理解伐採19
港に着くと、友人B、隊商長が待っていた。
そこにもう一人。
「あ。やっと来た……まま」
銀色の巨鳥に乗った長女も居た。
「あれ? どうしたの」
魔女はそのまま長女の方へと近付く。
「ん。まま達の旅にお供しに来た」
「次はきみなの?」
「『次』?」
問うと、長女は首を傾げた。そこで、次女とは何も話していないのだと察した。
「さっき次女が居たんだよ。あ、そうだ。お土産にお菓子あるよ」
「うん。……まあ、ちょっと不安だったから」
「不安?」
「いっそのこと、自分が近くに居ようかなって」
「そっか」
どうやら友人B、隊商長にはすでに話を着けているらしい。
「……しゃべるの疲れた」
「そっかー」
それから、魔女は若者達に新しい同行人の話をすることにした。
船に乗る前に、魔女は若者達に長女を紹介する。
「すっごい美人さんだぁー」
「気持ちはわかるけど、見惚れ過ぎじゃない?」
惚ける黒髪の若者に、魔術使いの若者が脇腹を小突いた。
「この子、『月の半島』で同行してくれるんだって」
魔女の紹介に合わせ、長女は『よろしく』と言わんばかりに軽く頭を下げる。
「この子、今声帯に魔導機の補助付けてるから、あんまり喋れないの」
首に着けている飾りは、思考を声にする魔導機であった。どうやら『魂が発露する』この世界では、長女の保有する多い魔力の影響か言霊の威力が強いらしい。(ただ、魔女は喋るのが面倒なだけじゃないかとも疑っている。)
「そうなんですね」
「……本物、初めて見たわ」
聖職者の若者は『何かしら事情があるのだな』と頷き、魔術使いの若者は本物の『魔術師』に感嘆のため息を零す。
「じゃあ、そこの乗ってる鳥の名前は?」
黒髪の若者が、長女を乗せている鳥について問うた。
『とり』
「えっ、それだけ?」
長女は頷く。
「すっごいわかりやすい名前だね……」
「独特な感性です」
「無理して褒めなくても、いいと思うわよ」
×
「今回の船もけっこう豪華ね」
船内を見、魔術使いの若者は感心する。
「まあ、なんというか『樹木の破壊者』達が乗る、って聞いてから『ちょうどいい船がある』って言われてさ。まあオンボロな船に乗せる訳にもいかないから。交魚の面子とかもあるし」
それから友人Bは長女を見て苦笑した。
「というか、次はそっちの子の方か。ああ、無論使い魔との搭乗は可能だよ」
その言葉に、長女は軽く頷く。
「うーん、もうちょいいい船があればよかったんだけどねー。今回はこの船で我慢してくれる?」
『べつに』
「そっかー、温情ありがとうねー。補填とか必要だったら交魚当主に行ってくれると助かるかなぁ。こっちも回遊の首領だけど、できる事には限りがあるからねぇ」
『ん。だいじょぶ』
そうして、魔女と若者達を乗せた船は『月の島国』に向けて出発したのだった。




