表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
二年目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/600

ため息。


「……」


 自室のベッドに横たわり、薬術の魔女は目を閉じる。


「んー……」


身体の中を渦巻く、よくわからない感情を吐き出すように薬術の魔女は(うめ)き声を漏らした。

 一人だと、嫌でも修学旅行の楽しくなかった思い出を思い出してしまう。

 友人Aやその2、その3と過ごした修学旅行の日々や、修学旅行以前の友人Bも加えた学校生活のことを考えてみても、気が付けば嫌なことを思い出してしまうのだ。


 そして、なぜ生兎で、祈羊で、嫌な目で見られていたのか。その理由が、なんとなくわかってしまった。


「(……婚約者(あの人)が、『呪猫の出来損ない』らしい、から)」


 小さく、溜息を吐く。

 今までに読んだ本や体験から、大抵の貴族は他者の不幸が大好物らしいことは分かりきっている。実際のところ、貴族以外でも他者の不幸を好むものは多いけれど。

 特に、『自分は特別だ』と思っているらしい人間などはその傾向が強い。


「(……一体、どこが『出来損ない』なのかわからないけど)」


 再び小さく息を吐いて、寝返りをうつ。

 平民である薬術の魔女自身には、貴族のこと、さらに面倒そうな『古き貴族』の事情など知るわけがない。


「(それに、わたしが聞いたってきっと、教えてくれないだろうし)」


 聞いたって、どうせ忘れてしまう。……のだろうか。多分、忘れる。

 ()()()()()()()と言われていたが、魔術師の男には何の才能がなかったのだろう。


「(……)」


 薬術の魔女は、自身の目で見た魔術師の男のことを思い出してみる。

 彼は様々な魔術が使えて、魔術師の中でかなり上位の宮廷魔術師で、教えるのが上手くて、料理も作れて。


「(……わたしが思う限り、なんでもできる人なんだけどなぁ)」


 思うけれど、彼らの事情など何も知らない。


「(……逆に、()()()()()()()()()()()()()()()()……?)」


 もし、彼が『出来損ないだから』あんなに努力していたのならば。

 彼が、誰かに認められたくて、手を伸ばせる全てに手を伸ばした結果が今の彼だったのならば。


「…………」


 そう考えた時、わけもなく胸の奥が、きゅう、と苦しくなった。


「……考えすぎかも、しれない」


小さく、口の中で呟く。


 なんとなく、魔術師の男に会いたくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ