538話 魔力検査
「こちらはあくまで現段階での参考値です。魔法は繰り返せば深層段階は進行していきますので、苦手な種類でもめげない事が大切ですね」
「なるほど。これって数字が大きい方がいいんですよね?」
「そうなりますね。アリスさんであれば、水属性が1番進行していますね」
職員さんに渡された紙には、色々な魔法属性の適性が書かれています。
全部で20段階、今の私の水属性の段階は6段階目でした。
Eランク適性が5段階目、Dランク適性が7段階目なので、1番得意なはずの水属性でもEランク適性って感じですかね。
冒険者を始めたのが1ヶ月前と考えたら、GランクとFランクを超えてEランクが適性ってなっているのは、かなりすごいことです。
Eランクになるのに1年はかかるってよく聞きます。
それにお姉ちゃんがCランクですから、あと3段階上げればお姉ちゃんぐらいの水属性が使えるってことです、急に実感が湧いてきました!
ただ他があんまりですね、火属性と土属性が2段階でまだGランク適性です。
他に雷属性とか闇属性とか、使ったことも聞いたこともない属性は1段階目です。
あとすごい!っていうのは、変異属性というのが5段階目なぐらいですかね。
「変異属性ってなんですか?」
「はい、魔力から属性に変換する能力のことですね。これが高いと、少ない魔力で魔法を使える他、魔術ではない魔法が使えるという指標になります」
「なるほど!」
飛行魔法とか強化魔法とかを使えたら、これが高いってことですね。
「ミオお姉ちゃんはどうでしたか?」
もちろん声をかけても聞こえませんから、マントの端っこの方をちょいちょいって引っ張れば、ミオお姉ちゃんがこっちに気がつきます。
「交換しましょう?」
右手で私の記録を出して、左手でくださいって手を出してみます。
そうするとミオお姉ちゃんはニッコリ笑いながら頷いて、紙を交換してくれました。
やっぱりミオお姉ちゃんの記録は、数字が大きいものばっかりです。
全部10段階は超えていますね。
四大属性は18段階で、Sランク適性が15段階となっていますから、ミオお姉ちゃんはSランク冒険者の中でも上の方の実力を持っているはず。
これは確かに、ランクが適性じゃないって判断されてもおかしくありませんね、ミオお姉ちゃんがCランク冒険者な訳がありません。
それに変異属性は最大の20段階、どうなっているんですか!
「この記録ってどうなんですか?すごいですよね?」
「すごいという段階は超えていますよ。警備隊ギルドに所属している方々でも、これ程の実力者は1人や2人しかいませんから、ミオさんは少なくともCランクからは上がって頂かなければなりませんね」
「そうですよね!やっぱりCランクじゃないですよね!」
ミオお姉ちゃんがCランクですから、Cランクってかなり遠い所にある気がしていましたが、やっぱりミオお姉ちゃんはSランクですよ!
魔法で死なない魔物を倒したり、びゅんびゅん飛び回って地面を壊しながらレイお姉ちゃんと試合したり、崩れてる時計塔をその場で木を生やして支えたり、Cランクのはずがないんですよ!
「これで魔法の適性検査はおしまいですか?」
「いえ、その前に精度、反応速度、威力の3項目を測りますので、あちらに移動しましょう」
これだけでも十分な気がしますけれど、他にもやるんですね。
ミオお姉ちゃんの手を引っ張って、職員さんの後をついていきます。
……あれ、なんでしょう。
見間違いでしょうか?
棒にぶら下がったと思ったら、勢いよくくるくる回り出したピンクのお姫様みたいな人が見えたんですけれど、何が起こっているんでしょうか。
いやですね、レイお姉ちゃんですね。
それよりですよ、あれなんですか、体力とか筋力とか測ってるらしいですけれど、私あんなこと出来ませんよ?
強化魔法で筋力を上げるどうこうの話じゃなくないですか?
「お主の特技か知らないが、手間を取らせるでないぞレイ。さっさとやれ」
「え〜、すごいとかないの〜?」
レイお姉ちゃんがくるくるするのをやめて、ぶらんぶらんと勢いを残したままカミラお姉ちゃんと話し始めました。
どうやら測定方法とは違う、遊びのようなものをやっていたみたいです、びっくりしました。
私だったら一周も出来ませんからね。
「ではこちらでは、クレー射撃をして頂きます」
「はいっ、よろしくお願いします」
よそ見してる場合じゃないですね。
「クレー射撃とは、上に素早く打ち出されたクレーというお皿を撃つスポーツになります。言葉で説明するより、見ていただいた方が早いかと思うので……」
職員さんが壁にかけられてる大きな銃を持ってきました。
銃って傭兵さんとかが持ってる、すごくお高い武器です。
それに長くて大きいので、私では持つのも大変そうです。
「こちらはもちろん、魔法の検査ですので、実際にこれで撃つわけではありません。もちろん、魔銃という魔力を弾にして撃つ武器を使用している方は、魔銃で撃って頂くのですが、お二方は魔法剣士ですので銃は使いませんよね?」
「そうですね、使いませんね。ミオお姉ちゃんもです」
「はい、でしたらこちらを魔法の方でやって頂くのですが見ていて下さいね?」
職員さんが近くの台の魔法陣を触れて、銃を斜め上に向かって構えました。
しばらく待っていると、横の大きな箱型の魔導具からお皿みたいな薄い物が飛び出して、職員さんがそれを綺麗に撃ちました。
えっ、今からそれをやるんですか?
魔法って銃みたいに早くないですし、お皿が早くて目で追うのもちょっと大変なぐらいです。
「このようにお皿が横から出ますので、それを魔法で撃ち落としてください。よろしいですか?」
「はい、大丈夫です……」
やることは分かりましたが、出来るかは全く別です!
「ちなみに、クレーには硬化の魔法がかかっていて、簡単には壊せませんのでご注意ください」
更に難しいことを言われてる気が!
ちょっと自信がなさ過ぎるので、ここは先にミオお姉ちゃんにやってもらいましょう。
「お先どうぞ!」
私が両手を下から前に出したら、意図が伝わったみたいです。
ミオお姉ちゃん前に立って、いつもみたいに左手を前に構えました。




