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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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512話 マリンの未来視


 すみません、月曜のおやすみします!


 わぁ。


 端的に、何もやる気が出ない。

 レイに遊ばれるだけの、人型の何かになった気分。 


「わぁ」


 馬乗りになって、レイが私の胸に耳を当ててくる。


 心音を聞いてるのかな。

 レイのケモ耳が私の目の前でふらふら、ピコピコと動いている。


「ミオお姉ちゃん、帰ってから全然動かないですね」

「ミオちゃんに薬飲ませたら、いつもはできないことで遊べるね〜」

「こ、怖いですよ、レイさん……」


 怖いねぇ。

 薬飲ませて、何も出来ないようにさせて弄ぶとか、言ってる事が犯罪者だよ。


 私は何をしているかというと、何もしてないんだけど、要は精神安定剤の副作用で、ものすごい無気力感に苛まれている。

 面白い話、頭はすごく回るのに、1回ベッドに横になっただけで寝返りを打つのすら大変なまでに、身体が言うことを聞いてくれない。

 言葉を発するのも大変。


「ミオお姉ちゃん、お腹空いてませんか?」


 アリスが顔を近づけてくる。

 顔がいい。


 弄んでくるレイに対して、アリスは人のことを慮ってくれる優しい子で、胸が暖かくなるよ。

 レイの頭がくっついてるからあったかくなってるだけかも。


 とりあえず6時間経ちそうだと思ったから、適当にありあわせの食事を取ったから、お腹は空いてない。

 それを伝えようと思って首を縦に振ろうとしても振れず、言葉を発そうとしても発せず、やらせない気持ちになってくる。


「ミオちゃん返事できないよ〜?」

「そうなんですね」


 アリスはちょっとだけ私のことをジッと見てくると、ほっぺたを突っついてくる。


「えへっ」


 アリスが嬉しそうに頬を緩ませる。

 かわいいね。

 私の空腹度はどうでもよくなっちゃったのかな?


「未来視は可能か?」

「あっ、はい」


 ギリギリ視界の端、マリンとカミラのやり取りが見える。

 マリンの目が赤く灯り、カミラの方を見ているようで、そこで焦点があってないように見える。

 どういう風に見えてるんだろう?


「どのような未来が見える?」

「カ、カミラさんが、お、お墓の近く、で…?」

「ふむ…… あり得る未来だ」


 誰かのお墓参りかな?

 でも場所に囚われていないのが分かるね、だってここ宿だもん。


 真面目に分析をするなら、その人に関連した未来を見る事が出来る。


「時間を指定して見ることは出来るか?」

「ど、どうでしょう…… け、研究してみないと……」


 錬金魔法の研究はいいのかな?


「お主は既に研究の専門を持っているであろう?平行して進めるのか?」

「そ、そう、なりますかね……」

「マリンちゃん大変だね〜」

「い、いえ、そ、そのようなことは、大したあれでは、ないですし……」


 大したあれだと思うよ?

 錬金と未来視だよ?

 世界によっては大賢者扱いされても文句ないよ?


「今の所は時間指定は無理か。余り使い用がないな」

「す、すみません……」

「何、謝る必要はなかろう」


 カミラにしては優しい反応。

 本当に謝る必要はないけどね、マリンはちょっと否定されると負い目を感じがちだから。


 ただ直感で危険な未来をパッとみれるみたいな、そういう未来視よりかは少しだけ不便っていうのは、ちょっとだけ事実だね。


「しかし、有用な魔法であることは間違いないが故、出来ることならば使いこなせるようにしたいな」

「それは、そう、思います……」


 でも「イメージで時間指定してください」って難しくない?

 そもそも時間についての物理学的知識がないのと、どのイメージか的確にその時間指定を出来るかを私は全く想像出来ない。

 こう思っちゃった以上、私は時間指定出来ないんだろうね。


「ずっとマリンお姉ちゃんのほう見てますね」


 アリスが声をかけてくる。

 別に嫉妬とかではない、だってマリンは未来視という不思議なことをしてるからね。

 アリスだってマリンに気を取られていたはず、そのふとした瞬間に私の顔が視界に入ったのかも。


「な、何も、面白いものは、ありませんよ……?」


 いいや、見るよ?

 だって面白いもん。


「目の色が変わる、否、これは比喩表現ではないぞ?真に目の色が変わる理由は何故だ?」

「えっ、えっと、その、目の色が変わらない、というのが、よく分かっていなくて……」


 マリンは目を擦りながら、アイテムボックスから手鏡を取り出す。


「その、未来を見てる時、目の前が、見えないんですよね……」


 マリンの赤い目は手鏡を捉えているように見える。

 それでも視界が未来の世界に塗りつぶされてるなら、たしかに見えてないね。

 そう思うとちょっと不便そう。


「ふむ、似通った魔法があるが……」


 カミラはそう呟き、天井の方を見ている。

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