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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第1章 ケモ耳 異世界を知る
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24話 風の大狼 フェンリル


 戦闘難しい。


「行くぞ」


 レスターの号令と共にリアとレイナさんが光った方へ走り出す。


「あ、待って!」


 私は急いで後を追いかける。

 森の中を走っていると、少しずつ風が強くなっているのが分かる。

 一際、風が強くなった瞬間、レスターがさっきよりも速く走り出す。


「はあああああ!」


 レスターが剣を抜き、剣が朱色に光り出す。

 かっこいい!

 それっぽい!

 レスターが走って行ってるその先、1匹のウルフがいた。


 ウルフは私達よりも遥かに大きい。

 立ち上がっていないにもかかわらず、高さは2mよりも大きく、緑色の模様が体中に浮き出ている。

 それが持つ目は鋭く、レスターを見据えているようだ。


 レスターが振り下ろす剣を軽々しく躱す。

 しかし目にも止まらぬ速さでレスターは剣を斬り返す。

 それも後ろに跳んでウルフは躱す。


「豪然たる腕よ!」


 レイナさんが杖をウルフに向けそう叫ぶと、地面からウルフと同じ大きさの手を持った土の腕が現れ、跳んだウルフを叩き落そうとする。

 しかしウルフが腕に咆哮をすると、萌葱色の円形の風が複数放たれ、腕の勢いがなくなり、よろめき、やがて腕は粉々に粉砕された。

 ウルフは何事もなかったかのように地面に着地する。


 あれが風の大狼。

 私は頭の中で「スキル 鑑定」と思い浮かべる。


 鑑定結果

「風の大狼 フェンリル」

 種族 ウルフ

 森のウルフの長。風を操り、周囲を斬り裂く。


 フェンリルではあるのか。

 ゲーム内では火が弱点ではあったけど、森の中で火魔法を使うことは出来ない。

 私は簡易の障壁魔法で前方に壁を作る。


「やっぱりダメだよね。聡慧なる腕よ!」


 レイナさんがぼやくと、すぐに詠唱をする。

 先ほどよりも小さい腕が土から複数現れ、フェンリルの足を掴もうとする。

 フェンリルは1回転すると同時に尻尾を横に振る。

 尻尾から萌葱色の色の疾風が放たれ、木々と共に腕を斬り倒していく。


「まだまだ!」


 どんどん地面から手が現れる。

 もう1度、フェンリルが尻尾を振り疾風で斬り倒す。

 しかし気づいた時にはレスターがフェンリルの横に移動しており、剣を大きく振り下ろしていた。

 フェンリルが寸前で横に跳んで躱す。

 その瞬間レスターが走り出し、フェンリルと距離を詰める。

 その間、レスターの剣がさらに赤く光り、剣が炎を纏う。

 炎はどんどん大きくなり、やがて剣を覆い尽くし、それは大剣のように形取られる。


 フェンリルはレスターに向けて咆哮をし、複数の円形の風がレスターに放たれる。

 レスターが剣を斬り下ろすと、炎が放たれ風を相殺する。

 そしてレスターはさらに加速し、三段跳びをすると大きく剣を斬り上げる。


 剣がフェンリルを斬ろうとした瞬間、フェンリルが空へ咆哮する。

 すると周囲に暴風が発生する。

 レスターが飛ばされながらも体勢を整えフェンリルと距離を取る。

 暴風は木々をなぎ倒し、私の障壁にヒビを入れる。


 フェンリルが咆哮を止めると暴風も止む。

 咆哮を止めてすぐに真上に高くフェンリルが跳んだと思えば、地面が大きく抉れる。

 ただ抉ったのはフェンリルではない。

 それは恐ろしい速度で後方から跳んで来ていた。

 今のはカインが放った矢?

 光ってたけど…


「よし、豪然たる腕よ!」


 杖の宝石が突如として光りだし、レイナさんは杖を振って詠唱すると、地面からフェンリルよりも大きな腕が現れフェンリルへ向かう。

 それに合わせてレスターが腕を駆け上がる。


 フェンリルは腕に咆哮をして風を放つ。

 腕の勢いはなくなるが、今度は崩れることなくそこに存在する。

 レスターは上空10mほどにいるフェンリルに向かって飛びかかると大きく剣を斬り下ろす。

 その剣は首から胸付近まで大きく斬り込みを入れる。


 フェンリルは慌てて空中でバランスを崩す。

 ただレスターがこのままだと…

 そう思った時には土の腕がレスターを捕まえている。


 そしてフェンリルが地面に叩きつけられると、翡翠色の光の矢が後方から飛んで来ており、フェンリルの体を貫く。

 やがて光が消え、フェンリルに大きな穴が開く。


 そうしてフェンリルは動かなくなった。


「倒した?」


 私が声を出す。


「いや、まだだな」


 リアが答える。

 フェンリルの方を向き直すと、フェンリルの緑色の模様が光っている。

 やがて光が強くなり、フェンリルの周りが緑色の光に包まれる。


 光が収まると、そこにはフェンリルが立っていた。

 先ほど受けた傷は見受けられず、今までよりも強い風がフェンリルから発せられている。

 ただ緑色の模様はなくなっている。


 あの模様、もしかして蘇生出来る物かな?


 フェンリルはもう1度、空に向かって咆哮する。

 すると先ほどよりも強い暴風が吹き荒れる。

 私の障壁は完全に割れ、立っているのがやっとだ。


 しかも強くなって蘇生するの?


 咆哮を止めたと思えばバク転をして空中へ尻尾を振る。

 尻尾から放たれた疾風は、飛来してきていた光の矢を撃ち落とした。

 すぐにフェンリルは走りだし、土の腕の根本に噛み付き、腕を引きちぎった。

 バランスを取れなくなったレスターが腕から落ちる。

 腕を吐き出したフェンリルはレスターに向かって尻尾を大きく振り、疾風がレスターに向かって飛んでいく。

 先ほどよりも大きく速い疾風がレスターを確実に仕留めに来ている。

 レスターの回避行動は空中にいるため出来ない。


 私はすぐさまレスターと疾風の間に薄い壁が出来るようにイメージをする。

 柱なんていらない、ただそこにあればいいだけの壁を。


 私は魔力をため、レスターと疾風の間に放つ。

 一瞬、レスターの正面の空間が歪んだかと思えば、すぐさま見えない壁と疾風が衝突する。

 壁は粉々に砕け散るが、それと共に疾風は霧散した。



 始まりの街の近くに居ていい強さではない。

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