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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第2章 王都観光
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81話 ミオ先生式魔法試験


 ちょっとだけ今回は長いです。

 何か思ったより長くなっちゃいました。


「ミオお姉ちゃん、どうやって1回の攻撃で倒すんですか?」

「強く衝突させるのが1番だけど、別に1発で仕留めなくていいんだよ?」

「もし倒しきれなかったら危ないじゃないですか」

「それなら大丈夫だよ。アリスの番には私もついていって、危険そうだったら私が守るから」

「あっ、そうなんですね」


 アリスはホッとしたように言う。

 それはそうだよ。

 冒険者でもない10歳の女の子を1人で魔物の前に行かせたりしないよ。


「あれ、レイお姉ちゃんが剣を持ちましたよ」

「本当だね」


 レイはアイテムボックスから剣を取り出して右手に待つが、それを構える様子はない。

 多分だけど、私のナイフと同じように加護がついてるんだろうね。


「緊張する?」

「はい」

「そっか」


 私はアリスが少しでも落ち着けるように後ろから手を回して抱きしめる。

 緊張するなとは言わない。

 命に関わることだからね。

 緊張感は持ちつつ、その緊張で変に力んだり力が抜けたりしないのが1番いい。


「アリスだって冒険者になるからには危険なところに立つんだから、ある程度は心に余裕を持ってね」

「分かりました」


 そうは言ってもアリスは少しだけ震えている。

 うーん、やっぱりまだ早かったかなぁ。

 普通は私が少しは相手をしてあげて、戦えるようになってからだよね。

 アリスが緊張してる様をみて、少し軽はずみだったと反省する。


 ただアリスも決心をしてるんだし今更やめようとは言わずに、もしアリスが無理だと言うならその時はすぐに引き上げよう。


「水を出しましたね」


 レイの近くに蛇のように水が現れると、それがレイの左手の上に集中していく。

 やがて水の球となり、レイは手のひらをレッドビーに向ける。

 そして水の球は放たれ、レッドビーに衝突する。

 レッドビーは水の球に不意打ちを受け体をよろけさせるが、体勢を立て直してすぐにレイに飛んでいく。


「あっ、あぶない!」


 アリスが焦って声を上げる。

 ただレイとは距離があるからこの声は届いていない。


 レイはレッドビーが近づいてきて反射的に剣を構えるけど、すぐに剣を下ろして左手をレッドビーに向ける。

 どこからともなく水が現れ、レイの左手に収束していく。

 やがて綺麗な水の球となり、それは至近距離まで近づいてきていたレッドビーに向けて放たれる。

 レッドビー自ら近づいていたこともあり、水に衝突するなりレッドビーの体は潰れ後方に飛ばされる。


 レイが嬉しそうにこちらにかけて戻ってくる。

 かわいい。

 ただレッドビーを回収してきてね?

 死体は他の魔物を呼び寄せるらしいし、アリスの番でレッドビーが集まってたらやりたくても出来ない。


「やった〜!倒せたよ〜!」

「良かったね」

「すごくかっこよかったです!」


 レイは調子良さそうに手を握ったりハグやキスをしてくる。

 うん、嬉しい気持ちは分かるよ。

 私も初めて魔物を魔法で倒せた時は嬉しかったからね。


「ただレッドビーは回収してきて?」

「なんで〜?」

「死体が残ると魔物が集まってきて、アリスが水魔法を試す時に危なくなるから」

「あ〜、確かに〜」


 そう言うとレイは倒したレッドビーの方を見るだけで、何かをする様子はない。


「どうかした?」

「いや、遠くからでも空間魔法を使えるのかな〜って」


 そう言ってレイは私達の元を離れていく。


「使えるんですか?」

「流石に出来ないと思う」


 試した方がいいとは思うけど、もしやって出来ようものならレイが気の毒だからね。

 しばらくしてレイが戻ってくる。


「ちゃんと回収してきたよ〜」

「うん、偉いね」


 私はレイの頭を撫でる。

 レイも頭を振って私の手に押し付けてくる。

 かわいい。

 にゃんこの動画で見る甘え方だ。

 そう考えるとレイって手に触れたり体を密着させたり、甘えたがりのにゃんこって感じだよね。

 しかもケモ耳あるし。


「それじゃあ今度はアリスの番だね」

「はい…!」


 アリスの目はやる気だ。


「レイもアリスの護衛をしてね」

「は〜い」

「どのレッドビーを倒すのか、どのタイミングで倒すのかもアリスの好きにやっていいからね」

「分かりました」


 アリスは緊張した面持ちで歩き出す。

 そして私とレイはアリスの後ろをついていく。

 周りを見ながらお花畑を歩くアリスを見ていると、小動物みたいで癒される。

 アリスが見ているのは花じゃなくてレッドビーだけどね。

 ただ視線が上を向いているから横顔が綺麗に見える。

 かわいい。


 私はものすごく呑気だけど、アリスは内心ありえないくらいドキドキしてるんだろうね。


「あれでいいですか?」


 そう言ってアリスが1体のレッドビーを指差す。

 そのレッドビーは他の個体よりも小さく、今、私達にちょうど背中を見せており、さらに周りにも他のレッドビーはいない。


「いいよ、しっかり狙うんだよ」

「がんばれ〜!」

「はい、いきます」


 アリスは両手を向かい合わせると、間から水が現れる。

 水は徐々に膨張していき、アリスの手より少し大きいぐらいの水の球になる。


 これで倒せるかは速さ次第かな?


 アリスは両手を押し出すように水の球を放つ。

 水の球は押し出した通りの速さでレッドビーに向かっていく。


 当たったとしても、倒せはしないね。


 私がそう思った時にはアリスはもう1度両手を向かい合わせ、水の球を作っていく。

 アリスは着弾したかも確認せずに水の球の準備を終わらせ、間髪入れずに水の球を放つ。


 最初に放った水の球はレッドビーに直撃し、レッドビーはよろめく。

 レッドビーはすぐさま振り返って私達を視野に入れるが2つ目の水の球が羽に直撃し、動きが鈍くなる。

 はっきり言って飛んでるだけの的だね。


 アリスはもう1度水の球を作ると、すぐにレッドビーに向けて放つ。

 レッドビーは何とか避けようとするが間に合わず、水の球が体をかすめる。

 レッドビーは弱り低空飛行になるが、それでもアリスと距離を詰めようとする。


 アリスはレッドビーが近づいてきたことに反応して右足を1歩引く。

 しかし水の球をもう1度作ってるところを見る限り、諦めてはいないね。


 レイを見ると剣を構えて割り込む準備をしている。

 私はレイの腕を掴み、レイを止める。


 アリスは両手を頭の上に持っていき静止し、レッドビーはアリスに一直線で飛んでいく。


 アリスはレッドビーが至近距離にまで来るまで待つと、間合いに入った瞬間に水の球をレッドビーに向けて叩きつける。

 その勢いにやられ、レッドビーは簡単に潰れて地面に伏す。

 レッドビーが動かなくなったことを確認すると、アリスがこちらを振り向く。


「…ハァ…た、倒しました!」


 アリスは息が上がって肩で呼吸しており、顔には汗が流れている。


「すごい!すごいよアリスちゃん!」

「うん、本当によくやったね」


 レイがアリスちゃんに抱きしめて喜びを分かち合う。

 アリスは緊張からも解放され、本当に安心しきった表情をする。

 レイとハグしているアリスと目が合うと、アリスがピースをして嬉しそうに笑った。



 ミオちゃんは思った。

 アリス、肝座りすぎじゃない?

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