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【完結済】悪役令嬢の妹様【連載版】  作者:
3章 フラグはへし折るもの、いえ、粉砕するもの

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 今よりずっと幼かった頃に、鏡を見ようと忍び込んだアーネストの部屋の隣が、セシリアの部屋だ。


 しかし何故だろう、セシリアの部屋に近づくにつれて、また精霊達が慌ただしく飛び交いだした。

 伝わってくる気配も嫌がっているような、焦っているような、何とも形容しがたいもので、エリューシアは知らず眉間の皺を深くした。そうしているといつも一番近くにいる桜色の光球が、セシリアの部屋へ向かうのを阻むように、目の前でじっと留まる。


 精霊がこんな行動をするという事は、何かあるに違いない。止めようとする光球を躱し、足を速めたのだが、覚えのある不快感に立ち止まってしまった。


(何……この感覚、って、そう、シモーヌを見た時に感じたモノだわ)


 思い至れば嫌な予感しかせず、止まった足は無意識に前に出て速足のようになる。

 辿り着いた部屋の扉越し、やはりあの不快な何かが廊下にまで漏れ出ていた。小さな手でノックをすれば、部屋には人の気配があるのに返事がない。

 恐らくセシリアは入ってきてほしくないから返事をしないのだろうと思うが、こんな気配を見過ごせるわけがない。

 返事を待たずに扉を開ければ、セシリアの部屋のソファに、傷だらけのサネーラがぐったりと横たわっていた。近くに立っていたドリスもあちこちに擦り傷が見えて痛々しい。


「エルル!?」


 慌てたような、咎めるようなセシリアの声は耳に届いているが、目を見開いたままのエリューシアの足はのろのろと、止まることなくサネーラの傍へと近づく事を選択していた。


 ぐったりと横たわるサネーラには、擦り傷に切り傷が顔にまで及んでおり、それだけでなく、どす黒い靄のようなモノが纏わりついている。


「これは……何が………いった、い…何が……」


 公爵家の『裏』なのだからと、謎の安心感を持っていた。いや、実際優秀なのだと思う。今日の襲撃だって彼女たちは、賊の相手をしながらも怪我を負うどころか、返り血の一滴さえ浴びていなかった。


 しかし、それ以上にエリューシアはシモーヌ側を侮っていたという事だろう。

 実際今もって正体は不明、シモーヌの手の内などわかりようもない。だからこそもっと警戒すべきだった。

 こんな事になるとは思わなかっただなんて、言い訳だ。自分が頼んだ結果なのだから、目を逸らす事は出来ない。


 傷だらけのドリスは伏せがちの目を、窺うようにセシリアに向ける。セシリアはその視線に、険しい表情ではあったがしっかりと頷いた。


「見られたからには仕方ないわ……さっきの話、もう一度して貰えるかしら?」


 セシリアの言葉に、視線を床に戻したドリスが力なく『はい』と答えた。


「エリューシアお嬢様の言われた場所に向かったのですが、近辺には確認できず、サネーラと二手に分かれて捜索範囲を広げた所、おっしゃっていた2名に髪色他似た様相の不審者を発見しました。

 サネーラに発見の合図を送った後、追跡を開始しました。彼らは細い裏通りを抜け、そのまま郊外に向かうかと思ったのですが、まずいことに地下へ逃げ込もうとしたのです。

 今回は襲撃に備える武装を主体にしていた為、距離を取っての追跡に対応できる装備他の準備がなく、そのまま逃がすよりはと、確保に転じました。

 ………完全に私の判断ミスです。

 私の意図を汲んだサネーラが陽動に飛び出し、その隙をついて私が確保しようとしたのですが、少女の方が手に持っていた何かを振った途端、黒い何かが伸びてきて……」


 傷だらけで浅い呼吸を繰り返し、ぐったりとしたままの自分の姪を苦しげに見てから、ドリスはギュッと目を瞑った。


 目の前の光景に、エリューシアは思わず自分の顔を両手で押さえ込んだ。


「違う……私が…私が侮ったから」


 ガンガンと酷い耳鳴りと頭痛がする……ふっと遠退きそうになる意識を、首を振って必死に留める。


(ダメよ、真珠深…いえ、エリューシア!

 自分のやってしまった事から目を逸らしちゃダメ!


 あぁ、だけど、どうすれば良い? 何をすれば良い?)


「促進魔法も使ってみたのだけど……」


 セシリアの声に苦いものが混じる。


 促進魔法というのは水属性にある魔法の一つだ。本人の回復力を活性化しそれを促す魔法で、病気にも怪我にも有効ではあるが、患者本人次第なところがある。

 そして当然だが蘇生や再生は不可能だ。


 この世界の魔法は属性魔法、光魔法に闇魔法、他にも時空間魔法等がある。

 魔法自体、使える者は殆どが貴族で、平民以下となると属性魔法の内、生活魔法と呼ばれる本当にささやかなものだけだ。だが生活魔法だけでも使える者はそう多くはない。まぁ、少なくもないが…。


 属性魔法には火水氷風土雷の6属性があり、魔法を使える者は殆どがこの属性魔法である。過去には氷の属性は水に含まれていた時代もあったようだが、現在はこの6属性に落ち着いている。

 時空間魔法がある意味無属性魔法とも言えるが、こちらはかなり希少だ。

 光魔法は治癒、蘇生、再生など、闇魔法は魅了や錯覚などで、どちらも使える者が、圧倒的に少ない……というか、ほぼ居ないと言って過言ではない。


 では促進魔法を使ったセシリアはというと、持っている属性は水と氷。アイシアも同じくである。

 アーネストは火と風で、エリューシアは実は全属性が使える。ついでに言うなら光も闇も何でもござれだ。とはいえ転生モノお約束の、ステータス画面呼び出しなどが行える訳ではないので、自身の能力をそこまで把握しきれていない。

 それ故彼女自身は、全属性使える事は把握しているが、言い換えれば属性魔法しか使えないと思い込んでいる。

 この思い込みがなければ、精霊達もこの部屋へ来るのを阻止しようとはしなかっただろう。


 ちなみに精霊防御と精霊カウンターは魔法ではなく加護なので、発動は不随意だし、エリューシアの魔力を使ったりすることもない。

 使い勝手が良いのか悪いのか、本気でわからないが、限りなくエコではある。





ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

リアル時間合間の不定期且つ、まったり投稿になりますが、何卒宜しくお願いいたします。


そしてブックマーク、評価、感想等々、本当にありがとうございます!

とてもとても嬉しいです。

もし宜しければブックマーク、評価、いいねや感想等、頂けましたら幸いです。とっても励みになります!

誤字報告も感謝しかありません。


よろしければ短編版等も……もう誤字脱字が酷くて、本当に申し訳ございません。報告本当にありがとうございます。それ以外にも見つければちまちま修正加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>


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