89話 マリンのお引越し準備
「あの、えっと、じゃあ私も皆さんの家に一緒に住むということでいいんですか?」
「そうだね」
「どんどん楽しくなるね〜」
「錬金魔法をしてるところも見てみたいです」
こうして、マリンが私達の家の新たな住人になった。
「この家はどうするの?」
「あ、元々この家は勝手に使ってたので、その、そろそろ出ないといけないなって思ってたんです」
あれこの魔女、さらっとすごいこと言ってる。
「この家誰のなの?」
「し、知らないです」
知らない人の家、勝手に使ってたの?
この魔女、大丈夫かな。
「それならさっさと出ないとね」
「や、やっぱりですよね。それじゃあ、あの、荷物はお願いしてもいいですか?」
「いいよ。レイも手伝ってね」
「は〜い」
私とレイで本の山をアイテムボックスに入れていくと、アリスに声をかけられる。
「何か手伝うことはありますか?」
「そうだなぁ、マリン、ここの家具とかってこの家の物?マリンの物?」
「あっはい、家の物もあれば私の物もあります」
誰かの家の物も勝手に使ってたのね。
「ならアリスとマリンで、マリンの私物を仕分けてくれる?」
「分かりました」
「は、はい。あ、えっと、とりあえず本を全部私の物ですので、それを先にお願いします」
「分かった」
引き続き本の山を回収していく。
それにしても大量に本がある。
錬金魔法の資料らしいけど、どこで買うのかな。
雑貨屋に置いてある本の量より、もしかしたら多いかもしれない。
「この本ってどこで買ったの?」
「こ、この本は借りてるんです」
「え、もしかして?」
「い、いえ、これはちゃんと持ち主に許可を貰ってます」
ならいいけど。
「冒険者の中では魔法ってあまり人に教えるような物じゃないらしいんだけど、魔導士の中では違うの?」
「う、うーん… ひ、人によると思います。ただ、錬金魔法は多くの魔導士が使える魔法で、たくさん実験の資料があるんです」
「ここにあるので、だいたい何割ぐらいの資料があるの?」
「えっと、そうですね、だいたい9割ぐらいです」
ほぼ全部じゃん。
「持ち主に返さなくていいの?」
「えっと、まだ返すように言われてないので大丈夫です」
それ遠くにいて言えないだけじゃないよね?
「マリンちゃ〜ん、どうやってこの本は持ってきたの〜?」
「あ、そういえば言い忘れてました。多分、なんですけど、この家にアイテムボックスがあるはずなんですけど、失くしちゃってて…」
うん、決めた。
私の家に住んで貰うからには綺麗にしてもらおう。
「どういうの?」
「えっと… あ、青色で、金色の装飾をされてて青い魔石が埋め込まれてます」
「聞いてるだけで高そうに感じますね」
本当にね。
そんな物失くさないでよ。
「た、高いですよ。そ、それだけで家が建ちますから」
「嘘でしょ?」
「ほ、本当です」
この魔女、本当に大丈夫かな?
「そのアイテムボックスにはいっぱい物が入るってこと?」
「は、はい、この家にある物なら全部入ると思います」
何でそんな物失くすの…
「見つけたらもらっちゃお〜」
「え、ダ、ダメですよっ!」
「冗談だよ〜」
「ダメな物失くしちゃダメでしょ」
「う、ぐうの音も出ません…」
うん、反省してね。
ユスティアでアイテムボックス落としたとか言われても、見つけてあげられないよ。
「この食器とかはマリンお姉さんの物なんですか?」
「あ、はい、そうですね。そこに入ってる物は私のです」
「分かりました」
そういうとアリスが食器棚から食器を取り出してテーブルに置いていく。
「そういえばミオちゃん、お腹空いた〜」
「確かにもうお昼だし、ここで食べてもいい?」
「あ、いいですけど、今ご飯がなくて…」
「それなら大丈夫だよ〜」
そう言ってレイが食器を並べると、そこにご飯を出していく。
お花畑観光の時の余りだね。
「マリンも良かったら食べてね」
私もジュースを出す。
「え、いいんですか?あ、ありがとうございます」
ご飯は食べるとして、この家、椅子が2個しかないね。
ん?
アリスは遠慮しないで座ってね。
私はアリスの背中を押して椅子まで誘導して座らせる。
「マリンも座っていいよ」
「い、いえ、皆さんお客様ですし」
マリンの家じゃないでしょ。
「いや、私とレイはいいよ」
レイが「え?私も〜?」って感じで自分を指差すから、軽くうなずく。
「私とレイの大陸では立ちながら食べるお店とかあったから」
「立ち食いそばみたいな〜?」
「そうそう」
入ったことないけど。
「獣人族の大陸の文化って不思議ですよね」
「何かあったっけ?」
「解体のこととか、靴を脱ぐとかありますよ」
「あぁ、確かに」
「あ、あの、獣人族の大陸ってあるんですよね?」
「え?」
その質問、少し困るんだよね。
今までは日本ではこうだった、ゲームではこうだったで答えてたけど、この世界のことについて聞かれたら答えることが出来ない。
今まで獣人族の大陸は話ではあるものっぽかったし、そのつもりで話してたけど、本当に獣人族の大陸が実在してるかは分からないんだよね。
レイの方を見ると、レイは気にせずフルーツサンドを食べていた。
レイの良いところ出てるね…
そんなレイが好きだからいいけど。
「それは、もちろんあるよ。なかったら私とレイは何なのって話になるし」
「た、確かにそうですよね」
マリンは私の答えに納得してくれた。
それにしても、どうしてそんなことを聞いたんだろう。
まあ、気にするだけ無駄かな。
私達はマリンの家、もとい誰かの家でお昼ご飯を済ませた。
4人の設定を軽く置いておきますね。
・ミオ 16歳 142cm 34kg
・アリス 10歳 127cm 23kg
・レイ 12歳 135cm 32kg
・マリン 13歳 137cm 34kg
こう見るとミオちゃん痩せてますね。
ちゃんと食べてはいるんですけど…




