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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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533話 下賜品


 転移スキルで家に帰り、リビングに入る。

 スージーが洗濯物を畳んでいて、スーナはいない。

 部屋で寝てるのかな?


「早かったなお主ら」

「いやまぁ、色々あってね」


 カミラはソファに寝っ転がっていた。

 原初の吸血鬼の威厳はどこへやら。

 暇なら一緒に来てくれれば良かったのにね。


「シフトベアがミオお姉ちゃんを襲ったみたいで!」

「おぉー、そうか」


 半分興味無さそうな返事だけれど、つまりもう半分は興味が含まれる返事だった。


「あれに襲われて無傷であったか。なかなかやるではないか」


 カミラが私の体を舐め回すように見てくる。

 それにしても何とも返しづらい言い方をするじゃん?


「いや、無傷じゃないよ。普通の人だったら致命傷も致命傷。回復魔法があったから無傷に見えてるだけ」

「何だ、そうか。いやしかしだ、生きているだけ大したものだ」


 カミラがふんわりとフォローを入れてくれる。

 今日は機嫌がいいね、って言ったら怒られるから言わないでおく。


「ミオさん、少しよろしいでしょうか?」

「どうかした?」


 スージーが話しかけてくる。

 基本、スージーに聞かれるのはこの家についてだけど。


「マリンさんはお友達の魔導士ということで間違いありませんか?」

「間違いないけど、え、どうしたの?」

「いえ、特にこれといってありませんが、その、どういう関係なのかなと……」


 スージーが視線を私から逸らす。

 その視線を追えば、マリンが両膝をつき深々と頭を下げながら、レイ王妃から下賜(かし)品を賜っていた。


「何してるの?」

「プレゼント〜」

「それって誰の角ですか?」

「ユニコーンの〜」


 なるほど、ユニコーンの角を貰ってマリンはこんなにかしこまっていると。

 友達同士でやってるから、膝ついてとかはジョークのつもりのはず。

 いくらマリンの感謝の気持ちが強くてもね?


 そもそもユニコーンの角には伝説として、毒を治す効果がある。

 錬金魔法の素材として使えるんだろうね。


「こ、この恩は、必ず……!」

「いいっていいって〜」


 レイのいつものふわふわとした煙のような語尾に対して、マリンの言葉は重く気持ちがこもっていた。

 この敬礼、マリンは本気でやってるよ。

 それにレイは絶対本気だって分かってないよ、ふざけてると思ってる。


 いくらマリンでは手の届かない幻想種の素材とはいえ、ここまでなるって不思議だよね。

 価値観がこの世界に適応してないからっていうのもあるけど、現実世界で言えばどんな感じなのかピンと来ない。

 ここまで本気で感謝出来るプレゼント……


「ユニコーンの角ってそんなに素材として優秀なの?」

「ゆ、優秀も何も!」


 マリンが素早く顔を上げて私のことを見てくる。

 その目は本気、今からオタク特有の早口好きなもの語りが始まるのを直感で理解出来た。


「えっと、ユニコーンの角は、これ1つであらゆる治療薬を網羅出来てですね、ふ、普通は粉末状で売られているのですが、それは粉末の数グラムでも治療薬を錬金出来るからであって、角の粉末ならまだしも、角のまま頂けるとは、つまり一生は治療薬作りで困らないのと同義なのです……!そ、それに、粉末の数グラムでも金貨は当たり前、手に入れるのも一苦労なのに、この角のまま買うとしたら、いくらになるのか……」


 マリンは気が遠くなっているのを表現するように、額に頭を当てて首を振る。


「ほわぁー。なんですかね、すごいんですね!」


 アリス、その反応は何も分かってないね?

 オタク早口についていけない非オタの反応だね?

 ただとりあえず凄い事はあってるね、間違いない。


「妾から言わせれば、また獣人族に非常識な事をしておるな」

「マリンちゃんいるかな〜って思ったから採ってきただけだよ〜?」

「うむそうだな。非常識だ」

「えぇ〜?ひどいよカミラちゃ〜ん」


 そんなユニコーン見かけたから角を折ってきたっていうのは、この世界では非常識だと。

 ゲーム世界で言えばボスモンスターは乱獲するものだけど、この世界では違うと。


「しかしだマリン、お主が簡単に受け取るなど、お主の性格にしては欲に忠実だな」

「い、いえ、レイさん、それにミオさん相手だと、断っても断れきれないので……」

「なるほどな、諦めたのか。此奴らは善意の押し付けが激しいが故な」


 世のため人のためを思って生きてるのに、まさかそんな言われ方をするとは……

 ジュースを買ってあげる感覚で金の延べ棒を渡してるから、ちょっと変な感じになってるだけであって。


「私達としては受け取ってくれた方が嬉しいもんね?」

「ね〜」

「でもお2人がやり過ぎなのは事実です!」

「いやまぁ、そうだよ?」


 まるで被害者の会みたいな顔をしてらっしゃるけど、別に加害はしてないよ?

 いい事してるんだよ?

 もはや開き直るしかない。


「そ、それでは、私はこの角を安全に保管するため、アトリエに行ってきます……」


 マリンは大事そうにユニコーンの角を持って、ゆっくりとリビングを出て行く。

 レイからしたらジュースであっても、マリンの中では金の延べ棒。

 たったそれだけの事。


「それでだお主、ユニコーンの加護は受けて来たのか?」

「   あっ、レイ〜?」

「お主以外に誰がいる」

「いや〜?もらってないよ〜?」


 レイはさも自分が正当かのように、何を言っているんだと首を傾げる。


「相も変わらず、お主は阿呆だなぁ」

「なんだって〜!」


 言葉に反して一切怒ってないレイが、今だと言わんばかりに嬉しそうにカミラに跳びつく。

 しかしハグしようとする寸前でカミラは黒い霧に消え、リビングの扉の前に立ってドアノブに手をかけていた。


「あの森に入るのは面倒であろうが、あの馬から加護を受け取る事だ。幻想種に使命を果たさせるのも、庇護者の役割だ」


 カミラはそうとだけ言って、2階に上がっていく。


「だってレイ」

「むぅ〜」


 レイはカミラに抱きつかれず、不満そうに頬を膨らませている。

 ちゃんと話聞いてた?


「ユニコーンの加護ってなんでしょうかね?」

「さぁ。回復系の加護じゃない?」


 その辺は加護を貰ってみないと分からない。

 とりあえず今日の所は、アリスに強化魔法の事をプラスで色々教えたりしながら、シフトベアの沈静化の為に家でのんびりと時間を過ごす事にした。

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