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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
三年目

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第六学年。


「あ、おはよー」


 学年初めのオリエンテーションの場に向かおうとした薬術の魔女を呼び止める声があった。それはよく知っている声だったので振り返ると


「やっほー、夏休みぶりだね」


 友人Bと、もう一人、背の高い見知らぬ女学生がいた。


「あれ、今日は一人?」


周囲を見回し、友人Bは薬術の魔女に問いかける。友人Aとその2の姿が近くに見えない事に首を傾げたようだ。


「うん、なんだか2人とも用事があるって」


と、話し始めたところで、


「あの、まだ話の途中なんですけど」


見知らぬ女学生が声を挟む。その声に、改めて薬術の魔女は女学生の姿を見留めた。


「(すっごく、綺麗な子だ!)」


 滑らかな肌に涼やかな目元、すっと通った鼻筋に花弁のような小さくも鮮やかに色付いた唇と、精巧につくられた陶器人形のようだ。


「あ、そうだった」


 あまりにも綺麗で薬術の魔女が言葉を失っていると、友人Bはやや気まずそうに笑った。


「……えっと、だれ?」


「紹介するね。修学旅行でおんなじ班になった子。宮廷魔術師を目指してるんだってさ」


 薬術の魔女が首を傾げると、友人Bは隣にいた美しく輝く金髪の少女を紹介した。


「へぇー」


魔術コースの子かぁ、と薬術の魔女は頷く。道理であまり見ない顔だと思った。


「あなたが『薬術の魔女』ですか。よろしくお願いします。噂とお話はかねがね」


 綺麗な背筋のまま、巻き毛の女学生は丁寧にお辞儀をする。動作も綺麗で作り物みたいだ、と感心した。


「うん。……うわさ?」


と薬術の魔女は首を傾げたが、すぐに女学生の髪に興味が向いた。すごく、綺麗な巻き毛だ。


「ああ、この髪ですか。気になりますか」


 薬術の魔女の視線を受け、女学生は自らの髪に触れる。つやつやと光を反射して輝いているように見えた。一体どの様な手入れをしているのだろう。


「地毛の癖なんだってさ」


「地毛? すっごーい、きれい!」


友人Bの解説に、薬術の魔女は歓声をあげた。まるで、整髪料や整髪(こて)で整えたかのように綺麗な巻き毛だったのだ。


「ありがとうございます。ですがそれよりも、そろそろオリエンテーションが始まりますよ。ああ、さっきの話はそのあとでも大丈夫なんで」


 賛辞の声を謙遜することなく受け取りつつも、女学生は薬術の魔女と友人Bに注意を促した。


「あっ、そうだった」


「そうだっけ?」


慌てる友人Bと首を傾げる薬術の魔女。その二人の様子を見ながら、女学生は呆れたように溜息を吐いた。


「ともかく。よろしくお願いしますよ」


 そして薬術の魔女と友人Bの2人にオリエンテーションの会場の方へ促す。

 何かの取引中だったらしいが、きっと薬術の魔女には関係ない話なので、聞かなかった。


×


 学年初めのオリエンテーションでは、毎年のように学生会会長が挨拶をする。その時に、薬術の魔女は、その2が学生会会長になっていたらしいことを知った。


「いつの間に学生会の会長になってたの?」


オリエンテーションが終わったのち、薬術の魔女はその2に問いかける。


「半年くらい前ですよぉ」


その2は驚いた様子も無く、にこにこと笑顔で答えてくれた。(寧ろ、薬術の魔女が知らなかった事に気付いていたのだろう。)


「……そっか」


 半年以上も気付かなかったんだ、と、薬術の魔女は我がことながら微妙な心境になった。


()()()、もぎ取りました♡」


可愛らしい笑顔で、その2は頑張ったポーズをとったのだが、その笑顔がなんだか怖い。


「これで、学生間の不平等を正すことができそうです」


 内心でぷるぷるしていると、その2は慈愛の滲んだ安堵の表情でそう呟く。

 恐らくそれは、テスト勉強や扱いの差についてなのだろうと、鈍い薬術の魔女でも理解できた。その2は、その差に苦しめられていた一人だったからだ。


「できるの?」


「はい。そのために色々と準備してましたから」


 その2は力強く頷く。


「まあ、今年はあんまり大きな改革はできないかもですけれど、私達()()のアカデミー生達が不平等にならないようにするつもりです」


「ふーん?」


×


 魔術アカデミー第六学年たちは、将来のため、または卒業するために何かを作り上げ発表しなければならなかった。


「今月末までに主題を決めるって話だったわよね。もう何か決めた?」


 授業が始まる前にようやく合流できた友人Aは、薬術の魔女とその2、ついでに偶然居合わせたその3に問う。


「まだ」


 薬術の魔女は口を尖らせた。


「私は『聖女候補』なので、宗教にかかわる内容で研究しようと思ってますよ」


 その2はにこやかに答える。他にも、『聖女になるために必要な事』も色々するのだとか。


「僕は同室の子と共同で研究をする予定なんだ。同室の彼は魔術コースで科は違うんだけど、別の視点で色々と見られそうだから」


 その3は、土着信仰に関連する内容を研究するらしい。


「へぇ」


 ちなみに、友人Aは人の生命力や魂について、友人Bは魔術と力の流れについて研究するつもりらしい。


「(もう研究内容きまってるんだなぁ)」


 何の研究をしようかな、と薬術の魔女は首を傾げる。


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