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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第1章 ケモ耳 異世界を知る
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32話 幸せと寂しさに包まれて


 レイナさんにケモ耳をいじられている間、ミオちゃんは人に見せる事が出来ない情けない顔をしていた。



 朦朧とした意識の中、声をかけられる。


「ミオちゃん大丈夫?」


 レイナさんの声だ…


「…わかんない」

「ごめんねミオちゃん、興が乗っちゃって」


 起き上がろうとするが、力が入らない。


「ちょっと休憩してから帰ろうか」

「…うん」


 火照った体を冷ましながら、真っ白になってた思考を正常に戻していく。


「ミオちゃん今日はありがとうね」


 今それ言う…


「…いえ、役に立てたなら何より」

「ミオちゃんは優しくて、とても良い子だね。私よりも小さいのに、1人でこの大陸まで来て、私を助けてくれた」

「助けたつもりじゃ」

「うふふ、そんな事を言ってこれからも沢山の人を助けていくんでしょうね」


 どうだろう。

 レイナさんが私を優しく撫でる。

 幸せな気持ちになってくる。


「明日の朝には帰るんだよね?」

「そうね。寂しくなっちゃった?」

「…そうかもしれない」

「そうだね、素直でかわいいミオちゃんに、ささやかなプレゼント」


 そう言うとレイナさんが光った何かが浮かんでる紐がついた小瓶を目の前に持ってくる。

 ネックレスかな?


「これは何?」

「これは精霊の小瓶って言って、開けると転送の魔法で精霊の森に連れてってくれるの。私だと思っては流石に無理があるだろうけど、私の大切な物だから、大事に持っててね。あと精霊の森は綺麗な場所だから、気が向いたら行ってみて」


 精霊の森。

 いかにも神秘的な名前だ。


「大切な物、貰っていいの?」

「私はもう行った事があるからいいの。ミオちゃんにも行って欲しいんだ」

「分かった、ありがたく貰うね」

「はい、どうぞ」


 レイナさんはそう言って私の首にネックレスを付ける。


「言うの忘れてたけど、この小瓶は割れないから安心してね」


 私は小瓶を少し触ってから、地面に手をついて起き上がる。


「もう大丈夫?」


 レイナさんが顔を覗いてくる。


「大丈夫」

「じゃあ帰ろうか」


 私が立ち上がると、レイナさんも立ち上がる。


「思ったより早く終わったね。広場で何か奢ってあげるよ」

「ありがたくご馳走になるよ」

「えぇ、じゃあ行きましょう」


 私とレイナさんはユスティアに向けて歩き出す。




 南門を抜け、広場に出る。


「何が食べたい?」

「どうしようかな…」


 広場には本当にいろんな屋台がある。

 時間的にもおやつ時なんだけど、今日はまだしっかり食べれてないからお腹がたまる物がいいな。

 そう思いながら探してると、私はホットドックを見つける。


「ホットドックがいいな」

「いいね、私もそれにするわ。そこのベンチに座って待ってて」


 そう言ってレイナさんが屋台に向かって行く。

 私はその姿を見て私のお姉ちゃんを思い出した。

 私は大のお姉ちゃん子だ。

 私には2人のお姉ちゃんがいるけど、2人とも好きで高校生になった今でも2人に甘えている。

 この世界に来て3日目、少し寂しさを覚えていたんだろう。

 そろそろ1回、家に帰ろうかな。

 ただ明日はCランクパーティの見送りをしたいし、いつ帰れるかな。

 そんな事を考えているとレイナさんがホットドックを渡してきた。


「ミオちゃん、どうぞ」

「ありがとう」


 私はホットドックを受け取る。


「ミオちゃんどうかした?」


 顔に出てたかな。


「お姉ちゃんの事を考えてて」

「お姉ちゃんはこの大陸に来てるの?」

「いや、来てないよ」

「それで寂しかったの?」

「少しだけ」

「そっか」


 レイナさんがホットドックを食べ始める。

 私もホットドックを口に運ぶ。


「それでそんなに甘えたがりだったんだね」

「そうかな?」

「だって最初はお耳触らしてくれなかったのに、今日はわざわざお耳を触る事をお礼にしたじゃない?それって寂しくて、誰かとスキンシップがしたかったんでしょ」

「そうなのかな」

「きっとそうよ」


 スキンシップ、そういうのもあるのかな。


「そういえば、どうしてミオちゃんはこの大陸に来たの?」


 どうして。


「楽しそうだからかな」

「今、楽しい?」


 お姉ちゃんに会いたい気持ちがあるけど、こんな不思議な街で魔法使いのお姉さんと肩を並べてご飯を食べてる経験、そうそうない。


「楽しいよ」

「それは良かった」


 そう言ってレイナさんはホットドックを一口食べる。




 ホットドックを食べ終わり、私達は冒険者ギルドへ向かう。


 やっぱり視線が気になるな。

 こういうちょっとしたストレスも、ホームシックにさせたりするのかな。


 冒険者ギルドに到着して、食事スペースに向かう。

 そこにはレスター達がまだいた。


「レイナとミオ、早かったな」

「どうだ、障壁魔法は使えたか?」


 レイナさんが嬉しそうに答える。


「出来たよリア!これで私も魔法が使えるよ!」

「本当か?こんな短時間に出来たのか?」


 レスターが驚いたように言う。


「えぇ!ミオちゃんが魔力の正しい使い方を教えてくれたの!」

「魔法の正しい使い方?」


 レスターが聞き返す。

 正しい使い方なのかは分からないけど。


「魔力の流れ、分かるようになったのか?」

「リア、私がちゃんと魔力を使えてないこと気付いてたでしょ?」


 レイナさんが腰に手を当てて言う。


「レイナって感覚が鈍いところがあるから使えてないと気付いてた」

「何で教えてくれなかったの?」

「教えてやっても悩ませるだけだと考えたのと、私は他人の魔力を動かせる特殊な質の魔力ではないからな」


 私って特殊な質の魔力なのかな?


「おい、魔法の正しい使い方ってなんだ?」


 レスターが話を遮る。


「レスターには魔法の素質がないからな。知ったところで無駄だぞ」

「ひどい言い草だな」

「レスター、次があるよ!」

「変な慰め方するな」

「レスターは加護があるからいいじゃないですか」

「そうだぞ、文句を言うな」

「分かった分かった」


 Cランクパーティは仲がいいね。


「ミオ、私には出来なかったことをやってくれた。本当にありがとう」


 リアが言う。


「気にしないで」

「それで帰ってきてすぐで悪いんだが、今から私の家に来てくれないか?」

「リアの家?」

「あぁ、アリスに説明しないとならないからな」


 そういえばそうだね。


「そういえばアリスは?」

「もう帰らせた」

「じゃあ今から?」

「ミオが大丈夫なら」

「大丈夫だよ」

「なら行こう」


 そう言ってリアが席を立った。



 ミオちゃん、やる事はまだあるよ!

 ファイト!

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