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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第1章 ケモ耳 異世界を知る
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45話 レイを異世界に連れ出す方法


 レイは今、報酬を受け取れない状況にいる。

 理由は簡単で、私が先にこの世界に来たから。

 私が報酬を受け取った瞬間から、現実世界の時間が止まっている。

 だから私は現実世界に戻って、レイが報酬を受け取るまで待たないといけない。


 ただ、ここで問題になるのが、レイがこの世界に来たらまた現実世界の時が止まる。

 レイが次、現実世界に戻ってくるまで私は何も出来ず、私達が同時にログインしない限り、イタチごっこになるはず。


 だけど偽神は言っていた。

 時間軸は並走する。

 私が現実世界にいても、この世界の時間軸を私が所有しているからこの世界は動き続ける。

 逆に言えば、レイがこの世界に来ていても、私が現実世界にいる限りこの世界の時間軸に並走して現実世界の時間軸も動き続ける。


 結論を言えば、レイが1度でも報酬を受け取ればいい!


 私の推理が正しければだけどね。





 考えながら歩いていたから、いつの間にか宿に着いていた。


「ミオさん、お帰りなさい。ご飯を用意しますか?」

「うん、お願いしていい?」

「かしこまりました」


 そういうとマリアがご飯を支度し始める。


「明日は朝ご飯を準備しなくていいよ」

「かしこまりました、お出かけですか?」

「そうだよ」


 そういえば、私が現実世界に戻ってる間、この世界の私はどうなるんだろう。

 消えるのかな?

 ずっと寝てる感じになるのかな?

 ちょっと気になるところだけど、偽神に聞けばいいよね。

 そうするとマリアがご飯を出してくれる。


「どこに行くんですか?」

「そうだね… 秘密かな」

「秘密ですか?誰かに言いふらしたりしませんよ」


 そういう問題じゃないんだよね。


「ダメだよ、これは本当に誰にも言えないから」

「そうなんですか。残念です」


 マリアが笑う。

 ごめんね、説明しようがないんだ。

 私がご飯を食べ始めると、その様子をマリアが見てくる。


「どうしてそんなに見てくるの?」

「なんか、かわいいなって思いまして」


 それはありがとう。

 でもね、人の食事は見るものではないよ。


「普通のお耳ってあるんですか?」

「あるよ」


 私は髪をかきあげる。


「本当ですね」


 マリアが私の耳を触る。


「あの、関係ないですけどその仕草、男性の方にやったらダメですよ」

「何で?」

「簡単に恋されちゃいますよ」


 流石にそんなことないでしょ。


「褒めるのが上手いね」

「本当に恋されちゃっても知りませんからね。私は言っておきましたよ」


 そう言うとマリアが注文を取りに向かった。

 私は夜ご飯を食べ終わると部屋に戻る。

 寝る準備を済ませ、私はベッドに飛び込む。

 おやすみ…




 気づくとそろそろ見慣れてきた廃棄場にいた。

 さっさと偽神の元へ向かう。

 2つぐらい確認しておきたいことがある。


「どうだ、レイを呼ぶ方法は分かったか?」

「分かったと思う。そこで聞きたいんだけど、私が現実世界にいる状態で、レイがこの世界にいる時って両方の世界の時間ってどう動くの?」

「君が考えていることで間違いない。両方の世界の時間は動き続ける」

「それじゃあ、レイさえこの世界に1度でも来れば、一緒に冒険出来る?」

「出来るぞ」


 良かった。

 レイと冒険するのが楽しみ。


「1つ気になったんだけど、私が現実世界に戻っている時、この世界にいる私はどうなるの?」

「お前の体は2つもない。ゆえに消え失せる」

「分かった、ありがとう。それじゃあ、私を現実世界に戻してくれる?」

「承知した。戻りたくなったら、アカウントにログインすればいい。それでは待たな」


 そうして視界が暗転し、意識が暗闇に吸い込まれていく。




 私は意識を取り戻すが、未だに暗闇の中。

 しかし、いつもと違うことがある。

 頭が少し重い。

 この重さは慣れている。

 私はVRゴーグルを外すと、突如として視界が明るくなる。

 視界が明るさに慣れ、周りも見渡すと私の部屋だった。

 ぬいぐるみなど女の子らしい物はあっても、パソコン機材の重圧感を拭い切ることは出来ない部屋だ。

 VRセットも外し、私は一階に下りる。

 リビングにはお母さんと2番目のユミお姉ちゃんがいる。


「おかえり。ご飯も食べず自分の部屋に行って、ゲーム好きすぎない?」


 ユミお姉ちゃんが私に話しかける。


「ただいま、ユミお姉ちゃん!」


 私はユミお姉ちゃんに抱きつく。


「何々、どうしたの?何か学校で嫌なことでもあった?」

「ううん、違うよ」

「じゃあ何?私に甘えたかっただけ?」

「うん、そう」

「そっか、よしよし」


 ユミお姉ちゃんが私の頭を撫でる。


「仲良いのはいいけど、さっさとご飯食べてね。さっさと洗い物したいから」

「だってミオ、ご飯食べるよ」

「うん!」


 私とユミお姉ちゃんは席につく。

 私はご飯を食べる。

 少しだけ懐かしい気がする。


「お母さん、美味しいよ」

「あら、ありがとう」


 お母さんが嬉しそうにする。


「どういう風の吹き回し?」


 ユミお姉ちゃんが聞いてくる。


「美味しいって思っただけだよ」

「そうなの?」

「ユミはどう?お母さんのご飯美味しいと思う?」

「はいはい、美味しいよ」

「ありがとう」

「ご飯〜」


 そう言いながらアミお姉ちゃんがリビングに入ってくる。


「アミお姉ちゃん!」

「どうした?」

「ん!」


 私は両手を広げる。


「おう、そうかそうか」


 そう言うとアミお姉ちゃんが抱きしめてくれる。


「ミオはこうされるの本当に好きだな」

「うん、好き」

「そうかそうか、ミオはかわいいな」


 そうしてアミお姉ちゃんとハグをやめると、アミお姉ちゃんが席に座る。

 そうして姉妹3人がテーブルに座る。

 お姉ちゃん達とご飯を食べる。

 そんな当たり前を、私は強く噛み締めた。



 お父さんはいますよ?

 ただ視界の端に追いやられてるだけなので…

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