22話 障壁魔法を覚えよう
ミオちゃんが魔法もといおもちゃを手に入れる回です。
私は部屋に戻り、明日の準備をする。
ひとまず、風の大狼を私が倒すわけではないから攻撃魔法は必要ないとして、風と名前に付くぐらいだから風魔法を相手は使ってくる。
そうなると防御魔法や回避魔法は必要だよね。
流石にそれなしでボス戦は気が引ける。
それで今回覚えたいのが障壁魔法。
魔力で壁を作り上げて、攻撃を防いだり受け流したりする魔法。
ゲームでは障壁にHPが設けられており、HPがなくなれば消える。
しかし、どれだけ強い一撃を受けようと必ず相殺することが出来る強力な魔法だから、かなり重宝されていた魔法の1つだ。
魔力を大量に消費して高いHPを持った強固な障壁を作って戦う人もいれば、魔力を最小限に消費してHPが低い代わりに大量の壁を作る人もいた。
ただこの魔法、1つデメリットがある。
ゲームの中では強力な壁を作るには強い意識を持って作ろうとしないと壁が発生しなかったり、大量の壁を作るにしても1つ1つを作る意識を持たなければならない。
だからこの魔法を使うと集中力が大量に使われ、他への注意が散漫したり疎かになったりする。
複数の敵を相手したり、展開の早い戦闘の場合な不向きな魔法だ。
ただ今回はさっきも言った通り私が戦うわけではないから、体育座りでもしながら見学するためには持ってこいの魔法だ。
ひとまず、私は魔力を使ってこの部屋を仕切る頑丈な壁を作ろう。
柱は鉄骨で、壁はコンクリートで、柱は接触している壁や床、天井にも突き刺さり、完全に壁そのものとして機能する様にイメージをする。
魔力を手に集中させ、イメージした通りになるように魔力を放出させる。
一瞬、壁を作った部分の視界が歪んで、すぐに正常な状態に戻る。
私はその壁を触ろうと手を伸ばす。
そこには確かに見えない壁がある。
かなり丈夫に作ったから多分大丈夫なはずだよね。
私はナイフを取り出し、ウルフの頭を吹き飛ばした時と同じように強い突風を放つ。
突風は放たれるが、壁に衝突すると霧散していき、壁はピシッと音を立てた。
壁にはヒビが入り空間が歪む。
まだ耐えれるかな?
私はもう一度、強い突風を放つ。
壁に衝突した突風は霧散し、今度は壁がガラスが割れるように大きな音を鳴らしながら完全に壊れた。
これは成功かな?
今度は紙1枚で壁を仕切るイメージをする。
それは触れただけで壁としての役割をなくすような、虚弱で柱なんて存在しない壁。
そうイメージをして、さっきと同じように魔力を手から放出させる。
さっきと同じように視界が歪み、すぐに元通りになる。
私はその壁に優しく触れるように手を伸ばす。
確かに見えない壁はある。
小さい力で押すと壁は湾曲し始め、今すぐにでも壊れそうだ。
私はさらに力を込める。
そうすると壁が割れ、大きな音がなる。
後はこの弱い壁が強い一撃でも魔法を相殺出来れば完璧。
私はもう一度、弱い壁を作る。
それに触り少し押すと壁は湾曲する。
よし。
私は壁に向かって強い突風を放つ。
壁に衝突した突風は今回も霧散し、そして壁も崩壊する。
完璧、しっかり障壁魔法を使える。
私は色々と障壁魔法を試し終えると、夕食をお願いしにマリアの元へ向かう。
1階に降りると、マリアが物凄く私のことを見てくる。
「あ、あの、大きな音がしてたんですけど大丈夫ですか?もしかして、お耳を触ったこと、怒ってます?」
「え、怒ってないけど」
「ならいいんですけど、何をしてたんですか?お部屋のガラスを割ってたわけではないですよね?」
「違うよ」
そっか、あれだけ大きい音、流石に聞こえるよね。
私はマリアにケモ耳を触られて、実はそれに怒って部屋のガラスを割るヒステリック女だと思われたのか。
獣人族であることをコンプレックスを持ってるように映ってもおかしくない愚痴をしたし、そう思われてた可能性が高い。
「魔法の実験をしてて、こういうのなんだけど」
私はカウンターの上に仕切りを作るように弱い壁を作る。
一瞬視界が歪む。
そして壁に触って見せる。
「何ですか今の?何かあるんですか?」
マリアが私の手を触ろうとすると、その寸前で手が止まる。
「何ですかこれ。これなんですか?見えない壁があります」
「力入れると壊れるからね」
そういうとマリアはすぐに手を離す。
「本当に何なんですか?」
「魔力で作った壁だよ。障壁魔法って言うんだけど、知らない?」
「聞いたことないですね。ミオさんは魔法を使えるんですね」
「使えるよ。この壁を思いっきり押してみて」
「大丈夫なんですか?」
「危険はないよ」
そう言うとマリアは恐る恐る壁を触る。
そうすると力を入れたようですぐに壁が壊れ、ガラスが割れた音を立つ。
「わっ!」
マリアが驚いてる。
かわいい。
これアリスにもやって貰おう。
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ、破片とか出ないから」
マリアがカウンターの上を恐る恐る触れる。
「…破片はないですね。もう、びっくりしました」
「こういうことだから、別にガラスを割ってたわけじゃないし、怒ってないよ」
「そ、そうなんですね。それは良かったです」
そうして私はマリアにご飯をお願いし、お風呂の準備をする。
カウンターに座ってると夜ご飯が出される。
マリアと話しながらご飯を食べる終えると、部屋に戻ってお風呂に入り、寝る準備をして明日は朝早いからすぐベッドにダイブするのでした…
ミオちゃん、そういった実験はお外でやろうね。
マリアちゃん内心ビクビクだったよ。
部屋に行って謝ろうかすごく迷ってたよ。




