短いので軽く読めるのでは。
かなり前に完結させた作品です。
続編も少しづつですが更新しています。宜しければどうぞ。
http://book1.adouzi.eu.org/n1084f/
【オンライン・シャッフル】
オンラインゲームをごちゃまぜにしたバトルロワイヤル。
様々なオンラインゲーマーのランカー達がゲームの特徴を使って戦いあう。
その中に紛れ込んでしまった功刀 零のゲームはクイズゲーム。
クイズアトラスのランキング1位。
次回からこちらが更新開始になります。
気持ち的には結構気に入っているので良ければどうぞ。
http://book1.adouzi.eu.org/n0035dm/
以上になります。
本当に、本当に読んで頂きありがとうございました!!
皆様がいつまでも笑顔でいれる事を祈って。
どうして。
笑えるの。
私は頭を上から踏み潰されながら、そう思う。
「ほら! 謝れよ! ほらぁ!」
何を謝るの? 何をしたの私は。
校舎の裏は暗く、それ以上に暗いその惨状は終わる事を見せずに続く。
私を踏む女性は、上から嬉しそうに叫ぶ。
「生きてて申し訳ございません、だろーが! あぁ!?」
その声に、私を見下ろす他二人も楽しそうな笑い声を挙げた。
何て理不尽なの。何で生きてちゃダメなの。
そんな事言い返せるわけも無く、私は涙を流しながら震える声を零す。
「い、生きてて、申し訳、ございません……」
私の言葉に、周りがまたゲラゲラと笑った。
何が楽しいのだろう。
何で、笑えるのだろう。
「そうだよォ? お前が近くに居たら臭いし気持ち悪いしさァ!? ほら! もう一回謝れよ!」
「く、臭くて、気持ち悪くて、も、申し訳ありま」
そこまで言い切る前に、お腹を蹴られる。
無理矢理に腹から息が出る。
無意識に体が縮こまる。
痛い、痛い、痛い……。
「はいもういっかーい! 次ちゃんと言えなかったら服ひん剥いて帰らすからな!?」
どうして、こんな事をするの。
どうして、こんな事が出来るの。
「……あ? 何コレ?」
痛みでぎゅっと瞑っていた目を薄く開ける。
私の目に映ったのは、苛めている女が拾った物だった。
ピンク色の、髪留め。
それを見た時、無意識に強く目が見開いた。
だ、大事にポケットに入れていたのに。
さっき蹴られた時だろうか。
何で出てしまったんだろう。
私のその表情を見て、苛めっ子はニヤリと笑う。
恐怖が込められたその笑えに寒気が走った。
「これ、あんたの?」
首を横に振るう。
縦に振ったら、私の宝物が汚されると思った。
それだけはイヤだった。
「ふーん? だったら踏めよ」
「え?」
間の抜けた声が出てしまう。
何でそんな事を言うの?
ニヤついた笑みは解っているような顔で。
「ほら、言ってんじゃん、踏めよ? ほらいつもみたいに笑いながらさァ」
いつもみたいに? 違う。笑えって、命令してくるのはそっち。
笑いたくない時に笑えって言う癖に。
「ご、ごめんなさい。踏めません……」
何も言えなかった私が始めて抵抗の言葉を出す。
女の子から、笑みが消えた。
舌打ちをした後、その目は酷く濁った瞳で私を見る。
「踏め」
体が震える。
「笑いながら」
逆らえなくなる。
「踏め」
あの目に、何も言えなくなる。
泣いているのに、涙を流しているのに、表情が勝手に笑い出す。
何で? 嫌なのに、放り出された髪飾りに歩を進めてしまう。
「コイツ笑いながら泣いてんよ! 気持ち悪ィ~~」
最低の人間達が嘲笑う。
悔しくて、悔しくて。
だけど私は踏みしめる。
自分の宝物を。
大好きなあの子が褒めてくれた髪飾りを。
大切な髪飾りは、小さな頃から持っている古い物で。
体重を掛ければ簡単に小さなヒビを入れていく。
私の心にヒビが入るように。
もう砕けてしまえば良いのに。
私も、全て。
何で、私が、こんな目に。
誰も、助けてくれない。
泣き叫んでも。
辛い。悲しい。悔しい。苦しい。
「つまんね」
女性の高い声しか聞こえなかった筈の中に、男性の声が聞こえた。
それは苛めっ子達よりも更に頭上から。
塀の上に、一人の男性が座っていた。
逆光が差す光の中、男性の顔は見えない。
「なぁーにが面白いの? すんげーつまんないんですけどー笑いとしてそれ無いわー無いわー」
間の抜けたふざけた様子の声は、言葉とは裏腹に冷たい。
「は!? 何だよお前!!」
私を踏んでいた女が男に向けて声を張り上げる。
男は、すっくと立ち上がる。
振り被るような仕草と共に、男性の大きな声が響き渡る。
「自分、こういう物です!」
男性から女に向けて、袋のような物が飛ぶ。
投げたソレは、弾ける様に女の顔に当たった。
袋から何かがベチャリと女の顔や、周りに飛び散る。
その後、何とも言えない臭いが立ち込めた。
ぶつけられた苛めっ子の一人は放心していた。
周りの女達が、頬を引き攣らせながらぶつけられた女性から距離を置く。
まだ放心している女に向けて、男性は深々とお辞儀をする。
「ワタクシ、クソ田 糞次郎と申します、その名刺大切にして下さいね? 先程、犬畜生から取れた新鮮ピチピチでございます」
男性が言い終わるか、言い終わらないかの間に、苛めっ子は奇声を上げて走り出した。
呆然としている他の女達にも、男性は優しく声を掛ける。
「おや!? 素敵な糞レディーがまだあんなにも! きっと素敵な糞がお似合いになるでしょう!」
そう言いながら、先程の様に振り被る素振りを見せる。
女達は同じ様な奇声を挙げながら逃げて行く。
そんな後ろ姿を見ていると、男性は塀から飛び降りるとニンマリと笑う。
「ギャッハッハッハ! 一発しかねーよバーカ! いやぁ我ながら最高に面白過ぎるな俺!」
その男性に、取り敢えず状況的には助けられたようで。
私は震えながらも声を出す。
「あ、あ、あ、あ、ありがとう……ございます……クソ田……さん?」
「いや本当にそういう名前じゃねーし!! いやダメだ!! 河合はともかくその名前が確定するのはダメだ!!」
お、お、お、怒らせてしまったのかな。
突然の大声に私は反射的に体をビクッと震わせる。
そんな私を見て、男性は少し寂しそうな笑みを向ける。
「久しぶりだなァ……由香姉……」
優しい瞳で私を見据え、少年が優しく笑う。
私を由香姉と呼ぶ、この子を、私は知っている。
「ふー君……?」
この少年を、いえ、私はこの子を知っている。
小さな頃は後ろを良く付いて来てた。
元気な男の子。
「ユカねぇ大丈夫かよ?」
そう言いながらふー君は私の頭についている泥を落とそうとパタパタと手を動かす。
その動作は頭を撫でられているみたいで気恥ずかしくなってしまう。
それに……この子に私、見られちゃったのかな。
「だ、大丈夫だよ」
そう言って慌てて距離を取る。
それで、笑う。
「お姉ちゃんだからね」
そう言って、笑って見せる。
この子の前で、いつもそう言ってた台詞。
何があっても、我慢出来た魔法の言葉。
この子の前で強がる為に。
この子の前では。完璧なお姉さんだって言える為に。
「ギャッハッハ!ユカねぇ」
ふー君は、大声で笑う。
何で笑われてるんだろう。
楽しそうに笑う彼の瞳に、少し寂しそうな色が見えた気がした。
「笑えてねーよ」
あれ? おかしいな。
頬が引き攣ったようになってしまう。
それは、無理矢理笑顔を作ろうとして失敗したみたいな表情。
「あ、あれ、あれ? おかしいな。 大丈夫だよ、大丈夫なんだよ? ふー君心配しないでね? お姉ちゃんだから、大丈夫だから」
この子の前だと笑えた。
何でも出来た。
私はしっかり者のお姉ちゃんだから。
大丈夫だから……。
なのに、笑えない。
小さな頃とはもう違うの?。
何で、何で?
落ちたピンク色の髪留めが、寂しそうに光る。
震える手でそれを拾って、ぎゅっと胸に抱く。
私は、もう昔に戻れないのかな。
頼りにされて、しっかりものの、お姉ちゃんだったのにな。
せめて、せめてこの子の前では、昔の私でいたいのに。
「……ユカねぇ!」
呼ばれて振り向くと、ふー君が手を出していた。
「久しぶりに遊ぼうぜ!」
私の初恋。
少年が、今優しい笑顔で、私に笑い掛ける。
おそるおそる、その手を触ろうとする。
それは腫れ物を扱っているように。
まるで、取ったらまた何か怖い事が起こるんだと言うように。
そんな私の手を、彼は無理矢理引っ張った。
私が引いていた筈の手を、彼が引いている。
大好きだったあの少年が、こんなに大きくなって。
………。
私がヒーロー。
この子のヒーロー。
確かに、そうだったのに。
次回 ―臆病娘は笑えない―




