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二十二話め.無心病


「で、君は影宮君の何だ?」

 ウワーお怒り気味で話しかけられちゃった。

 止めて止めて頭が硬い理系とかマジ苦手意識。


 ていうか、人に向かって何だとはいきなり何だコイツは!


「お前こそ何だ!!」

 強気に返すと医者は少したじろいだ感じ。

 まさかそんな風に俺が返すとは思っていなかったのだろう。

 俺が普通の人間だと思ったら大間違いだ!


「……私は影宮君の無心病を、研究している物だ」


 ほほぉ。

 研究とな?


「研究って何だよ」

 素早く食いついてみる。


「守秘義務だ貴様の様な何処の馬の骨とも解らん奴に教える必要は無い」


「誰が馬の骨だ! アレか!? 遠まわしにウマシカか!? 馬鹿って言いたいのかコラ!!」

 食って掛かる俺を見て、アゲハが俺と医者の間に入るように会話を挟む。


「先生、別に構いません。」


 む、何か言葉にトゲがある気がする。

 ちょっと悲しい。俺はちょっと悲しいぞ!?


 アゲハの言葉に医者は不満そうに鼻を鳴らすと、口を開いた。



「影宮君はとても珍しい病気を患っている。 元の病名を言っても君では解らないであろうから、簡易的に言われている名前を教えてやろう」

 さり気なく馬鹿にされたのを言い返そうと思ったが、折角のアゲハの情報だ。

 ここは我慢して聞こう。


「『無心病だ』」


「無心?病?」

 聞いた事無いぞ? 何だその中二病にありそうな名前は?


 アゲハの方に視線を向けるとアゲハは目を伏せた。


 ってことは本当に病気だったのか……。





-------




 学校の図書館は嫌に静かで、俺が苦手な空気だ。

 不断こんな所に来る筈が無い俺なので、他の生徒が訝しそうに俺を見ている。

 地味に俺は有名らしい。

 ま、俺程の人気者になると……ナ?

 ッフ、と小さく意味深に笑って見る。


 ……どっかで小さな声で『うわっ』て聞こえた! 聞こえたよ!?


「なーんで、お前がココに居るんだ?」

 後ろを振り向くと。

 いつもの面子。

 イケメンと筋肉が居た。


「別に俺が図書室に居てもいいだろ」


 俺の言葉に二人がイヤイヤイヤイヤ、と声を揃えやがった。


「お前が図書館に居るとか、オーケストラーの舞台で一人メタルでギター弾いてる奴くらいありえねーもん」


「微妙に解りやすい例えしてんじゃねーよ!」

 俺の突っ込みにイケメンが人差し指でッシーっと静かに、というジェスチャーをしていた。

 ああ、そうだココは図書室だ。

 周りの迷惑そうな視線に俺は縮こまる。

 くぅ、あまりにもアウエイ。


「お前なー、場所考えろよ? あいつみたいに静かにしろよ」

 そう言いながら指差した先に、筋肉が背中に大量の辞書を縄で縛って背負っていた。

 重しを付けながらスクワットを黙々と続ける彼は、静かに汗を掻き、とても良い笑顔を俺に向けてきていた。


「二宮金次郎地蔵筋トレさ……」


「アイツの方がおかしくね!?」

 確かに静かかもしれないけど見た感じがうるさいよ!


「アレだな、風呂入るのに服着て入って一緒にくつろいでるくらいの違和感だな」

 味を占めたのか、イケメンがどうだ、という具合に俺を見てくる。


「……その例えは解り難いわ」


「で? そんなお前はこんなとこで一体何してんだ?」

 そう言いながらイケメンは俺の前に置いている本を覗き込んで来た。

 その本を見てイケメンは更に訝しそうな顔をする。


「医学書ォ? 見事にお前に会ってねーなおい」


「う、うるせーなー!」

 焦っている俺を無視して医学書を取上げられてしまった。


「何々? 無心病?」

 イケメンは開いている本をマジマジと見ながら眉を寄せる


「アホ幽霊娘が病名教えてくれたんだけどよ、内容は教えてくれなくてさ……」

 何かバツが悪く感じて仕舞うが見られたら最早何を言っても言い訳にならない。


「っへー、それで自分で調べてるんか……へぇぇ~?」

 そう言いながら嫌らしい笑みを浮かべながら俺を見てくる。


「な、何だよ……」

 腹立つ視線だ。

 こうなるから知られたくは無かった。

 必死で調べたりしてるとか、キャラじゃない。

 しかしむかつく視線である。

 殴りたい、ボディーを主に狙いたい。


「……っで、これどういう病気なんだよ?」

 イケメンの言葉に俺は医学書をひったくりパラパラとめくった。

 先程見つけた分り易く書いている部分を開く。

 かなり難しい病気で、ややこしい説明が大量に書いている医学書は、簡単な部分を見つけるのには苦労した。


「心無し、という意味で無心病。特徴的なのは心臓の鼓動がとても小さくなる事らしい。かなり珍しい症状らしくて、一同時に感情の動きが著しく低下する傾向もあるんだと。そっから無心病って言われてるらしい。言っちまえば年を取るにつれて、心音が低下して死に至る病気だってさ」


 医学書を机の上に置いて俺は小さくため息を零す。


「あいつが笑わないのは病気のせいだとよ、しかも死ぬ病気とか笑えねー」


「お前……結構調べたんだな?」

 イケメンが少し驚いた表情を見せてくる。

 確かに普段俺はこんな事はしない。

 授業で辞書で調べなさいとか言われても調べたことはない。

 なぜなら知識で紙切れ如きに負けたとか考えたくないからだ。

 いや実際は負けてるんだが人間気持ちの問題だ。うん。


 だから今回は本当に疲れた……。

 久しぶりに本に目を通したから目痛いし頭も痛い。


「おおよ苦労した……珍しい病気らしいんだよ」

 中々探しても見つからなかった。


「こういう調べたりとか嫌いな癖に……」

 そう言ったイイケメンの表情はまた先程の嫌らしい笑みへと変わる。

 言いたい事ははっきり言えばいいのにムカツク。


「あ、相手の事ちょっとでも知らないと笑わせられねーし……」

 慌て言い返す。

 笑わせるためだけに頑張ったのだ。

 決して、決してだな。アゲハが気になって調べたとかじゃないからな。 


「っへー……」

 俺をマジマジと見ながらイケメンの視線は嫌らしい瞳から興味深い、という様子に変わる。

 いつもの馬鹿にした視線では無い。


「……何だよ」

 あまりにも見てくるので俺もつい訝しく見てしまう。


「イヤ、お前マジであの女好きなのな」


 イケメンの台詞に。

 一瞬、理解に苦しむ。


「……? は?」


「いやだから好きなんだろ?」



「す、好きなわきゃねってばちょれら!?」

 妙な奇声を吐いてしまった。

 俺の声は静かな図書室に響き渡る。

 あ、焦り過ぎだ。

 俺の声のトーンまで一気に上がってしまっている。

 な、ナナナナ何言ってんだ。


「わけ解らん言葉吐いてるぞお前」


「……うむ、落ち着こう」

 一瞬間を空けて深呼吸。


「結構冷静になるの早いな」

 イケメンの言葉に、俺は辺りを見渡すような手の仕草をして見せる。


「周りの殺意ある視線が俺を冷静に戻したのだ……これ以上五月蝿くしたら殺される気がする」

 そう、周りの視線に気づいたのだ。

 すごいぞ、あいつ等すごい目してるぞ。

 イケメンも気づいた様子だ。


「うむ、俺も周りの静かな文系達が徒党を組んで潰しに掛かるのが容易に想像出来るな。武器は本の角か。死ぬなそれは」


「後。別に好きじゃないから、おっけー?」

 取り合えず先程の発言は否定しておく、小さな声で。


 イケメンも小さな声で返す。

「オーケーし難いが今は良いや、んで? お前は病気だってのが解って? ショック受けて笑わせるのに抵抗が出来た的な?」


「……あ? んなわけないでしょ。笑わせるのに病気とか関係ないから」


 関係無い。

 そんなしょうもない……しょうもないと言うのも酷いかもしれないが、そんな理由で出来ない、とか人の言い訳だ。


 知ったこっちゃない。


「……そういう一切人に気を使わねー図太さはいつも通りだな」

 イケメンの呆れた台詞にむっとしてしまう。


「うるせー!」

 相変わらず馬鹿にしてきやがる。

 イケメンだったら何しても許されると思ったら大間違いだぞこの野郎。


 そこでまたニヤッとイケメンが笑った。


「お前のそういう所、俺は好きだぜ?」

 っう、え、いきなりだなおい!

 目が泳いでしまう。 

 ……イケメンに間近でそんな事を言われれば男だろうが焦るわ!

 女装しろ! 女装してからもう一回言え!

 焦っている俺とは別に、静かだった筈の筋肉の方から息切れの声が聞こえてきた。

 静かにしているつもりかもしれないが、煩い。



「ッフ! ッフ! 乳酸が溜まるぜ!! ッフ! ッフ!」

 俺達が会話している間、こいつはずっと筋トレを続けていたらしい。

 筋肉馬鹿は気づいていない、自身の声が大きくなっている事に。

 そして。

 筋肉の後ろから、本を片手に徒党を組む凄い目をしている文系達にも気づいていない。


「痛!? 何をするキサマ達! 痛!! 本の角が俺の筋肉に刺さ……痛! ちょ! イヤー! ヤメテー!」


 ……筋肉が犠牲になっている間に俺達はスゴスゴと図書室を出た。


 仲間だと思われたら俺もやられる。

 しかしこれでアゲハのことは多少なりとも解った。

 放課後、再び考えた上で新たに挑戦だ!!

 


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