522話 第7回 ミオ先生による魔法授業(第3編)
土日休みます!
よい週末を!
「筋肉の簡易的な構造として、まず骨に筋肉がついてるっていうのは知ってる?」
「はい、知ってます!」
「だ、大丈夫、です」
えっ、知ってるんだ!
前に言ったっけ?
この文明と教育水準で、体に仕組みについて知られてるのすごくない?
たまたま?
アリスがすごく勉強熱心のいい子で、マリンが薬を作るから体の仕組みを知ってただけ?
どのような理由であれ、知識があるのはいいこと!
「次に筋肉が伸び縮みすることで、腕が動いたりするっていうのは?」
「うっ、そうですねぇ、マリンお姉ちゃんはどうですか?」
「え、わっ、私は問題ありません……」
「アリスが知らなそうだから簡単にね」
「お願いしますー」
アリスが恥ずかしそうに頭を下げる。
無知は恥じゃないよ、大丈夫。
私は2人に見えやすいように右手を横に突き出して説明を始める。
「力こぶって分かる?この二の腕の上側に出来る筋肉のこぶ」
「お父さんがムキってやってました」
やりそー。
世のお父さんは絶対に子供に見せるよね。
「残念ながら、私は力こぶないけどね」
私はグッと腕に力を入れるも、あの塊が現れることはない。
未発達の体には、力こぶが出来る筋肉はないからね。
悲しいね。
「私もないですよ!一緒です!」
アリスが嬉しそうにポーズを真似してくる。
筋肉発達してないってことだから、いいことではないんだよ、アリス。
アリスの年齢ならまだしも、高校生にもなって筋肉発達してないは致命的だから、気をつけてね?
「マリンはある?」
「う、うーん、い、一応、でしょうか……?」
マリンはローブの袖を捲り上げ、同じように肘を曲げる。
確かにそれらしい物がありそうな膨らみが……
マリンですらあるのにね。
「おー、ちょっと硬いです!」
「あ、あはは、そ、そんな……」
反応困るのちょっと分かる。
私はないけどね!
「それで話を戻すと、どうして膝が曲がるかって、この力こぶの筋肉が、肘より先側の骨を引っ張ってくれてるからなの」
「へぇー。引っ張るってことは、筋肉がギュッてなってるんですかね?」
「そう、その通り!アリス頭いいね!」
「えへへ」
一気に説明の手間が省けた。
アリスの頭を撫でたら、アリスはニッコリと嬉しそうになる。
かわいい。
そして私が手を離したあと、マリンもアリスを撫でる。
「え、偉い、です……」
「えへへ、お二人ともありがとうございます」
マリンからスキンシップしてる。
段々慣れてきてるのが分かるね。
「その筋肉がギュッてなる時、アリスは強化魔法をかけてるの?多分、ちょっとだけ違うよね?」
「そう言われると、違うかもしれないです」
なんか自信がなくなっちゃったみたいに、アリスが首を傾げながら答える。
「なんて言うのかな。『筋肉に』ってより、『手に』とか『足に』って感じでしょ?力をギュッて入れた時、それがいつもよりもギュッてなるイメージで」
「あぁー、はい、それで合ってると思います!」
今度は自信を持って、私の言葉に同意してくれる。
イメージの言語化って難しいけど、「ギュッ」みたいな表現で事足りる時は楽で助かるね。
「だからアリスの強化魔法は、筋肉を強化してるとか潜在能力を引き出してるっていうより」
ここから噛み砕いて表現するの難しいね。
多分アリスがやってるのは、一定の方向に働く運動エネルギーを増加させてるんだと思う。
手を握る時の強化魔法は、手の内側への運動エネルギーを増やしてあげてより強く握れる、みたいな。
ベクトルだと更に分かりやすく説明出来るけど、アリスやマリンに通じるわけがない。
「魔力でプラスの力を加えてる、みたいな?」
「そうですね、そんなイメージです!」
イメージが合ってるならよかった。
これで私とレイのやり方とイメージが違うっていうのが分かったからね。
「それじゃっ、私とレイの身体強化のやり方について教えるね。何回か言っちゃってるけど、筋肉の補助として魔法の筋肉を作ったり、バネを入れるイメージでやるんだけど」
アリスぐらい直感的なイメージをしてるなら、この説明だけでも出来ちゃいそうだね。
バネの方はバネの原理を教えないと大変そうだけど、走る時にはバネのイメージを出来ると本当に好きに走れるようになるから、後でちゃんと教えてあげないと。
「ひとまず魔法の筋肉を作るイメージで練習してみよっか。もしかしたら直感で出来るかもしれないから」
「分かりました!頑張ります!」
アリスは可愛らしい両手ガッツポーズと共に立ち上がる。
ぞい!
マリンの方はだけど、あんまり乗り気じゃないというか、ピンと来てなさそう?
ゆっくりと立ち上がり、何かの本をアイテムボックスから取り出す。
「何ですかそれ?」
「あっ、アリスさんは、あまり、見ない方がいいかと……?」
えっ、なになに?
こんな白昼堂々えっちな本?
なんて冗談、マリンは苦手そうだから言わずに、ただただマリンが取り出した本を見る。
タイトルは解体新書。
解体新書!?
「えっ、それ何の本?」
「あっ、ミ、ミオさんは、イメージが崩れたりとか、ないですかね……?」
「何だろう、医療系の本?筋肉の種類とか載ってる?」
「はっ、あっ、その通りです。し、知っていましたか、解体新書?」
知ってるも何も、歴史で習うもん!
いやいや、そもそも世界が違うじゃん。
ただ名前が解体新書なだけで中身が全くの別物の可能性はある。
もしくは偽神言語がそれっぽい名前を当てはめたとか!
「筋肉について調べるやり方もいいと思うよ。私もやったことあるから」
本当に覚えるとなると知識量多すぎてやめたけどね。
ということで、各々のやり方でとりあえず身体強化が出来るかを見てあげる。




