164 ショメシャ☆
衆人環視の中、物凄く緊張しながら、僕と高名瀬さんは初めてのショメシャを撮影した。
うん、そう。
僕も初めてなんだ。
姉に「一緒に撮ろう」って言われ続けていたけれど、全力で拒否し続けていたから。
最初が家族って、すごく寂しい気がして……
「つーか、二人とも表情カッチコチじゃね?」
「見合い写真かよ」
「いや、見合い写真に二人写ってんのおかしいっしょ?」
確かに、見合い相手から別の人と写ってる見合い写真が送られてきたら、「じゃあ、そいつと結婚しろよ」って思うよね。
「わたしは、割とよく撮れていると思いますが……」
「うん。高名瀬さん、可愛く撮れてるよね」
「わたしは、鎧戸君の写りの話をしているんです」
「褒め合うな、バカップル!」
「そのような事実は存在しません!」
「もう認めろ!」
「じゃなきゃ、今告白して今から付き合え!」
「学生がそんな浮ついたことでどうするんですか!? 学業に支障が出ます!」
「多少支障が出ても、首席だろう、どーせお前!」
あぁ、うんそうかもね。
高名瀬さんは、多少ハンデがあっても誰にも負けないだろうし。
「鎧戸君。彼女たちは俗世に塗れ過ぎています。あのような世迷いごとを真に受けませんように」
今、こんなタイミングで告白なんかされてはたまらないと、真っ赤な顔で釘を刺してくる高名瀬さん。
分かってるよ。
もし告白する時は――
「もっとロマンチックな雰囲気じゃないとね」
「ひ……ぅ、っぎゅ」
なんか、高名瀬さんの喉から変な音が漏れた。
「そっ…………ぃう、ことでは、……ない、ですっ」
ん~……かろうじて聞き取れなかった!
なんだって?
「もういいです! 次は女子だけで撮るので、高名瀬君はオタケ君と二人で撮っていてください」
「え、なんで!?」
メンズ同士で撮るようなもなの、これ!?
高名瀬さんに押されて、向かいの機械へ入れられた僕とオタケ君。
……えぇ、撮るの?
「ふむ……このような感じなのだな」
「オタケ君も初めて?」
「あぁ。こういうのには興味がなかったのでな」
「じゃあ、最初のショメシャは、誰か好きな人と――あ、ごめん、なんでもない」
「うむ……おそらく、こんな空間に二人で入ったら、俺は……死ぬ」
いや、僕としては、姉ごときに君の経歴を汚させたくなくて謝罪したんだけどね。
「まぁ、初めてはいつかのためにとっておくといいよ」
「なぜだ? 折角だ、一緒に撮ろうじゃないか」
「僕でいいの、初めてが?」
「俺はそんなものは気にしない」
まぁ、アニバーサリー関係を気にしないメンズは多いけどね。
「……戸塚さんに知られたら、折檻されそう」
「はははっ、鎧戸は戸塚とも仲がいいからな」
いやいや。
オタケ君や高名瀬さんと仲がいいんだよ、戸塚さんは。
僕はオマケ。
「っていうかさ、オタケ君」
「なんだ?」
前からちょっと気になってたんだけど……
「しゃべり方、なんか堅苦しくなってない?」
前はもっと「オラオラ系」な口調だったような?
「それは、だな……まぁ、その………………好きな方の身内相手なので、若干の緊張と、可能であれば好印象を抱いていただきたいなという下世話な下心からだな……」
マジかぁ……
姉のせいか……
「僕は、オタケ君のこと好きだから、普通通りに接してくれていいからね?」
「あぁ。そのつもりだ。俺も別に無理はしていない。むしろ、こういうのが普通なんだ」
「じゃあ、いいけど」
なんか、二人きりの空間で、ちょっと腹を割って話せた気分。
折角だからショメシャを撮ろうと財布を出すと、「ここは男の俺が」とオタケ君がお金を出してくれた。
あのね、オタケ君。
僕も男だからね?
「どうすればいいのか、さっぱりだな」
「さっきは画面に指示がいろいろ出てきたよ」
「なるほど。それをクリアしていけばいいんだな?」
「まぁ、そんな感じ」
ルールを把握した時、機械から音声が流れ始めた。
『撮影を始めるよ! 画面に表示されるポーズをとってね☆』
機械音声に指示されて、画面に表示されたポーズを真似る。
最初に提示されたのは、二人で一つのハートを作るポーズ。
二人の手をそっとくっつける感じのね。
……これは、女子とやりたかった。
そして次のポーズは、ハグ。
ラストはお姫様抱っこだった。
『印刷が完了したよ☆ また遊んでねー☆』
カッコン! と、印刷されたプリントシールが射出される。
それを、横から掻っ攫っていく戸塚さん。
「なに羨ましいことしてんだよ、鎧戸!?」
戸塚さんが僕を足蹴にし、戸塚さんからプリントシールを受け取った三浦さんが「イチャイチャすんな」と冷めた声で言い、高名瀬さんが――
「鎧戸君も、特別カリキュラムです」
と、呟いた。
え、僕、なんか悪いことした?




