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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第5章 アンクイン
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499話 復活


 6月10日(木)はお休みさせて頂きます!

 その代わりではないですが、土日の投稿出来そうです!


「獣人族、よくルシフェルに言えたもんだ」

「いやほら、ごめんね?」


 ルシフェルに呼ばれて一緒に戻って来たヴェスパーに、開口一番で叱られてしまう。

 ルシフェルに勝手な計画変更は許さないって言っておきながら、私が変更しているのは都合がいいのは分かってる。


「クトゥルフが浮上した時のリスクは理解しているか?」

「精神汚染と津波と、後はルールエが占領されるかもってぐらい?」

「前の2つはいいな、俺の魔法式で対抗出来るからな。だが最後は?最後はどうするつもりだ?」


 それはその通り。


 これは最悪の事態になった時の話。

 そしてここで言う最悪の事態っていうのは、セリアが怪物の退散に失敗した時。

 その対応で怪物を倒すっていう選択肢しか用意出来てないのと、それも完璧な案じゃないから私から言えることは何もない。


 グレートセブンも集まってるし、出来なくはなさそうな案だけど、絶対出来るとは言えない。


「返す言葉ないよ」

「だな?確かにセリアは選ばれた魚人族だ。下調べをした上で、セリアに適性があるのは把握している。ルールエを浮上させクトゥルフを再封印する術者として最適なのは間違いない」


 封印の冠士のルシフェルがすぐ横にいるのに、ヴェスパーは配慮を見せずに言い切ってみせる。


「気にしないでいいんだよミオ君、天の才はセリア君に軍配が上がったという話、知識と努力は僕が勝ってるのはー、言うまでもない。それで冠士になったんだからね!」


 分かりにくく同情の目を向けてたつもりだったんだけどそれはあっさり見破られ、それでもルシフェルは全く気にしてない、ふざけた調子が返ってくる。

 ルシフェルの言ってることはその通り、2000年を知識に費やしたことを考慮したら、ルシフェルとか他のグレートセブンに勝る魔術師、魔法使いはいない。


「だから僕は封印の知識と努力を才あるセリア君に託すべく、彼女が立っている魔法陣、それに2000年の叡智を集約させた訳だぁー。陣ではヴェスパー君の知識と努力が詰まっている、いやぁー、こういう時にやっぱり長生きは悪くないとつくづく思うねー、ね?ヴェスパー君?」

「お前が獣人族を媒介とした星辰魔術を考えなければな?それを魔法陣に組み込んだが為に、知識で言えば800年程度しか形にしていない」

「おや、手厳しい」


 ヴェスパーは冷たい表情をルシフェルに見せ、空を見上げる。

 800年っていうのも十分すごいよ?

 この人達の規模感で言えば大したことないのかもしれないけど。


「もうすぐだな。説教はもういい。あの魚人族が支配の魔力を持っていようが、邪神たるクトゥルフを支配し退散させるなど無理な話だ。邪神はお前のように甘くない」


 全く気付いてなかった、今も全然気付いてない、実はセリアに支配されていることに。

 それを皮肉られる。

 いやね、本当にその通りではあるよ。


「だからだ、今から神格の退散をする為の魔法陣を描く。その為の魔力、寄越せ」

「えぇー…」

「お前、ふざけているのか?」

「落ち着くんだヴェスパー君、ミオ君の魔力は質が高い、使いたい気持ちは分かる。だが、ミオ君が言いたいのはこうだ。魔力切れ起こしっぱなしだからやめてほしーにゃん」


 にゃんは言わないね?


 ただルシフェルの言う通り、この夜が始まってから大規模な魔法を何回も使って来た、そろそろ本当に出涸らし。

 体も結構だるくて、出来るだけ動かないようにするぐらい。

 動かしてるのは口と目線だけ。

 勝手に動いてる尻尾も今という今は垂れている。


「ここに高圧縮の魔水があるだろう?これを使いたまえ」

「……はぁ、そうだな。元々は必要なかったからな?」


 またヴェスパーは皮肉たっぷりに、魔水が溜まっている大きなガラス管に手を置きながらルシフェルに言い、笑ってみせる。


「まーまー、溜めておいて正解だったろう?」

「よくも言えたな、お前」


 仲がいいのか悪いのか、ルシフェルとヴェスパーは口喧嘩をしている。


 ひとまず、私の出番はこれで終わりそうだね。

 私は邪魔にならないように、灯台下のベンチまで移動して、重力に引っ張られるがままに座る。


 行き当たりばったりなことが多くて、本当に神格とか星辰魔術とか、そういうのに巻き込まないで欲しいっていうのがつくづく分かったね。

 ブラックビーストに今度からは巻き込まないように釘を刺しておこう。


 私は空を見る。


 夜空には星が輝き、ライトシアンの光が星々を結んで魔法陣を象っている。

 正面には光る魔法陣の上に少女が1人、セリアが空に向かって星辰魔術を唱えている。

 その傍らで青い火を操り、地面に更に魔法陣を描くヴェスパーと、セリアの方に手を置いて、空を指差しながらアドバイスをしているルシフェルがいる。


 これが多くの命がかかった魔術を使っているという訳じゃなければ、とても美しい景色でアリス達も居ればと思ったりする。

 そういえばアリスはどこだろう?

 空にはもういない、マリンがいる所に戻ったのかな?

 レイは街の中を走っていて、カミラは……


 カミラはあの爆発に巻き込まれて死んだ。

 ただ、死んではいない、死ぬことは許されていない。

 そういう世界のルールという曖昧な概念を信じて、心の拠り所にしているけど、本当にカミラは大丈夫なのかな?


 ただ魔力切れの私に今からカミラを探して空を飛び回るとか出来ないし、そもそもカミラは吸血鬼になった土地で蘇るって話で、その土地を私は知らない。

 聞いておけばよかった、アリスとかレイにカミラが死んだことを説明する時、ちょっと大変そうって思ったり。


 ただただ自分の役目を終え、ただただボーッと何かを考えていれば、異変に気付く。

 地面が揺れ、何か音が聞こえてくる。

 揺れは激しくなり、音は微かな物から空気を強く揺らすほどの轟音へと変貌していく。


 気になってルシフェルに声をかける。


「ルシフェル、何が起こってるの?」

「何って、これからルルイエが浮上し、クトゥルフが現れる。それの前兆だよ」


 そっか、結局は怪物は現れるんだね。

 あんまり嬉しいことではないけど、仕方ない。


「ミオお姉ちゃん!」

「ミ、ミオさん… どうされたんですか…?」


 そうこうしてる間に、アリスとマリンがここにやってくる。


「私?私は、魔力切れで休憩してるだけ」

「本当ですか?お怪我はありませんか?」

「大丈夫、戦ってないから」

「もう、びっくりさせないで下さいよ!」


 私が泥のようにベンチに座るものだから、アリスは心配してくれたみたい。


「あ、あの、こ、この揺れと音は…?」

「あれだよ、怪物が復活する音だって」

「え、えぇ!?えっ、ふ、復活するの、ですか…!?」

「心配しないで。すぐに封印出来るから」


 そういうリアクションになるよね。

 私も「えっ、本当に復活するの?」って言いたい所だけど、自分が蒔いた種だから。

 育って枯れるまでは見届けないと。


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