165 挑戦者、現る
その後、戸塚さんがオタケ君とツーショットショメシャをゲットして、ゲーセンの非常階段の踊り場に一人でしゃがんで「ふへへっへへ……」と不気味に笑っているのを目撃したけれど見なかったことにして、僕もギャルたちとショメシャを撮影した。
……めっちゃ顔に落書きされた。
これ、もはや僕が写っているとは言えなくない?
「よし、ポーズ! 対戦しよ、対戦!」
三浦さんが高名瀬さんの腕を引っ張って、対戦ゲームの方へと向かう。
あ~ぁ……数秒後に泣きべそかいてると思うなぁ。
「ポーズそっち座って」
言って、さっさと席に座りお金を投入する三浦さん。
あ~ぁ、その百円、本領を発揮する前に溶けてなくなるよ?
「仕方ないですね。少し遊んであげましょうか……」
魔王らしく不敵な笑みを浮かべ、高名瀬さんが十指をそれぞれ別々に動かす。
だからそれ、人間の領域軽く飛び越えてるからね?
強者の余裕なのか、高名瀬さんはゆっくりと財布に手をかける。
そんな余裕の隙をついて、闖入者が現れた。
「邪魔だ、退け!」
「え、きゃっ」
高名瀬さんの前に割り込んで、どこかの男子高校生が三浦さんの向かい側、対戦シートに座った。
……今、突き飛ばしたか?
「あのっ、触れられていませんので大丈夫です。ちょっと近くて驚いてしまって、飛び退いただけですので」
「本当? 酷いことされてない?」
「はい。まったく」
そっか。
ならよかった。
……命拾いしたね、ボーイ。
「まぁただ……わたしからゲームを奪った罪は重いですけれど」
あ、命拾い出来てないかも。
魔王の逆鱗に触れるとか、なかなか肝が据わってるね、ボーイ。
「ねぁ、姉ちゃん」
割り込みボーイが、向かいの三浦さんにデカい声で話しかける。
「俺が勝ったらデートしねぇ?」
なにそのナンパ?
成功率低そう。
「は? お断り」
ね?
数秒で玉砕。
「イキがんなよ、ザコいクセに」
「あ゛?」
割り込みボーイの挑発に、三浦さんの声が低くなる。
「プレイ見てりゃ分かるぜ。お前、クソザコ」
「おもしろいじゃん。入ってこいよ、ぶちのめしてやるから」
「じゃ、俺が勝ったらデートな?」
「上等」
なるほど。
煽れば乗ってきそうな美少女を狙ってるわけか。
三浦さん……チョロいよ。
でまぁ、対戦が始まったんだけど、意外なことに、割り込みボーイは強かった。
なんか適当に生きてそうに見えたけど、ゲームに関しては真面目に取り組んでいるっぽい。
素人目にもはっきり分かった。
これは三浦さん、勝てない。
『YOU LOSE』
三浦さんの画面に、大きく負けと表示される。
「っしゃあ! 美少女ゲットだぜ!」
「……っ! もう一回! 今のはちょっと油断しただけだし!」
「へへっ、いいぜ。そん代わり、この次も俺が勝ったら、キスな?」
「はぁっ!?」
うっわ、サブっ!
鳥肌立った!
キモいよ、割り込みボーイ!
見て、三浦さんはじめ、全ギャルが二の腕さすってる。
で、なんで「決まったぜ」みたいな顔してんの!?
え、神経壊死してんの?
「それはさすがに……」
「その条件でいいですよ」
断ろうとした三浦さんに代わって、高名瀬さんが割り込みボーイに返答する。
「ちょっ、ポーズ!?」
「その代わり、相手はわたしが引き受けます」
「は? 勝手に決めんなよ。つーか、誰だよこの地味女?」
あ゛?
塵にすんぞ、こら?
「もちろん、そちらにハンデを差し上げます」
と、高名瀬さんは、たった今両替してきたらしい百円玉を二十枚割り込みボーイの目の前に積み上げる。
「この百円玉がすべてなくなるまでの間に、一度でもわたしに勝てれば、ここにいる全員があなたの言うことを聞きましょう」
「「「はぁっ!?」」」
「はっ、おもしれぇじゃねぇか。二言はねぇな?」
「もちろんです」
「いや、ポーズ……それは」
「大丈夫です。わたしは負けません」
高名瀬さんから発せられるオーラでも視認したのか、それ以上意見を言うギャルはいなかった。
「お前も、よく見たら可愛いじゃねぇかよ」
「それはどうも」
割り込みボーイの視線が、高名瀬さんの顔から下へと向かい……鼻の下を伸ばしやがった。
よし、滅ぼす。
「鎧戸君。ステイ」
「わん」
高名瀬さんに言われては逆らえない。
「……任せてください。あぁぃう手合いは、二度とスティックを握れなくなるくらいバッキバキに自尊心をへし折ってやるのが一番なのです」
すれ違いざま囁かれた言葉に、僕の背筋はぞくりとした。
冷たい声も、可愛いな、高名瀬さん。
ホント……夢中になっちゃいそう。
それからの二十分間は、ひたすらに蹂躙が繰り返された。
高名瀬さんに苦手なゲームって、ないのかな?




