60話 アリスとレイ
レイが依頼板を見ているのを後ろで眺める。
「何かいいのありそう?」
「う〜ん…」
レイが倒したい魔物がいるならそれに行くのもいい。
「あっ!」
「いいの見つけた?」
「レッドビーはFランク、キラービーはEランクだって」
そっちね。
私はレッドビーが8体で、キラービーが5体。
Eランク以上の依頼でFランク3回分で換算されるなら、Fランク依頼を23回分こなした事になるね。
レイは確かレッドビーが3体で、キラービーが7体。
Fランク以上の依頼でGランク3回分だから、ぴったり30回のGランク依頼をこなしたことになる。
「それならFランクに上がれるね」
「やった〜!」
レイが嬉しそうに小躍りする。
かわいい。
「何か面白い依頼はありそう?」
「ゲームで戦ったことある魔物しかいないよ〜」
「通常依頼も面白そうなのない?」
「ないよ〜」
「本当〜?」
私はレイを後ろから手を回して抱きつきながら私も依頼を見る。
通常依頼の内容としては畑に出た害獣の駆除と別の街への移動する際の護衛、それだけだった。
「ないでしょ〜」
「本当にないね」
レイがやはりといった感じに言う。
う〜ん、ファンタジー世界にしては味気ないね。
「ミオお姉ちゃん?」
「ん?」
レイから離れて声のする方へ振り向くと、そこにはアリスがいた。
今日もかわいいね。
「アリス、おはよう」
「おはようございます」
レイも振り向く。
「アリスちゃん!?」
「は、はい。何でしょうか」
アリスが緊張したように答える。
「かわいい〜!100点!」
「でしょ?」
「な、なんなんですかミオお姉ちゃん?」
状況が飲み込めてないようでアリスが私に助けを求める。
「初めまして〜アリスちゃん。私の名前はレイ、よろしくね〜」
「は、はい。よろしくお願いします」
そういうとアリスが頭を下げる。
あ、これは勘違いしてるね。
「アリス、レイは王族とかではないよ」
「そうなんですか?」
アリスが顔を上げて私に聞いてくる。
「前に言ってた友達だよ。私と同じ冒険者」
「違うよ〜、ミオちゃんの妹だよ〜?」
レイが問いただすように私に言う。
アリスには友達が来てるかもって言っちゃったから説明が難しい。
「獣人族が住んでいる大陸のお姫様とかではないんですね?」
「そうだよ〜、私もミオちゃんと同じ冒険者だよ」
「そうなんですね。それでお友達と妹さんのどちら何ですか?」
「妹だよ〜」
まぁ、ここは妹で通した方がいいよね。
「うん、レイは私の妹だよ」
「友達ではないんですね?友達が来てたんじゃないんですか?」
説明しづらい。
「友達も来てるかもしれないけど、レイとは別だよ」
「そうなんですね…」
アリスは腑に落ちない様子だ。
「言っておくけど、レイも私と同じ家に住むからね」
「そ、そうなんですか?よろしくお願いします」
アリスがミオにお辞儀する。
「そんなにかしこまらないでよアリスちゃん。気安くレイお姉ちゃん呼んでね〜」
「分かりました、レ、レイお姉ちゃん」
「うわー!かわいいー!」
アリスが恥ずかしそうにレイの名前を呼ぶと、レイがアリスに抱きつく。
恥ずかしそうに名前を呼ぶアリスもかわいかった。
微笑ましい画を眺めていたらアリスが困ったような視線を向けてくる。
「レイ、アリスとは初対面だしもう少し手加減してあげて」
「えぇ〜、こんなにかわいいのに〜?」
アリスの顔が少し赤くなる。
「かわいいけど、初対面に変わりないでしょ?」
「は〜い」
そういうとレイは残念そうにアリスから離れる。
「レイはこれでもいい子だから、アリスは仲良くしてあげてね」
「はい、分かりました。レイお姉ちゃん、よろしくお願いします」
「えへへ〜、よろしく〜」
レイはお姉ちゃんと呼ばれて嬉しそうにする。
2人とも美少女だから眼福だね。
「レイお姉ちゃんも一緒の家に住むんですよね?」
「そうだね、3人暮らしだよ。もしかして私と2人だけが良かった?」
「えぇ〜、アリスちゃんひど〜い」
レイがアリスの肩を揺する。
「い、いえ、そういうつもりで言ったわけではないですよ。賑やかなのは良いことですから」
「じゃあどういうつもりで言ったの〜?」
「ミオお姉ちゃんとレイお姉ちゃんは姉妹なんですよね。お邪魔していいのかなって」
邪魔何て思わない。
「邪魔じゃないよ〜。アリスちゃんも今日から私達の家族。私のかわいい妹だよ〜」
そう言うとレイはアリスの両手を取る。
「私も一緒に住んでいいんですか?」
「良いに決まってるじゃ〜ん。ね?ミオちゃん」
「当たり前でしょ。むしろアリスが一緒に住まなくて誰が住むの?」
今になって住めないと言われてもこっちが悲しい。
「ありがとうございます、ミオお姉ちゃん、レイお姉ちゃん」
「いいんだよ〜。アリスちゃん私の大事な家族だからね〜」
「はい、レイお姉ちゃん」
レイが嬉しそうにアリスの手を横にぶんぶん振ると、アリスもそれに倣って手を横に振る。
2人とも楽しそうに手を大きく振っている。
こう見ると本当に姉妹みたい。
レイの服がお姫様すぎるけど、この服装の差のおかげで何かの物語で書かれている生き別れの美姉妹って感じだ。
最高のかわいい妹が2人も出来た。
異世界って最高だね。
と言うことでこの作品のメインメンバーの顔合わせがとうとう終了しました。
第1章はまだもう少しだけ続きますが、言ってしまえばここまでが前置きかもしれません。
これからの彼女達の日々、とくとご覧あれ!




