運命伐採7
「ふべっ」
べしゃ、と地面に投げ出された。と、目の前に小さな樹木がある。
「……あった」
星海の、開けたそこには白色に輝く実があった。
やはり色は樹木の葉に似ているようだ。
白色で、不思議な煌めきを持っている。
木の実は遥か高い場所にあった。
そのはずなのに、気付けば手の届く位置にある。
思わず、魔女はそれに手を伸ばした。
ぷち。
手のひらの上で木の実の千切れる音がして、手元に木の実のずっしりとした重みがかかる。
その瞬間、木の実が消えた。
「わ、」
世界が震え出す。
魔女は急いで若者達の元に駆け出した。
×
若者達の元へ戻ると、まだ睨み合っているところだった。
『暁の君』、若者達共々。術師の行動が信じられなかったようで様子を見ていた。
「29番目! お前、なぜ『実』の回収をさせた? 樹木を破壊したいのか!?」
『暁の君』は大分激高している様子だが、術師は至って冷静に見返す。
「ふふ、違います。『殻』をこうして回収する為です」
微笑する術師の手には、魔女が回収した樹木の『実』によく似たものがあった。ただそれは柔らかそうだった『実』と違い、どこか硬そうで二つに割れており中が空洞だった。
「だが、このままでは樹木が」
『暁の君』の声は震えており、大分動揺しているようだ。そう魔女には察せられた。それだけで、『暁の君』はただの飾りで術師が計画の大半を握っていることが想像できる。……だが、この状況を作り出した張本人である術師は、決定的な証拠を残さないのだろう。
「いえ。問題ありませぬ」
「何?」
「『実』と『殻』が回収されし樹木は、他の樹木に収束するだけでございます故」
「……他の、樹木?」
『暁の君』が訊き返すと、術師はにこりと笑った。
「此の樹木は、二対で一つの樹木で御座います」
その言葉に、『暁の君』と若者達は戸惑う。
「第1の樹木であり、第10の樹木でもある此の樹木には二人の主が必要となるのです」
「二人の主? 俺は誰とも協力など……」
「まァ、兎角。此の通り、樹木は破壊されておりませぬよ」
その言葉の通り、純白に輝く巨大樹木はそこに在った。花のように裂けた樹木の中から、もう一本の樹木が現れたのだ。その事実に、魔女も若者達も戸惑っている。
「29番目、これは一体どういう」
震える世界に、『暁の君』が不安げな言葉を零した。
「慌てずとも。是からで御座いますよ」
術師は集めたすべての『殻』を取り出す。
「わ、」
すると、魔女の杖から集めていた『実』が現れ『殻』と合わさり強大な魔力の塊へと変わった。
「此の現状で、どうにか為る方法は在りませぬ。言ったでしょう? 貴女方に出来る事は無いと」
「儀式の途中で御座います故」と、術師は斜陽卿と猫を振り返る。
「何れにせよ是は起こる事だった。而、其れが今だった……と言う事で御座います」
そして巨大な魔力の塊が巨大樹木とも合わさり、さらに力を増していく。
それが頂点に達した時。
巨大樹木の中から、何かが現れたのだった。




