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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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502話 活動なき街 ルールエ


「お魚屋さんやってないね〜」

「働く人がいないならこうなっちゃうよね」


 せっかくの漁港街、いつも通りに戻った私達は、美味しい海鮮系のご飯に舌つづみでも打とうかと漁港近くの市場に来た。

 昨日の事もあって魚人族もいなくなってて、市場がやってる訳がなかった。


「残念ですね。オサシミ食べたかったのですが」

「真に受けていたのかアリス。熱を入れないと腹を下すのだぞ?」

「いやほら、市場なら養殖の所もあるかもでしょ?」

「養殖など物好きか金持ちがやる事だ。ルールエで手に入る物ではない」

「カミラちゃんしつれ〜」

「何、妾らを盗み聞いてる暇人などいない」


 カミラの言う通り、市場の入り口だというのに人がいない。

 入り口はチェーンで閉められ、たまに関係者らしき革エプロン姿の人がそれを乗り越え出入りしている程度。


「ど、どうしましょうか……?」

「何かこういう時って、どこ観光すればいいんだろうね?」

「これに書いてある所、もしかして全部ダメなんじゃないですか?」


 アリスがルールエの書を見ている。

 奴隷がいなくても動いてる観光場所を探してるみたいだけど、難しそうな顔をしてる。


「やっぱり奴隷制ってよくないね、本当」

「奴隷制に限った話ではなかろう、社会制度の変遷点はこうなる。革命後、戦争後、それだけでない、政体が変わる、経済の主義が変わる、それだけで街は混乱するものよ」


 カミラは面白おかしそうに口角を上げながら、社会の先生みたいなことを言っている。


「そんなことよりどこいくの〜?せっかく頑張ったのに〜」


 せっかくの観光、やることやって遊べると思ったのに遊べない現状に、レイがつまらなそうに私達の周りを回っている。


「それか竜人スタラ探しとか?」


 本来の私達の目的、ちょっとおこがましいけど私の耳を治す為、30年前にルールエに居たとされる竜人スタラを探すこと。

 それを踏まえて封印の冠士ルシフェルに竜人スタラがどこにいるかの依頼を受けてる。


「あぁ〜〜〜」


 レイはノるにも気分のせいかノれない様子、足が止まらない」


「ど、どうしましょう、どこから探しましょうか……?」

「真か?今からか?」


 カミラが面倒くさそうに目を細めてくる。


「スタラさんってお医者さんでしたよね?ルールエの病院に行ったら何か分かるかもしれませんよ」

「お主もかアリス」

「それ以外にすることないんですもん、しょうがないじゃないですかカミラお姉ちゃん」

「うむ……」


 アリスは何もしないよりかはといった様子。

 カミラはアリスに言い返せずにいる。


「そうだっ、ルルイエいこ〜!そうじゃんルルイエいこうよ〜!ね〜ミオちゃ〜ん!」


 レイが思い立ったかのようにいい、私の腕を振ってねだってくる。

 それにしてもルルイエかぁ。

 個人的にはいい提案!


 ルルイエは昨日、セリアによって浮上が叶った海底の街。

 つまり今は普通の魚人族が住んでるはずの島だね。

 この漁港からもその島が海の向こう側に小さく見えている。


「いいですねそれ!実は気になってたんですよ」


 アリスが食いつく。

 マリンは特にリアクションはしてない、どっちでもよさそう。

 カミラはまたまた目を細める。


「カミカミヤなの〜?」

「癪に障る言い方しよってからに。その能天気な頭で考えろ、海に沈み1900年の街だぞ?ろくに歩けるかも分からん」


 カミカミの言い分も分かる。

 ドロドロヌメヌメ、藻だらけっていうのは想像できるね。


「どうして歩けないんですか?もう海から上がったんですよ?」

「うむ?つまる所、お主は何を言いたい?」


 10歳の無邪気な少女の疑問が2000歳の幼女に真っ直ぐに突き刺さる。


「あぁ…… お主そうか、海底を知らないな?」


 カミラが察するように言う。


「海底って、海の中だから歩けないんですよね?あれ?」


 アリスが混乱し始める。


「ほら、博物館に連れてくみたいな気持ちで、海底にずっとあるとこんな感じになるよって見せに行かない?観光としてはかなり面白いと思うよ?」


 現実世界だったら地上にある古の海底都市として名所になってるよ。


「それに海底でも魚人族が住んではいたんだよ?ある程度は掃除とかされてるよ」

「……それもそうか、お主の言う通りだミオ」


 カミラは何が嫌だったのか分からないけど、納得してくれたみたい。

 そんなに潔癖っぽさはないのにね、血とか大好きだし。


「それじゃあ人目つかないとこでよろしくね」

「あっ、は、はい、認識魔法ですね」


 最近、空を飛ぶ時が特殊だったら観られてもいいタイミングが多かったから、一応の確認でマリンに声をかければ、おまけに笑顔も返ってくる。


 私達は市場の入り口から離れて、近くの倉庫と倉庫の間に入る。

 ここなら誰も見てないね。


「おにゃしにゃ〜す」


 レイが言葉の割には90度も頭を下げるからマリンが少し笑って、またしばらくして片手で丸を作る。

 カミラ以外は箒をそれぞれ取り出して、カミラは背中を気にして後ろを見てからコウモリの翼を広げる。


 こうして私達は空へ出る。


 港は動いてないとはいえ、人はいる。

 それでも空に浮かんでる私達を見えてる素振りは一切ない。


 天気雨、潮風に吹かれながら、海の向こう側に佇む黒い島、邪神が住まうと妄想された実在する伝説の島、ルルイエ島へと向かう。

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