148 あわよくば
「ところで奥多摩」
「はっはっはーっ、なかなかガッツがあるな小僧? ん?」
僕の頭を鷲掴みにして、ぐりぐりしてくる奥多摩。
ガサツだなぁ。
姉よりひどい人を初めて見た。
「奥多摩といると、相対評価で姉の株が上がっていくようだ」
「よし、あたしたちはずっと一緒だぞ、メイ!」
「じゃかぁしぃわ! テメェに劣ってるって、人生で最大級の侮辱だからな!?」
あ、やっぱ姉は外でもそんな評価なのか。
「見る目はあるようだな、奥多摩」
「とことん上から来るな、こいつは。で、なんだ?」
「この疑似シート、自己負担はいくらくらい?」
「特殊なシートだからそこそこ値が張るが……まぁ、今はまだ実験段階だ。被験者ってことにすれば国が全額持ってくれると思うぞ」
それはいい。
「じゃあ、僕にも頂戴」
「疑似おっぱいでも作る気か? リアルな質感になるぞ」
「じゃあ、2つください」
「確保に走ったね、シュウ」
けけけっと妖怪丸出しで笑う姉の横で、妖怪顔負けな顔をしてこちらを睨んでいる高名瀬さん。
違うんです。
さっき見た肌色が脳内にチラついて……はい、すみません。
「そうじゃなくて、僕のコードも隠せないかなって」
「いやぁ、シュウのコードはデカいからねぇ、ちょっとムリなんじゃないかなぁ」
「だからさ、こう、コードに巻き付けて肌のように――」
「尻尾生えてんじゃん、シュウ」
そこはほら、先祖返りとか言って誤魔化す方向で。
「鎧戸くんの場合は、下着や水着があれば隠れるのでいいんじゃないですか?」
「でも、大浴場とか行きたいじゃない?」
「あぁ、なるほどねぇ。タオル巻いて浴槽に入るわけにはいかないか」
そうなんだよ。
温泉とか銭湯とか、お風呂はいっつも個人風呂なんだよね、僕。
一回でいいから露天風呂とか、入ってみたいんだよねぇ。
「なぁ、ササ。小僧のコードってのはどんくらい出てるんだ?」
「掃除機のプラグの先端、あるじゃん?」
「そこそこの大きさだな」
「あれが、完全に出てる感じ」
「だとしたら、疑似シートを貼っても、ケツがこんもりしちまうぞ」
「ん~……プラグとケツこんもりと、どっちがいいか……」
「どんな二択ですか、それは」
いやいや、高名瀬さん。
割と真剣に悩んでるから、僕。
「ひとつだけ解決策があるぞ」
と、姉。
一応聞いてみる。
「入浴中、ずっとレン君に押さえててもらえばいい」
「なるほど。オタケ君は手も大きいですし、うまく隠せそうですね」
「ね? 解決☆」
「してないわ、駄姉」
何を高名瀬さんまで乗っかってるの?
おかしいでしょ?
お風呂の間中ずっとオタケ君が僕のお尻に手を当ててたら!
おかしいでしょ!?
「想像してみてよ」
「「………………ぷっ!」」
「笑ってんじゃん!?」
「ぷっ」じゃないんだ、「ぷっ」じゃ!
「でも、そういった状況ですと、他の入浴客が視線を逸らしてくれるという副次的効果が見込めますよ」
「面白がるな、黒高名瀬!」
たまに真っ黒になるよね、高名瀬さんは!?
「もしどうしてもっていうんなら、あたしが宿の人にお願いしてあげるよ。真夜中とか早朝とか、人のいない時間に特別に入れるようしにしてくれって」
「そんなわがまま、聞いてくれるのか?」
「国の力を使う」
と、研究員の証であるIDをひけらかす姉。
隣で奥多摩も見せつけている。
あれって、警察手帳みたいに、特定の場所で見せるとかなり強い効果を発揮するんだよね。
こんな二人に持たせてていいのか、国?
「一人で入るのが寂しかったら、レン君に付き合ってもらえばいいしさ」
「ほほぅ、真夜中の温泉にメンズがこっそり二人きり、か……」
「副次効果が生まれますね」
「女三人寄れば姦しいって、こういう感じ?」
なんか、すっごいうるさい。
高名瀬さん、こっちに戻ってきなさい。
そんな爛れた大人の輪に入ってはいけません。
高名瀬さんを黒く染めるくらいなら、僕は大浴場を諦めるさ。
「もしくは、家族風呂でもいいぞ」
「姉と入るのかよ……」
「そんな顔をするな。二日前も一緒に入った仲じゃないか」
「飲んで入浴して風呂場で爆睡した貴様を救助してやっただけだ」
あれのどこが入浴だ。
家族風呂はないな。
「家族風呂なら、アタシも一緒に入ってやってもいいぞ? ど~ぅだい、少年? 妄想が膨らむだろ~ぅ?」
と、両腕を持ち上げて長い髪を掻き上げ、しなを作って艶っぽい吐息を漏らす奥多摩。
「高名瀬さんは、あーゆー大人にはならないでね」
「どーゆー意味だ小僧!?」
そーゆー意味だよ!
その手の重苦しいギャグは姉でお腹いっぱいなの!
二人もいらん!
絶対に交わらないように、ただれ~ズと高名瀬さんの間に体を割り込ませて、しっかりとガードしておいた。
ふんすっ!
あけましておめでとうございます
本年も、『彼女と僕の口外法度~地味で巨乳なクラスメイトの秘密を知ってしまった僕の話~』をよろしくお願いいたします




