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お越しいただき、本当にありがとうございます。
これで今年の更新は最後となります。
この一年、初心者を卒業する事は叶いませんでしたが(何時まで経っても入力・変換ミスさえ減らないと言う、情けない作者から脱却できそうな気配がありません! とほほ……本当に申し訳ないです><)、それでも皆様のおかげでここまで続けてこられました。
本当に、本当にありがとうございます。
評価やブックマーク、感想、いいね、誤字報告にメッセージ、どれも皆様が貴重なお時間を割いて届けてくださったもので、全てが嬉しさと共に感謝しかない一年でした。
来年も更新頑張っていきますので、良ければ引き続き応援して頂ければ幸いです。(未完のもどうにかしないとww)
寒い日が続きますが、皆様にはどうぞ御自愛ください。
最後に…
―――良いお年を!
ゆっくりと意識が浮上する。
少しずつ広がる視界にぼやけて浮かぶのは、見覚えのある天蓋。
どうやら自分はいつの間にかベッドで眠っていたらしい。
「ッ!……」
そろそろ朝だろうかと、頭も何もかもが曖昧なまま起き上がろうとしたところで、手足に激痛が走った。
頭も痛むので思わず手を添えようとしてしまうが、それも痛みによって出来ない。
「な、にが……」
フラネアは痛みのせいで身体を動かす事を一旦諦め、力を抜いてベッドに沈み込む。
首は動かせるので激痛が走らないように慎重に首を巡らせれば、ベッド脇の小さなテーブルの上に置かれた水差しと薬袋が見えた。
フラネアはそれをぼんやりと見つめる。
見つめているうちに、少しずつ靄が減少し、浮かび上がる様に記憶が蘇った。
「………ぁ……」
記憶だけじゃなく感情も蘇る。
―――目障り、邪魔、嫌い、大嫌い、悔しい……怖い…怖い怖い怖イコワイコワイ…コワイ!!
淡く真珠光沢に輝く銀髪、そして宝石のように煌めく紫眼が、フラネアの瞼の裏にこびり付いて離れない。
焦がれてやまないクリストファと少しでも接点を持ちたくて、彼と親戚であるマークリスの幼馴染と言う立場を利用して、どれだけ邪険にされても突撃しては纏わりつこうとした。
ねぇ、私を見て…
ねぇ、私に笑いかけて…
ねぇ、私のモノになって………
父親同士の繋がりで、幼い頃からボーデリー家には頻繁に出入りしていた。その際自分の父親であるズモンタ伯爵から言い含められていた事がある。
『侯爵家の子供…できれば嫡男と仲良くなれ』と…。
本当に幼い頃で、その言葉の意味も分かってはいなかったけれど、父親の鬼気迫る様子に少し吃驚した記憶がある。
普段からフラネアには『可愛い』『我が家のお姫様』等と言って甘々な両親だったので、そんな親の願いならと、まだ会った事もない侯爵家の御令息に、浮き立つような思いを馳せていた。
結果から言えば、侯爵家の夫人と令嬢には何故か冷ややかな対応しかしてもらえず、嫡男とは会わせてもらう事さえできなかった。何とか見かけた子供がマークリスで……帰ってから父親にがっかりされるのが嫌で、やっと近づくことが出来たマークリスに仲良くしてもらおうと付き纏い始めた。
最初は嫌そうにしていたマークリスだったが、そのうち諦めたのかどうなのか…その辺りは聞いた事もないのでわからない。
先触れもなしに邸に突撃して、侯爵家の使用人達が無言で困ったようにしていても、気にかけることなく居座り続ければ、そのうち彼のいる場所へ案内してくれる。
そうしてフラネアが纏わりついても、マークリスは淡々とした表情で…だけど少しずつ話をしてくれるようになった。
フラネアには父親が浮気で産ませた妹が一人おり、その事を少し悲しそうに装って言うだけで、ちょっぴり同情もしてくれたようだった。
それに気を良くして、フラネアは更にマークリスにベッタリになって行くが、そんなある日、いつものように突撃訪問したマークリスの所に、同じ人間とは思えない程、綺麗な男の子が居たのだ。
輝く様な深い色味でさらさらの金髪に、琥珀の様な黄金色の瞳。肌も職人が丹精込めて作り上げた人形のように、白く滑らな天使。
心臓がドキドキして、顔が熱くなるなんて初めての経験で、フラネアはそれだけで、訳も分からない程舞い上がった。
マークリスに頼み込んで無理やり紹介してもらい、名前を知ったその時から、どんなに止められても名前で呼ぶ事を止めなかった。
―――私のよ、私のモノなの…私のクリストファ様………誰にも渡さない…。
どんなに名を呼んでも応えてくれず、どんなに近づいて触れようとしても、するりと躱され……とてもきつい視線しか向けられる事はなかった。
マークリスにも彼が嫌がってるからと止められたし、侯爵夫人からも注意を受けたが、そんな…いつだって自分が一番で、何より自分を特別だと思い込んでいるフラネアにとって、都合の悪い苦言等耳に届くはずもない。
―――だって、お父様は私をお姫様って言ってくれる。
―――だって、お母様は私を世界で一番可愛いと言ってくれる。
―――だって、だって、だって………。
―――私は『お姫様』なんだから『特別』なの。最初は嫌がってたマークリスだって、今は私の方を向いてくれてる。だからきっとクリストファ様だって私の魅力に何時か気づくはず!
それなのに…それなのにッ!!
………あの女!!!
マークリスの元を訪れる時は大抵勉強していたクリストファの視界に入りたくて、フラネアも仕方なしにではあったが本を開いていた。その中で歴史の勉強は嫌いじゃなかった。ただ覚えるだけの勉強、暗記するだけのモノは性に合ったようだ。
そこに何故そうなったか等、考える部分が出てきたりすると、途端に集中する気がなくなり放り投げたが、覚えた事を答えるだけで褒められる歴史系のモノは好きだった。
だけど、そんな時、クリストファもマークリスも学院に行くと言う話を聞きつけた。
だったらフラネアもと、父親に強請って見れば、普段甘々ですぐ了承してくれると思った父親が少し考え込み、在学中に何とかしてマークリスをモノにしろと言ってきた。フラネア自身の気持ちはクリストファに向いているが、父親の機嫌を損ねれば学院の話の立ち消えになるかもしれない程度の事はわかる。だから黙って頷き、無事学院への入学試験を受けられることになった。
だがここで運がフラネアの味方をしてしまった。
出題に歴史系他、暗記系の問題が多く、普段の実力以上に順調に解いていく事が出来たおかげで、成績上位者に名を連ねることが出来たのだ。
フラネア自身としては同じ学院に通えるだけでも…と思っていたのだが、こうして肩を並べることが出来た以上、クリストファも絶対に自分を見直してくれると思っていた。
それなのに………。
クリストファは見てくれないどころか、他の女に笑いかけたのだ。
許せない…許さない……絶対に認めタリするモノカッ!!!
一刻も早く身体を回復させて学院に行き、あの女をどうにかしなければならない。
入学式典で同じく上位成績者の中に、公爵家の令嬢を見た時、微かな焦りを覚えた。艶やかな深青の髪に同じ深青の瞳の公爵令嬢は、フラネアにそんな気持ちを抱かせる程に愛らしく美しかった。しかもクリストファに続く成績。
だけど追い詰められる程の焦燥とまではいかず、まだ自分を保っていられた。
しかし教室に入り、トップ成績者の席に座る小娘に、何故か酷く狼狽えて突っかかってしまった。そして差し込む日差しが柔らかくなり、小娘の姿をはっきりと視認できるようになった時、今まで感じたことのない感情に支配された。
淡く光を放つ見事な銀髪も、煌めく宝石の様な紫眼も、精巧な人形どころか、神の御業といえる美しさで、精霊の愛し子と言われるのも納得してしまった。
全力で否定したいのに、納得してしまったのだ。
「あの姉妹……絶対に許さないんだから……」
ベッドに横たわったまま憮然と呟いたその時、ノックの音の後に部屋の扉が開いて使用人が入ってきた。
フラネアが目覚めている事に気付いた使用人は、慌てて取って返し、両親である伯爵夫妻を呼びに行ったのだろう。
だが暫くして入ってきた両親は揃って顔色が悪い。
「お父様、お母様……」
「フラネア、あぁ、目が覚めて良かったわ」
母親である夫人の方は、目覚めたフラネアが横になっているベッド脇に駆け寄ってきたが、父親である伯爵本人は扉の所で顔色を悪くしたまま、両手を拳に握って立ち尽くしていた。
「お父様……?」
「……あなた」
父親の様子に不安を感じる。母も心配そうに父の方を見ているせいか、何故か不安を煽られる。
流れた時間はそんなに経っていないだろうが、とても長く立ち尽くしていたように感じる父親が、握っていた拳をゆっくりと解き、肩を落とした。
「フラネア……お前は身体が癒え次第この家から……」
続く言葉を言えないでいる父に母が激高した。
「あなた!! 私は認めてませんわ!! そんな酷い話があってたまるものですか!」
見た事のない両親の姿に、フラネアはベッドに横になったまま固まっていると、それに気づいた夫人が慌てて表情を取り繕う。
「大丈夫…大丈夫よ、貴方は何も気にしなくて良いの」
「お前……聞き分けてくれ…流石に…」
「だけど、あなた……可愛いフラネアを……酷すぎますッ」
フラネアは乾いた唇をギュッと引き結んだ。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。
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誤字報告も感謝しかありません。
よろしければ短編版等も……もう誤字脱字が酷くて、本当に申し訳ございません。報告本当にありがとうございます。それ以外にも見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>




