508話 これから向かう先
謎の集会、魚人族の群衆に対して多くを語りかけたセリア。
その内容には私達パーティの紹介、そして当分は開花の為に時間を割くというもの。
そもそもセリアぐらいの子が統治者なんて無理な話だからね。
そこでルールエでは商業者ギルドマスターだった、恩寵派の幹部であるラムラッドが前に出る。
「ご紹介に預かりました、恩寵派幹部のラムラッドです。本日より教祖補佐を勤めさせて頂きます。また今日は欠席しております、象牙派、ダゴン教団の幹部ベリオンも同じく教祖補佐となります」
知らない名前だね。
恩寵派も象牙派もしっかり政治のトップの補佐に入るの、帝国主義とか絶対王政とかにはならなそうで、個人的にはいいねって思える。
ただ対抗派閥がどっちも政治のトップに干渉出来るっていうのも、怖いものは怖い。
内戦とか起きてもおかしくなさそう。
ただまぁ、政治とか詳しくないですし!
16歳の娘から言えることはありませんよ!
セリアが絶対的な力を持ってるから、操り人形になるみたいなことはないだろうし。
「どうしたお主、そう目を見開いて」
「いや?何でもないよ」
ふざけてラムラッドの事を見てるのをカミラに見られてた。
皆そっちに注目してると思ったのに。
「セリア様に代わり全体方針の方を。教祖側からはありません。恩寵派は生活圏のインフラを整えて下さい。象牙派は後にベリオンから達しが来るかと存じますが、ルルイエを守るため、ダゴンとハイドラの再召喚の方をお願い致します」
あぁー、そういえば片方は倒したよね?
言い終えたラムラッドが下がる。
「そういえば、怪異のもう片方はどうなったの?」
「お主が不死性を取り除いたのはダゴンだ。片割れはハイドラだが、あれは何者かの爆裂魔法に巻き込まれ粉微塵となった。妾だけ不死性が残り、ハイドラの不死性が取り除かれた理由は妾でも知り得ない範疇だ」
爆発だから、多分だけど私が塔で戦ったアレなんだろうね。
「イクスはいたよね?」
「俺も知らん」
一蹴されてしまう。
「えーっと、ヴァリアントも?」
「あれは自分を模写しただけの存在です。記憶は共有出来てません」
そういえばヴァリアントって生体模写の魔法を使うんだっけ。
言われてみれば、その魔法があるなら自分からあの場所に来る理由ないもんね。
「ザ・カラーは?」
「僕はその爆発に少しばかり巻き込まれはしましたが、爆発が持つ魔法的性質を見抜くというのは、流石にですね……」
ザ・カラーでも厳しいと。
うーん、結局あの爆発の術者が誰で、どういう効果があったのか、何も分からないっていうのは、本当に謎しか残らない。
第三勢力と考えれば、ブラックビースト関連なのかなって思うけど……
「ではこれにて、緊急集会を終わります」
ラムラッドがそう号令すれば、魚人族の群衆が動き始める。
「ルシフェル、話がある」
「おや、原初の吸血鬼様にご指名とは」
「黙れ、ミオの話だ。お主も来い」
「手厳しいねぇカミラ君。ではセリア君、近くの準備部屋、借りてもいいかな?」
「はい、かみゃ、構いませんよ!」
こうしてカミラに連れられ、3人で別室に移動する。
準備部屋というだけあって、衣装タンスとか姿見とか、身なりを整える為に使われてる部屋だね、真っ黒だけど。
「話とはなんだい?」
「妾ら、正確には『MaS』は『ブラックビースト討伐』から席を外す」
「ほーう、ほうほう、なるほどなるほど……」
待って、私も聞いてないよ?
でもすぐに思い付く、私の療養をするためなんだろうね。
「まさかカミラ君からその言葉が出るとは」
「妾とてリヴァイアサンで胃がもたれているとでも言えようか。復讐は忘れてはいない。しかしそれで盲目となる程に阿呆ではない」
カミラは淡々と言い放つ。
その言葉から、どうしてか私を庇っているように聞こえた。
カミラがそこまで考えるとは思えにくいけど、もしそうだったなら感謝しなきゃいけない。
「そも10代の娘らに狂気へ立ち向かえというのが酷な話だ」
「それはカミラ君、君が最も理解していることだから、君がそう言うならそうなのだろう」
勝手に話が進んでいく。
「ちょっと待って、これってずっとの話?」
「あぁ、そうだ。マリンの奴も邪神の影響下にある。妾らは深淵に足を踏み込んでいる。引き返すなら今だ」
いや、うん。
マリンとアリスは分かる。
2人を巻き込んだ所でいいことは何1つないからね。
でも私とレイは違う。
私とレイの影には永遠とブラックビーストが忍び寄る。
それは偽神を介してこの世界に来ている以上は。
あの赤い目の邪神を倒し切るまで、私とレイは安心してこの世界を楽しめない。
「私も療養が終わったらまた参加するから」
「それはミオ君がしっかりと休んだら判断して欲しい。それ次第で対応を考えても、まっ、遅くはないさ」
私が気負いしないようにか、笑いかけてくる。
逆にってあるよね……
「この事はーだね、他のグレートセブンにも伝えた方がいいってことかい?」
「あぁ、頼んだぞ?妾ら込みで考えたら、いずれ綻びが出るのは分かっていたであろう?」
「まっ、それに関してはね?2000年の争は10代の子達に荷が重い」
うーん……
何かモヤモヤする。
「話を変える。竜人スタラの話だが……」
と、カミラが今度は探し人について話し始める。




