77話 第3回 ミオ先生による魔法授業(簡易版)
「こんなにビーって大きいんですね」
アリスが私達の目の前をゆっくり横切るビーを見ている。
「襲ってこないんですよね?」
「攻撃すると襲ってくるから、ちょっかいはかけないでね」
「分かりました」
私達はビーが横切るのを待つ。
「でも今日のうちにアリスにはビーを倒してもらうけど」
「本当に倒せるんですか?」
「倒せるんじゃない?」
「ミオちゃん適当だね〜」
まあまあ、アリスならきっと出来るよ。
「ビーを倒すのって〜、なんかかわいそうじゃない?」
「こちらが攻撃しない限り、ビーも攻撃してこないんですよね?」
「そうだね」
「なら、あんまり倒す必要もないですよね」
「倒す必要はあるよ。ビーが増えるとレッドビーやキラービーが現れるようになるみたいだし」
レッドビーとキラービーが現れるのが厄介だよね。
現れさえしなければビーを倒す必要はない。
「倒した方がいいんですかね…?」
「他の冒険者もいるし〜、わざわざ私達が倒さなくてもいいんじゃない?」
「レイはレッドビーだけどね」
「う、そうだった」
「アリスはどうする?倒したくないなら無理に倒す必要はないよ」
ただ気になるのが、どうしてレッドビーとキラービーが大量発生したかなんだよね。
もしそれの理由がビーが増えすぎたことにあるなら、私達もある程度は倒した方がいいんだよね。
「私もビーを倒すのは少しかわいそうかなって思います」
「そっか」
アリスがそう言うなら無理強いはしない。
ただ攻撃魔法はしっかり覚えてもらおう。
「とりあえず攻撃魔法は教えるから、出来そうだったらレッドビーを倒そっか」
「えぇ!?レッドビーは倒せないですよ!確かFランクの魔物ですよね?」
「そうだけど、戦ってみた感じはそんな強くなかったよ」
「それってミオお姉ちゃんが強かっただけなんじゃないですか?」
アリスが疑うように言う。
「そんなことないと思うけど」
「ゴーレム魔術を使えたりするのに弱いはずないですよ!」
確かに。
ゴーレム魔術って最高難易度の土魔法なんだよね。
私って強いのかな?
「やってみるだけやってみて、危険そうだったら私もレイが守るから」
「分かりました。やってみるだけやってみます」
「レイも頑張ってね」
「は〜い」
「じゃああの辺で水魔法を教えるから」
私達は木陰に移動して、2人を座らせる。
「ということで、第3回 ミオ先生による魔法授業〜」
「「わ〜」」
今日はレイもアリスと一緒に拍手して御膳立てしてくれる。
それじゃあ、さっそく授業を始めよう。
「今日は攻撃魔法を覚えるよ。せっかく水魔法を覚えて2人ともある程度練習してるだろうから、水魔法の攻撃魔法を教えるよ」
そう言って私は水魔法を使って水を出す。
「2人とも、自分で水は出せる?」
私の魔力で作った水は他人では操りづらいから、2人には事前に水の出し方は教えた。
アリスとレイは両手のひらをお皿にするように上に向けると、空中に水が現れる。
2人とも水を浮かせることが出来てるし完璧だね。
「はい!」
「出来ました」
「よし、それじゃあその水を、飛ばす!」
そう言って私は出した水を球にして木の幹に向けて飛ばす。
水の球は木に衝突して弾ける。
2人も真似して水を飛ばす。
よし、2人とも簡単に出来るね。
「え、それだけ〜?」
「うん、それだけだよ」
レイが不満ありげに言うけど、ゲーム内の初級水魔法はこれだよ。
「何かもっと、こう〜、水の柱が地面からどば〜みたいなのじゃなくて?」
レイが手で水が地面から溢れるジェスチャーを交えながら聞いてくる。
「あれは上級魔法だから」
「大きな水の刃をものすごい速さで飛ばすみたいなのは?」
「あれも上級魔法だから」
「これでレッドビー倒せるの〜?」
レイがもう一度、水の球を作って木の幹にぶつける。
「倒せるんじゃない?」
「本当に大丈夫なの〜?」
「私もこれで倒せるか心配です」
確かにその気持ちは分かる。
「実はそれも試したくてビーに試し撃ちをしたかったんだけど、私達は慈悲深いパーティだからレッドビーをぶっつけ本番で倒すよ」
「ミオちゃん、ほんと〜に大丈夫なの?」
レイが念押ししてくる。
「倒せなくても、私とレイがいれば危険はないから大丈夫だよ」
アリスとレイは顔を見合わせる。
「あと一応言っておくと、水の球の大きさとか速さでもちろん威力は変わってくるからね。出来るだけ大きく、出来るだけ速く飛ばすこと。数で勝負するのもありだよ」
「ほ、本当に倒せるんですよね?」
「倒せると思うよ、自信持って!」
私は両手でガッツポーズをする。
「ミオちゃんの授業、何か授業っぽくないよね〜」
「いや、2人が優秀だから教えることが特にないんだよ」
魔力の使い方を教えたからか、2人とも魔法を使うのが上手い。
躓くことなく魔法を使えるようになってる。
「…レイお姉ちゃんっ!」
「…うん、そうだねっ!」
よし、2人ともやる気になったみたいだし、レッドビーを探すためにお花畑の奥へと向かう。
アリスとレイは思った。
やるしかない!




