42話 お母さん!娘さんをください!
「どうだった?」
「大丈夫でしたよ」
アリスのお母さんと会う前に確認する。
それにしても本当にいいんだ。
1週間も交流してない人に子供を預けるって心配にならないのかな。
私がアリスを監禁するつもりだったらどうするんの。
アリスに案内されて部屋に入る。
前回入った部屋と同じだ。
「お邪魔します」
「いらっしゃいミオちゃん。ゆっくりしていって」
お母さんが私を席に座らせるとジュースを出す。
「本当にアリスを任せちゃってもいいの?」
お母さんが対面に座って話始める。
「むしろいいの?私に任せても」
「ミオちゃんって悪い人ではないでしょう?それでアリスと剣とか魔法を教えてくれるなら、アリスもミオちゃんの家にいた方がいいじゃない?」
「私が良い人だとは限らないよ」
「あら、悪い人は見ず知らずの子を助けたり、そのお礼を貰い渋らないわ」
確かにそうかもしれないけど。
「でも心配にならない?」
「もちろん心配よ」
「なら」
「でも私はミオちゃんのことを信じてるし、何よりアリスがミオちゃんのことを信じてるから」
信じてくれるのは嬉しいけど、本当にいいのかな。
「もしかして、私の大切なアリスを傷つけるつもり?」
「そんなことはないけど」
「ならいいのよ。アリスを立派な冒険者にしてね」
「分かったよ」
この世界の親の子育て論が気になるけど、信じてもらったからには私も頑張ろう。
「それじゃあ私の家にアリスの物を移動することになると思うんだけど私が運ぶから、準備が出来たら言ってください」
「あら、そんなことしなくてもいいのよ。何でも屋さんにお願いするから」
何でも屋なんてあるんだ。
「いや、私は空間魔法が使えるから」
そう言って私は、私は…
どうしよう何を取り出そう。
ナイフは危ないし、お金もダメだろうし、ウルフとフェンリルの素材も衛生面が怖い。
他に何を入れてたっけ。
そう考えるとあんまりアイテムボックスを使ってないね。
あ、個人カードがある。
私は個人カードを取り出す。
「ほら、こんな風に」
「あら、本当にすごい魔法剣士なのね。ならお願いしてもいい?」
「いいよ」
「準備が出来たらアリスに伝えさせるから、その時にお願いね」
「分かった」
アリスのお母さんが席を立つ。
「どうする?お昼ご飯は食べていく?」
ちょうどお腹も空いてきた頃だからお願いする。
「食べていくよ」
「分かったわ、それじゃあアリスと遊んでて」
「それじゃあ私の部屋に行きましょう」
私はアリスに連れられて2階に上がる。
アリスの部屋に入ると、桃の甘い香りがする。
アリスの匂いだ…
大きく深呼吸する。
「なんですか?もしかして、変な臭いしますか?」
「そんなことないよ、アリスのいい匂いがするよ」
「本当ですか?大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
私はアリスに抱きついて髪の匂いを吸い込む。
シャンプーのいい香りがする。
「や、やめてください!恥ずかしいです!」
アリスが私を離そうとしてくる。
仕方ないので私も離れる。
「あんまり嗅がないでください」
アリスが恥ずかしそうに言う。
「いっぱい嗅ぐね」
「な、何でですか!?」
アリスは驚きながら言う。
アリスをからかうとかわいくて楽しいな。
アリスの頭を撫でる。
アリスの部屋はピンク色の家具があるけど、元々家具も少なくて少女の部屋と言うには少し殺風景というか、主張がないというか。
アリスのかわいさに対して少し控えめな部屋だ。
「何するの?」
「何しましょうか」
私達は机を跨いで向かい合うようにカーペットの上に座る。
ファッションの話とかする?
「あ、気になることがあるんだけど、ケモ耳フードがついてるアウターって見たことある?」
「どういうのですか?」
「イメージ的にはポンチョなんだけど」
「ポンチョですか?ポンチョにも色々ありますしフード付きのもありますけど、ミオお姉ちゃんみたいなお耳がついたフードのポンチョは見たことないですね」
ないかぁ。
普通のフードでもいいんだけど、耳が潰れて嫌にならないか心配なんだよね。
「もし欲しい服が決まってるなら、服屋さんにお願いしてみたらどうですか?」
「オーダーメイド出来るの?」
「出来ますよ」
オーダーメイドとか出来るんだ。
それならルナに頼んでみようかな。
「お耳隠しちゃうんですか?」
「そうだね、やっぱり目立つからね」
「その尻尾はどうやって隠すんですか?」
「尻尾?」
そういえば意識の外にある尻尾。
尻尾はどうやって隠そう。
「今は出してるけど、服の中に隠すとかかな」
「でもミオお姉ちゃんの尻尾ってよく動いてるから、服の中に入れても変に服が伸びたりしません?」
え?
「そんなに動いてる?」
「ミオお姉ちゃんが嬉しそうにしてたり、私をからかう時とかにいっぱい揺れてますよ」
「本当?」
「本当です」
感情が筒抜けになるのは本当に恥ずかしい。
どうしてやろうかこの尻尾。
いや、切るのは流石に無理だけど。
「かわいいので隠さなくてもいいと思いますよ」
「かわいいのはいいんだけど、目立つのは嫌だし何を考えてるのか気づかれるのは嫌なんだよね」
「確かに目立ちはしますけど、ミオお姉ちゃんはよく顔に出てるのであんまり関係ないと思いますよ」
顔に出てる?
私は顔を叩く。
「大丈夫ですよ。ミオお姉ちゃんが嬉しそうにしてると私も嬉しいですから」
あぁもう何この子。
大好きだよアリス。
私はアリスの後ろに回って抱きつく。
髪に頭を埋めて大きく深呼吸する。
「あぁ!やめてください!恥ずかしいです!」
私の尻尾は大きく揺れていた。
アリスが大好きすぎる。
かわいい。




