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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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518話 山修行


 すみません、昨日はお友達と遊んでいました!

 平日頑張っていきましょう!


 翌朝、向かった場所はかつての小屋。

 マリンが出て行ってから、もう誰にも使われない寂しい山小屋となっている。

 と言っても、マリンはただの不法占拠だからね、今のあり方の方が正しい。


「えーっと、今日ここに来たのは言わずもがな、だね」

「いってくださ〜い!」

「うんうん、そんな生徒のためにもう1回、今回の授業について話すね」


 アリス、レイ、マリンをゆるく並ばせ座らせて、まるで先生みたいに今日のやることを話す。

 残念というかいつも通りというか、カミラはお休みだね。

 この3人が座ってる後ろに日傘をさしながらでも立ってくれてたら、保護者が増えて安心なのに。


「まず、それぞれのやるべきことは覚えてる?」

「強化魔法の練習と、剣の練習です!」

「そう、アリスはその2つだね」


 強い冒険者になる為に!

 練習メニューがレイの戦闘スタイルと合いすぎで、レイみたいな脳筋スタイルみたいにならないか心配。

 レイの強化魔法と合わせた剣術、基本と応用がしっかりできる魔術、それを満遍なく使えたら強いのにね。


 理論上強いよね?

 何でも出来るよね?

 どうして魔法剣士って不人気職で、器用貧乏って言われてたんだろう?


「え、えっと、素材集めと、な、罠で食材の調達……?」

「マリンのメインは素材集め。罠の方は技術を忘れないためにね。忘れちゃったら勿体ないからね」

「私にも後で教えてください!」


 私とカミラが転移魔法を使えちゃうから、寝る場所も食事も困ってないのは間違いない。

 でももしね、もし使えないみたいなルールで遠出することになったらね、罠が使えた方がいいかもしれない。

 というのはジョークとして。


 もしかしたら私やレイ、カミラがいない状況で野営しないとってなった時、アリスのマリンが魔物を狩って食べるっていうのは、本当の本当に心配になっちゃう。

 安全に野ウサギとか、そういうのを採って食べて欲しい。


「私は私は〜?」

「レイは強化魔法使えちゃうし、プラス罠を覚えなくても肉ゲットできるもんね」


 でもレイには個人課題を用意してるよ。


「そんなレイには、山頂の写真を撮ってきてもらおっかなって」

「え〜?それだけでいいの〜?」

「飛行魔法はなしだよ?強化魔法だけね?」

「それでも簡単だよ〜」


 レイは思ったよりも簡単な課題に、少しご不満といった様子。

 木々の隙間から見える空を眺めるように、憂いた表情を浮かべている。


「簡単なんですか?」

「レ、レイさんだからです……」


 マリンは困りつつ、苦笑い混じりに冷静な見解を述べる。

 その通り、登山を舐めたらダメだよ。


「それに付け加えて、3分で往復して戻ってくること!」

「おぉ〜〜〜?」


 レイは難題を与えられてやる気が出るタイプと見た。

 ずっと高い段数の跳び箱に挑戦し続けてそうだもん。


「いけるかな〜?」

「どう?結構ギリギリじゃない?」


 何もない山肌を往復するだけだったら、大したことないっていうのは強化魔法持ちの共通認識。

 足が挫くのが怖いぐらいで、8000キロ級の本気登山の山でさえなければ、往復3分で帰れる自信がある。

 降りるだけに関しては、ほとんど自由落下で帰れるからね。


 でも悲しきかな、木が生えてる山はそう簡単じゃない。


 まず全力疾走が許されない、木にぶつかっちゃうからね。

 そして滑る、植物とか苔を踏むと本当に滑る。

 木の枝で飛び移って行くのも、ここに生えてる木が細いから出来ない、折れちゃうかもしれないからね。


「3分って」

「む、無理ですよ、アリスさん。ミオさん、レイさん、だからです…… 」


 常識な見解持ちがいてよかったね、アリスが強化魔法さえ出来れば何でも簡単に出来るって高望みされても辛いから。


「えぇ〜、3分か〜」


 レイが森に視線を向ける。

 一見無理難題なのに、不可能とか思ってなさそうで、むしろ面白さを感じているようなその目は、目は口ほどに物を言うって感じで。


 レイの頭の中はこう。


 あの種類の木は皮が乾燥して、脆そうだけど掴みやすくて方向転換とかの起点作りに出来そう。

 白い木は逆な性質で、太い幹だから思いっきりジャンプするのに使えそう。

 そうだっ、汚れるのイヤだから手袋つけよ。


「レイお姉ちゃん、やる気いっぱいですね」

「いっぱいだよ〜?1回で達成するつもりだからね〜」


 レイはパチンと手を叩き、やる気を見せる。


「こう、走っていくんですか?」


 アリスは両手を交互に前に出す。


「ううん〜、ぴょんぴょん跳んでくつもり〜」

「あれですか?グリフォンで戦った時のミオお姉ちゃんみたいにですか?」

「そんな感じじゃない?あれに速さを求めてね?


 アリスを抱えながら戦ったグリフォン戦ね。

 木と木を飛び移って戦ったね。


「なるほどぉ。剣の練習の時には戻ってきてくださいねっ!」

「練習でもすぐ戻ってくるから〜」

「な、何でしょう、わ、私がおかしいのでしょうか……」

「ううん、マリンが正しいよ」


 私とレイのせいで規模感と価値観がおかしくなっちゃってるのが分かる。

 ごめんねマリン、私達はこれからも変なことをしてくから。


「それじゃっ、それぞれの課題スタート!お昼にはここ集合ね!」

「わぁ〜!」


 新幹線のようにレイが私の横を通り過ぎ、山を登りにいく。

 ドップラー効果。


「はっ、はやい……」

「速かったですね」

「ほら、2人もね」

「はーい」

「あっ、はい」


 こうしてアリスとマリンも腰を上げ、それぞれの課題に取り組むのであった。

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