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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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536話 代理リーダー


 手紙という表現は生優しく、正確には王都グランダムからの督促(とくそく)状、柔らかい表現で言えば王都からのお呼び出しだった。

 耳が聞こえない今、文書媒体があるありがたみを感じられる。

 主題はそこじゃないけどね。


 お呼び出しを貰ったメンバーは冒険者ギルド所属の私、アリス、レイ、カミラの4人。

 集合場所もグランダム南区冒険者ギルドと、冒険者関連の要件っぽい。


 という訳で。




――――――――――――――――




「リーダー代理を立ててね」


 スージーさんに「パーティ会議のためにリビング集合みたいですよ」と言われてきましたが、いきなりどうしたんでしょう。


「どうして立てるんですか?ミオお姉ちゃんではダメなんですか?」


 ミオお姉ちゃんはにっこりとだけ笑って、カミラお姉ちゃんの方を向いてしまいました。

 どうしちゃったんでしょうか。


「はぁ、仕方あるまいか。今日の此奴は耳が聞こえん」


 カミラお姉ちゃんの魔法で聞こえるようになってましたよね?

 今日はそういう日なんですかね?

 耳なしでの特訓、ミオお姉ちゃんならやりかねませんね。


「そして何やら、王都にパーティで向かう必要があるらしく、そこでの代わりの頭を用意せよ、という訳だな」

「ほぇ〜」


 それはもう、カミラお姉ちゃんに魔法はかけてあげた方がいい気がします。

 でもあえてミオお姉ちゃんがそれをしないってことは、何か深い考えがあるはずです。


 それとテーブルの上に置いてあるお手紙。

 差出人は王都の冒険者ギルドから、ですかね?

 何でしょう?


「見ていいですか?」

「構わないぞ」

「私もみる〜」


 レイお姉ちゃんとくっついて、お手紙の内容を読みます。


 言い回しが難しくて読みにくいですね……

 大人が書く手紙ってこんな風なんでしょうか。


「えっと〜、『狩った魔物を報告してない疑惑』か『適性ランクじゃない疑惑』の可能性があるから『冒険者ランク特殊適性検査』受けてね〜、ってことかな〜?」

「なるほど、なるほど?冒険者ランク特殊適性検査ってなんですか?」

「しらな〜い」

「恐らくだが、実力と乖離したランク帯に居座られ続けると緊急依頼の時に呼び出せない。だからランクを上げさせろ、といった所か」

「え〜、やらし〜」


 やらしいんですかね?

 冒険者ランク特殊適性検査……


「冒険者ランク特殊適性検査、そういうのがあるんですね」

「他にも低ランク帯に居座って得をしようとする冒険者がいたのであろう。ノーデンは永らくある国だ、対応策を敷いているのであろうな」

「じゃあ〜、今から王都にいくってこと〜?」

「うむ、そうなるな」

「それでパーティリーダーが必要なんですね、なるほど!」


 ミオお姉ちゃんの耳が聞こえないままなのはまだよく分かってないですが!


「誰やる〜?」

「此奴の次に加入したのは誰だ?」

「誰だろ〜?」

「レイお姉ちゃんですよ」

「でもでも〜、ここは年長者がいくべきだよ〜」

「長老に責任を押し付ける風習、良くないぞ。そも妾は8歳が故な、最年少だ」

「うわぁ〜、ずる〜い!こういう時だけ〜!」


 レイお姉ちゃんとカミラお姉ちゃんがリーダー代理を押し付けあっています。

 ミオお姉ちゃんがいたら「私がやるよ」って言ってくれるんですけれど、今のミオお姉ちゃんはお二人の言い合いを見てニコニコしてるだけです。

 聞こえてない訳ですから、「私がやるよ」なんて言う訳ないですし、そもそもミオお姉ちゃんが出来ないから決めなきゃいけないんですから。


「でしたら、私がやりましょうか?」

「ふむ」

「えっ、いいの〜?」

「ミオお姉ちゃんみたいに、前に出てお話をしたり聞いたりすればいいんですよね?」


 そこまで難しいことではないはず、はずです!


「そうであろうな。しかしだレイ、これでアリスにやらせたら相当に情けないぞ?」

「ふ、ふ〜ん。そう思うんだったらカミラちゃんがやったら〜?」

「往生際が悪いなお主。仕方あるまい、妾が受ける。年少にやらせる奴がどこにおろうか」

「やるんでしたら、お譲りしますよ」


 カミラお姉ちゃんの方が難しいことは分かってますから。


「お主は気にするでないアリス。不甲斐無い此奴が悪いのだ」

「なんで私だけ〜?」

「当たり前であろう?このパーティの2番手はお主だ。これ以上は言わせるなよ?」

「う〜、ごめんなさい!お願いしま〜す!」


 レイお姉ちゃん、なんだか珍しい感じです。

 ミオお姉ちゃんが話さないからでしょうか、ちょっと変かも、ですかね?


「うむ、謝っただけ良しとしよう。でだミオ、いや、此奴の耳は聞こえないのであったな。では朝食を食べ、各々準備するように」

「今日の朝食当番誰だっけ〜?」

「マリンお姉ちゃんじゃないですか?」

「そういえばマリンちゃん何してるんだろ〜、アトリエかな〜?」

「だろうな。今頃、あの紙束の前で唸っている筈だ。今日は妾がやってやる、5分だけ待て」

「は〜い」

「ありがとうございます」


 カミラお姉ちゃんが自分からやるのも珍しいです。

 スージーさんとスーナさんはお散歩ですかね?

 しばらくすれば戻ってくるはずですから、置き手紙もいらなさそうですかね。


「あの、ミオお姉ちゃん」

「?」


 ちょっと気になって呼んでみても、やっぱりニコニコしてるだけです。

 あ、いえ、頭は撫でるんですね。

 はい、好きなだけ撫でていいですよ。


 でもやっぱり、耳は聞こえないみたいです。

 なんだかミオお姉ちゃんだけこの世界にいないみたいで、ちょっとだけ不安な気持ちになります。

 大丈夫でしょうか……

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