表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
537/545

532話 危険な山


 さっきまで穴だらけだった右足を、レイは遠慮なく確かめるように触ってくる。


「ど〜?痛くない〜?」

「ふぅー…… うん、痛くはないかな?」


 もう回復魔法は終わってるし、見てくれも元通り。

 ちゃんと立てたら何も問題なし。


「レイ、手貸して」

「あいあいさ〜!」


 レイに手を引っ張ってもらって、勢いよく立ち上がる。

 ふらっと前に体勢を崩しそうになりながらも、確かに自分の二足で地に足つける。

 ただ右足だけは正座した後の痺れみたいな、ピリピリしながらも自分の足じゃないような感覚が強い。


 もう少し時間が経てば血が巡って、いつも通りの足に戻りはしそう。

 例え右足が穴だらけになっても、医者なし入院なしで復帰出来るのは本当に素晴らしいね。

 大前提は怪我しないのが1番だけど……


「ありがと、よーしよしよし」

「んふ〜」


 お礼にケモ耳を巻き込みながら頭を撫でれば、レイが甘い吐息を漏らす。

 尻尾も揺れて、本当に犬みたい。


 いやいや、そんなことしてる場合じゃない。


「とりあえず戻ろっか」

「は〜い」


 いつの間にか迷子だったレイとも合流して、敵対生物も排除して、やるべきことが終わったからアリスとマリンの所に戻らないとね。


「そういえばレイにしては遅かったけど、何かあったの?」

「あ〜、えっとね〜……」


 しばらくレイが考える。

 記憶容量が余りにも貧弱過ぎる、という訳ではなさそう。


 何か隠し事をしてる?

 いやでも、ただ山を往復する課題を出しただけで、そんな隠し事って出来るかな?


「鳥ぴっぴを捕まえようとしたら変な森に入っちゃって〜」

「鳥ぴっぴ?」

「うん、鳥ぴっぴ〜」


 鳥ぴっぴ。

 ぴっぴって何?

 どのぴっぴ?


 それより、どうして鳥を捕まえようとしてるの?

 目移り激しすぎじゃない?


「それで?」

「ユニコーンがいて〜、倒したら出れた〜」

「??? うん」


 レイがにっこにで経緯(いきさつ)を説明してくれるけど、絶望的に間が足りてない気がする。


「えっと、鳥を追いかけたら森に迷い込んじゃって、魔法か何かで出れなくなって、その森にいたユニコーンを倒したら出れたってこと?」

「そうそう〜」


 サラっと言ってるけど、確かユニコーンって幻想種だよね?

 マリンとそんな会話した覚えあるよ。

 可愛らしい顔して、どうして星の守護者的な種族を倒しちゃうかな?


 色々とレイの話を聞きながら、ちょっと急ぎ足でアリスとマリンのもとに向かう。


 ただ、マリンの錬金素材を集めていた場所に2人の姿はなかった。

 シフトベアの叫声がアリス達に届いて、この場を離れた可能性を信じたい……


「ミオちゃんが目を離しちゃダメでしょ〜!」

「うっ」


 2人は飛行魔法も使えるしマリンに至っては旅の分で危機感強いし、まさか襲われる訳がない。

 でも、当然で真っ当な言い分過ぎて、何も言い返せない。

 私が保護者じゃん!


 更に急いで小屋まで戻る。

 緩やかな斜面を走って降りて、2人がいないかと探し回る。


「こっちです!」


 上の方からアリスの声が聞こえる。

 そっちを見ればアリスが、そしてマリンが空で待機していた。

 マリンは周囲に目を配って警戒している。


「魔物の声が聞こえましたけど!」


 アリスが空から降りてくる。

 やっぱりシフトベアの叫声が聞こえてたみたい。


「アリスが言ってたシフトベアって魔物のだね。それでここまで逃げてきたの?」

「はい、マリンお姉ちゃんがすぐに離れた方がいいって」

「そっかそっか、いい判断だと思うよ。えらいえらい」


 アリスを軽く抱き寄せて、緊張状態を和らげる。


「マリンちゃ〜ん、ど〜?」

「あっ、えっと、と、特に見えない、ですかね……」


 マリンの索敵では、シフトベアはいないみたい。


「マリンがここで暮らしてた時って、シフトベアが攻撃してくる事ってあったの?」

「い、いえ、全く……」


 攻撃が即死級だから、それはないよね。


「何かを襲ってる所は?」

「そ、それもありません。と、あの、言いますか、声すら初めて聞きました……」


 マリンが住んでた数日では、シフトベアが攻撃性を見せた所が見たことがない。

 つまりこの生態系の捕食者はシフトベアであって、外から何かが来ないと攻撃してこないと……


 私かレイに反応して、臨戦体勢に入ったって考えた方が無難だね。


「これ、私とレイはこの山に入らない方が良さそうだね」

「えっ、どうして〜?」

「何でも何も、私とレイがいるせいで攻撃されるから」

「ほへぇ〜、アリスちゃんとマリンちゃんはいいの〜?」

「うん、大丈夫なんだと思う」

「ずる〜い」

「ず、ずるい、ですか……」


 何とも言いづらそうに、マリンが苦笑いを浮かべている。

 レイには「弱いから狙われない」って理屈が届いてないのかもしれないね。


「それで結局、シフトベアは大丈夫なんですか?」

「あぁー、どうなんだろうね。私を襲ってきたシフトベアは氷漬けにしたから、その分はもう動かないんじゃない?」

「じゃあ、それ以外はどうなんですか?」

「うーん、言い切りは出来ないけど、個人的にはもう採集はオススメ出来ないかな」


 シフトベアって集団で動く魔物だし、まだいるシフトベアが激化してるって説は十分ある。


「とりあえずは、沈静化するまでは離れた方がいい気がするね」

「ミオお姉ちゃんがそう言うなら、今日はもうやめておきますか?」


 アリスはすっかり怯えちゃっていて、なんかもう早く帰りたそう。

 私のマントをしっかりと握っている。


「ま、まぁ、必要な分は、集め終えましたし、後は市場で買えば、間に合いそうなので……」

「宿題がいいなら〜」


 2人もどっちでも良さそう。


「じゃあ、今回は大事をとって家に戻ろっか」

「そうしましょう、そうしましょう」

「で、では……」

「はいは〜い」


 マリンも警戒をやめ、降りてくる。


 とりあえず、今日の所はドロンドイ山脈を離れ、ユスティアに戻ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 弱いと攻撃してこない……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ