138 日曜日の朝
明けて日曜日。
本日は各自自宅にて自習。
昨日、高名瀬さんは、日曜日も図書館で勉強会をと言ってくれていた。
でも、高名瀬さんも、自分の勉強があるからね。
今日一日は自分のために時間を使ってもらうことにした。
きっと今頃、自室の机に向かっていることだろう。
自室の……
「…………まさかね」
ふと予感がして、リビングへ。
ゲーム機をセットして、スターターセットであるシートへ着席し、ゲームを起動。ログイン。
お友達登録しているキャラのログイン状態を確認…………いた。
高菜SAY『こら、魔王。勉強はどうした』
魔王『鎧戸君こそ、何をログインしているんですか。午前中の涼しい時間こそが、集中して勉強を進められるベストな時間帯なんですよ?』
高菜SAY『ここまで説得力のない言葉を、僕は知らない』
グループチャットでメッセージを送れば、すぐさま返事が返ってきた。
まったく。
予想通りだよ。
友達しか見られないグループチャットだから、実名出してもOKだし、遠慮なく地で会話する。
高菜SAI『折角、昨日僕が気を利かせたっていうのに』
魔王『わたしは、自分に必要であると思われる量の勉強を終えてからゲームをしていますので、問題ありません』
高菜SAI『え、なに? もう勉強終わったの?』
魔王『一昨日までに完了させています。教えるつもり満々でしたから』
あぁ~、なんだ、そうだったのかぁ。
高菜SAI『じゃあ、僕は余計な気を回しちゃった感じかぁ。ごめんね、折角準備してくれてたのに』
魔王『いいえ。それに、昨日の様子を見る限り、りっちゃんたちも今回の試験は問題なく平均点を上回るでしょうから、今日一日は適度に頑張って適度にリフレッシュしてもらえばいいかと判断しました』
高名瀬さんは自分から「えぇ~、教える準備してたのに~!」とか言わないからなぁ。
申し訳ないことをした。
高菜SAI『僕だけでも、教わりに行こうかな』
魔王『え……と、それは……図書館デートへのお誘い、でしょうか?』
高菜SAI『呼び出すのは申し訳ないし、教わりに行くよ。お邪魔していいなら』
魔王『いえ! ……あの、ご招待はいずれしますが、今日すぐには……』
高菜SAI『散らかってても気にしないけど?』
魔王『散らかってません!』
高名瀬さんの尊厳に触れたらしい。
はい。
高名瀬さんのお部屋は常時片付いています。脳にそう記憶しておきました。
魔王『……母や妹への指導がまだ済んでいませんので』
高菜SAI『指導って……』
魔王『必要なんです、あの人たちには』
どんなご家族なんだろう。
会うのが楽しみだ。
魔王『それで、あの……会いますか?』
わぁ、なんだろう、このむずむずする感じ!?
これは、イヤだなって反応じゃないよね?
会うなら会いに行くよ~ってことだよね!?
うはぁ、いいなぁ!
魔王『あのっ! 何か言ってください!』
あっ、ついうっかり浸ってしまった。
すぐに「会いたいな」って返事をしよう――と思った時、画面の右端から『ぴろん♪』と通知が生えてきた。
『フレンドのノトナメさんがログインしました』
おぉっと、もう一人遊んでるヤツがいるようだ。
高菜SAI『今から一緒に、これから一緒に』
魔王『殴りに行くんですか?』
そうそう。
「遊んでんじゃねぇーよ」って。
そして、「お前が言うな」って言い返されるんだろうな。
魔王『どうやら、みなさん余裕があるようですね』
高菜SAI『まぁ、今日は自習だからね。時間の使い方は自由でいいんじゃないかな』
魔王『自由に過ごして、「全員平均点以上」という条件をクリアできなかった場合には、重めの折檻が必要になりますが』
魔王様の折檻は怖いねぇ。
というか……
高菜SAI『高名瀬さんは、どうしても条件クリアしてみんなで海に行きたいんだね』
案外乗り気なんだ。
結構嫌がるかと思ってたけど、前向きならよかった。
と、思っていると、魔王様はこんな弁明をしてきた。
魔王『どうしても、というわけではありませんが、折角ササキ先生が提案してくださったことですし、それに我々は今、いわゆる、青春の只中だと、鎧戸君もおっしゃっていましたし』
おっしゃっていたのは高名瀬さんだったと思うけどね。
高菜SAI『じゃあ、ひと狩りついでに圧をかけに行こうか』
魔王『はい。適度なストレス発散は勉強の効率を上げますので、よい提案だと思います』
狩りはストレス発散になるけど、魔王様の圧はダイレクトにストレスになると思うなぁ。
まぁ、オタケ君には頑張ってもらおう。
青春の1ページのためにも、ね。




