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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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528話 強化魔法は腕相撲で


 8月上旬までは2日に1話ペースかもです!


「さむいです!」

「寒い?」

「さむいですってー!」


 残念、アリスでも耐熱強化や耐寒強化は難しいみたい。

 手から吹雪を出すのを止めて、ゴールしたマラソンランナーにかけよるタオル持った人みたいに、アリスを毛布で包む。


「うぅー、さむかった…」

「寒かったねぇ」


 私がやったことだけど、安心させるように微笑みかけることで、まるで私がいい人みたいに演出する。

 という意図はなく、ちょっと寒くしすぎたって後悔があるから、今は冷えてるアリスを抱きつきまわして、暖めてあげる。


「ミ、ミオさん、な、なんでしたっけ、う、腕相撲?その、やってみませんか……?」

「えー、まぁいいけど」

「あ、ダッ、ダメ、でしょうか……?」

「ダメとかじゃないんだけど、強化魔法を極めすぎると簡単に相手の腕が折れちゃうから、単に受けるだけならいいよ」

「あれっ、マリンお姉ちゃんも強化魔法を覚えたんですね?」

「と、とりあえず、腕周りの筋肉は、覚えたので」


 筋肉を覚えたからといって強化魔法が使えるのは全く別の話なんだけどね。

 ただマリンも魔力を感じて魔法を研究する身、それほど複雑性のない強化魔法なら簡単に覚えられそうなのは間違いない。


「それで、やる?大丈夫そう?」

「あっ、はっ、はい、お願いします」


 マリンはペコリとお辞儀をして、その萌え袖を捲り始める。

 やる気満々だぁ。


 レイと強化魔法ありで腕相撲は本当に怖くて怖くてしょうがないけど、強化魔法を使えてもまもないマリンならそこまで恐怖は感じない。

 アイテムボックスから丸テーブルを取り出して、マリンに対峙する。


「ミオお姉ちゃん、マリンお姉ちゃん、頑張ってくださーい」


 アリスが毛布に包まりながら声援を送る。

 森の涼しさある気温だけど、ちょっと冷静に見ると変だね、暑そうで。

 次からはちょっと涼しいぐらいの冷気にしておこう。


 私は右腕に出来る限りの強化魔法をかけて、テーブルの上に肘を置く。

 ムキムキって感覚が時間が経つにつれてより鮮明になっていく。

 筋肉は何も変化がないのに、無色透明な魔力がその感覚を理解させてくれる。


 マリンも肘を置いて、私の手を握ってくる。


「スキンシップ慣れたね」

「えっ、あっ、まぁ…… わ、私でも、たまに、変に思うことはあります……」

「悪いことじゃないんじゃない?タッチセラピーがあるぐらいだから」

「タ、あっ、え……?」

「要はマッサージだよ、マッサージ」

「な、なるほど……」


 全然違うけど、ただ触れ合うことがいいのは間違いない。

 腕相撲で手を握ることが、効果あるかはさておき。


「よしっ、いつでもいいよ」

「あっ、い、行きますよ…… うっ!」


 マリンの握る手が一気に強くなり、中学生の少女とは思えないほどのパワーで私の腕を倒そうとしてくる。

 手は細くてすらっとして器用そうなのに、力は大人の男性って言われても違和感ない。

 思わず筋肉が筋張る。


「ど、どう、ですか……?」

「強いよ強い、強化魔法なかったら腕折れててもおかしくないよ」


 というか初めて強化魔法を使ったというには、強すぎる。

 筋肉を熟知すれば、強化魔法の精度が上がるとか?

 ありそう。


「それでどう、いい感じ?」

「そ、そう、ですね…… お、思ったよりかは、でしょうか」


 これで思ったよりなんだ。

 魔導士が冒険者より魔法が長けてるっていうのは頷けるけど、アリスの強化魔法よりかは何倍も威力がある。

 それにマリンの表情を見ても何も苦しくなさそうで、やっぱり特化すると強いんだなぁって。


 魔法剣士……


 マリンは手の力を抜くと、手を離してすぐに本に手を伸ばす。

 それに知識がイメージを補ってそうだから、このまま冒険者に転向してもマリンから上手くやりそう。


「それじゃあ一区切りついたし、そろそろ素材集めに行く?」

「あっ、はい、分かりました、準備します。あの、机を借りても……?」

「いいよ、好きに使って」

「あっ、ありがとうございます」


 手で狐を作って、どういたしましてって合図で狐の口を2回パクパクさせる。

 そういう文化があるとかは全くないけど、意図は伝わったみたいで、ちょっと目を丸くしてから、すぐにその目は笑った。


 それから毛布に包まっている体育座りをしているアリスを、膝を抱えて持ち上げる。


「おもくないですか?」

「重いよ?軽いけど」

「どっちなんですか、もう」


 アリスのちょっとふて腐れ気味の声が聞こえる。

 こんな収まりよく持ち上げられて、そっちに何も文句ないっていうのが、子供っぽくて可愛らしい。


「アリスは錬金魔法の素材って分かるんだっけ?」

「少しぐらいなら!」

「そっかそっか」


 いつの間にか錬金魔法についても勉強してるんだね。

 私はちょっとだけ手伝ったことはあっても、もう何を集めたのかも覚えてない。


 アリスを持ち上げたまま、マリンの準備が終わるのを待つ。

 マリンは色々と魔導具を机に並べている。

 形は様々で、そしてどれもどの用途で使われるのか、私には分からない。


 笛のようなものだったり、ボールのようなものだったり。


「えっ、そ、それで、行くのですか……?」


 収まりよくアリスを抱えているのを見て、マリンが何かを疑うように聞いてくる。

 正気を疑ってるのかもしれない。


「これで行くんですか?」

「アリスがいいなら」

「じゃあ、これで行きましょう」

「あっ、そ、それでいいのですね……」


 残念ながら山の森を舐めている私とアリスは、マリンには正気には映ってないんだと思う。

 それでも強いから許されているのか、何も注意されることはない。


 それと、本当にこれで行くんだ。

 まぁいっか。


 やがてマリンも準備が完了して、錬金魔法の素材集めのために、森の奥へと足を踏み入れていく。

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