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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
三年目

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新しい要素。


「『お菓子か悪戯か』?」


 仮装をした客が問いかけ、


「『お菓子』!」


と答えた店員が、問いかけた客に『飴』を手渡す。


 また、『飴』がなくなった店では


「い、『悪戯』で……」


と店員は返答し、客から割引券と半分になった料金を受け取っていた。

 『お菓子か悪戯か』の問いかけは、商品を購入する店では購入する前に、体験や参加型の店では参加前に、問いかけなければいけないらしい。


 「うーん、新しい」


 今までにない要素のお陰か、学芸祭は普段よりも盛り上がっているような気がした。薬術の魔女も、少しわくわくしていた。


「『お菓子か悪戯か』?」


 薬術の魔女の店にも、問いかけを行う客は訪れる。


「はい、『お菓子』!」


そう答えて薬術の魔女はお菓子を手渡し、少し残念そうな顔の客から料金を受け取った。

 『お菓子か悪戯か』の問いかけを行う客は、若い子どもや学生の姿が多いが、大人の場合もある。


「んー、学生のわたしがお菓子を渡す側になるとは」


今まではお菓子を渡すのは大人で、お菓子を受け取るのは子供だけだと思っていた。

 だが、今回の学芸祭ではそれを覆すような内容だ。

 その2の話によると、初めは反対の声の方が多かったらしいが、色々と対話や意見の擦り合わせを行なって今のような状態にできたのだとか。


「(すごいなぁ)」


 と、薬術の魔女はなんとなく思う。

 新しいものを思いつくことや、それをうまい具合に周囲と意見を擦り合わせていくなんて。


「(わたしには難しいなぁ)」


そう思いつつ、『お菓子か悪戯か』を問いかけた客さんに『飴』を渡していく。

 薬術の魔女がその2から受け取った飴はバケツ二杯分もある。話によると、バケツ一杯で50個も入っているらしい。

 周囲のお店の保持している飴の量がどのくらいあるかは分からないが、薬術の魔女が保持している飴はなかなか減らない。


「(『悪戯』で安く持っていかれるのも、まあ別に構わないんだけど)」


 基本的に、薬術の魔女が作る商品は野草を利用しているので、いくら安く買い叩かれても懐はそこまで痛まないのだ。


「(まあ、入れ物の代金ぐらいはかかるんだけれどさ)」


『お菓子か悪戯か』を問いかけた客に飴を手渡しながら、薬術の魔女は思うのだった。


×


 そして一日目は、飴が途切れることなく無事に終わった。


「意外と飴って消費するんだなぁ……」


店じまいをしながら、薬術の魔女は呟く。

 いつのまにか、バケツ二杯分もあった飴は残り僅かになってしまっていた。

 空っぽのバケツを覗き込みながら、薬術の魔女は『新しい飴を補充しなきゃだなぁ』と、のんびりと思っていたのだ。


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