105.子狐
要望があったので早めに投稿
今週の土曜も投稿します
「クロ君、それ以上はいけない。君の体が持たないよ」
「……」
「クロ君っ!」
無視を続ける俺の体を創造主が強く揺する。
俺はユラっと視線を向け邪魔をする創造主を睨む。
「邪魔だ」
「クロ君、これ以上は何としてでも止めるよ。君も分かってるだろう?もう体が持たないのは」
俺は鼻をこする。
ヌチャッとした感触。視線を下ろせば真っ赤に血濡れた右手が映る。
さらに視線を下ろせば血に濡れた地面が映る。
「どうでもいい」
どうでもいいさ。スズが見つからないのなら、どうでもいい。
俺は再び意識を集中させ気を尖らせる。
ロベリアたちを蘇らせてからどれほどたったか。
この神界では時間の進み方が現世とは違うらしい。
もしかしたら現世では数年とかたってるかもしれんな。
まぁ今はそんなことよりスズだ。
いまだにスズは見つかっていない。
ずっと探しているのに。
「スズ……」
クソッ、頭がくらくらしてきた。
瞼を開けば視界が紅く染まっている。眼球の毛細血管が破裂したのか。血涙を流しているみたいだ。
まずい。このままじゃ先に体が壊れてしまう。
まだスズを見つけていないってのに……。
「クソッ!」
くそ……、スズ…………。
「クロ……」
「ロベリアか。目覚めたのか?」
「うむ、妾は元々神の一柱じゃからな。神格化する必要もなかったからのぅ」
「神格?」
「生き返らせるためにね。ボクがミサキ君たちを神格化させたのさ」
「蘇生は人の体では耐えられぬからな。じゃから皆を神格化させる必要があったのじゃろう」
「そうか……」
他の奴らは助けることができたのか。
よかった。
良かったけどさ。
「スズがいねぇとダメなんだよ……」
あぁ……止まらねぇ。
紅く染まった視界が元の色彩に戻っていく。しかしその先に見える世界は歪んだまま。
「っ……」
何か、いる。
俺の前に何かが。
「お主、まさかスズ…………ではない、テウメか?」
ロベリアの声に俯けていた顔をあげる。
白い狐。スズのようだが、スズよりもっと大きい。
――久しぶりだな。ロベリア。
頭ではない、もっと深いところに響く声。
男?女?若いのかも老いているのかもわからない。
「まだ生きていたんだね」
――消えかけだがな、創造主。
「何をしに来たんだい?」
――届け物だ。
「届け物?」
そういえば。口元に何かを咥えている。
白い毛玉。何故だ。なぜかあの白い毛玉が気になる。
――搔き集めてみたが、間に合わず大部分が消えてしまっていた。しかしまた格をあげれば元に戻るはずだ。
「何を言っているんだい?」
何故、何が気になるんだ。
…………まさか。
――育ててやれ。
「だから何言って――」
「スズ?」
――ふん。大事にするのだな。
テウメはだんだんと霞だす。そしてそのまま子狐の中に吸い込まれるようにして消えていった。
「スズ、って。この子がスズラン君?」
「間違いない!スズ、スズッ!」
くらくらしてこけそうになりながらも子狐に駆け寄る。
そぉっと優しく抱きかかえる。
生きてる。
トクントクンと弾む心臓の鼓動。
浅く息をする口元。
生きている。スズが生きてる。
「あぁ、あ゛ぁぁぁぁぁあぁッ…………」




