65話 地下室、すなわちロマン
「ひろ〜い!」
レイがリビングで歓喜の声を上げている。
私もリビングの中に入るとレイがソファに横になっていた。
「この家に住むんだ〜。ミオちゃんいい家にしたね〜」
「そういえばどうしてこんなに大きい家にしたんですか?」
「魔法の実験のために広い部屋が欲しかったんだ」
魔法の実験で広い部屋と地下室が欲しかったんだけど、そういえば地下室はどこにあるの?
「そういえばこの家に地下室があるはずなんだけど、どこにあるか分かる?」
地下室への階段もなければ、それに繋がる扉も見つからない。
「分からないです」
「家の外に何かそういった物はないの〜?」
レイに言われた通りに家の周りを調べたけどやっぱりそれらしい物はない。
「なかった」
「なら隠し扉みたいなのがあるのかもね〜」
「隠し扉ですか?」
「本棚に置いてある特定の本を引っ張ると本棚を移動するみたいなね」
「そういう物があるんですね。でもこの家に本棚ってないですよね」
「そうだね」
他に隠し扉の仕掛けってどういうのがあるんだろう。
探して見つかるような物ではないよね。
「じゃあ隠し扉探してみようよ〜!」
そう言うとレイがソファから飛び上がる。
あるかも分からないし、さらにはあったとしても隠されている物だから見つけるのは難しい。
「いいですね、探してみましょう」
そう言うとアリスとレイが部屋の隅々を物色し始める。
棚タンスを開けたり、食器棚を開けたりして探している。
「どういう風に隠されているんですか?」
「普通はどこかが仕掛けになっていて、それを押したら引いたらしたらカラクリが動いて壁が開いたり棚が動いたりしたりするよね」
「本棚が移動するタイプだと床を引きずった跡とかあるよ〜」
「そうなんですね」
そう言ってアリスが床の傷を探し始めるけど、この家は傷の1つもない。
そういえばここって誰か住んでいたのかな?
埃が積もってたから人がいたとは思うんだけど。
「この部屋にはないかも、別の部屋に行こ〜」
「分かりました」
そう言うとレイとアリスが別の部屋に移動する。
隠し扉の仕掛けを見つけるという途方もない作業は2人に任せて、今のうちに居住登録を済ませて来ようかな。
「レイとアリス、悪いけど個人カードを貸してくれない?」
「は〜い」
「いいですけど、どうしてですか?」
「居住登録をしてこようと思って、もしかしたら必要かもって」
「そういうことですね。それではお願いします」
レイとアリスから個人カードを預かると、家を出て商業者ギルドに向かう。
街を歩いていても比較的見られることはない。
それは2人と一緒に歩いていた時よりもだし、私が初めてこの街に来た時よりも見られていない。
よしよし。
私は商業者ギルドに着くと、受付のローラを呼んで席につく。
しばらくしてローラが私の前に座る。
「こんにちはミオさん。しっかりベッドは準備出来ましたよ」
「それは良かった、ありがとう」
「いえいえ、それでは今日はどのようなご用件ですか?」
「居住登録っていうのをしたいんだけど」
「どなたかと一緒に住むんですか?そういえば獣人族のお姫様が来ているって噂ですけど、その方ですか?」
噂ってあてにならないよね。
「お姫様ではないよ。私と同じ冒険者だから」
「そうなんですか?その方にも商業者ギルドに用があったら私を呼ぶように言ってもらってよろしいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。それでは居住登録ですが、登録される方の個人カードはお持ちですか」
持ってきておいてよかった。
私はレイとアリスの個人カードを渡す。
「はい、ありがとうございます」
ローラは作業を始める。
「本人がいなくても出来るんだね」
「ただ鍵を開けることが出来るようになるだけですから。勝手に売却することなどは出来ません」
居住登録するデメリットとかはないんだね。
「あの家の地下室ってどこにあるの?」
「あ、伝えるの忘れてました。暖炉の裏側に小さな魔法陣があるのでそこに手を置いてみてください。ちなみに居住登録をされたミオさんとアリスさんも使えますよ」
「分かった、ありがとう」
小さな魔法陣ね。
2人ならもしかしたら見つけてるかもしれない。
私は2人の個人カードを受け取ると、家に戻る。
家に入ると、2人の気配が全く感じられない。
物音一切しておらず、この家には人がいないと思わせる。
私は1階を見て回るが2人を見つける事が出来なかった。
もしかしたら先に地下室に行ってるかも。
私は部屋の暖炉の裏を見てみる。
リビングでも応接室でもないもう1つの部屋の暖炉に魔法陣があった。
私がそれに触れてみると、暖炉の横の壁が凹んで行く。
その奥を見ると地下への石畳の階段があった。
先は真っ暗闇だ。
ここにはいないよね。
私はもう1度魔法陣を触ると壁が元通りになる。
私は2階に上がり、階段横の部屋に入る。
部屋には新しいベッドが置いてある。
宿に置いてあるベッドと同じでふかふかそうだ。
ただ不思議なことに、ベッドが少し盛り上がっている。
私がベッドの横までくると、2つのかわいらしい寝顔が見える。
レイとアリスだが気持ちよさそうに仲良く寝ている。
天使だ…
それにしても2人が仲良さそうで良かった。
私は部屋に置いてある席に座ると、2人が起きるまで寝顔を眺めながら魔法指南書を読むことにした。
ここも挿絵描きたい!
寝顔描きたい!




