132 全員集合
「おはよう、二人とも」
「……ぉはょぅ……えへへ」
こぢんまりとした商店街があるだけの片田舎の小さな駅前にリムジンが横付けにされ、ぼちぼち増え始めた通行人が「何事だ!?」と注目する中、後部座席からオタケ君とほにゃほにゃに呆けた戸塚さんが降りてきた。
どしたの、戸塚さん?
「……駅に着かなきゃよかったのに」
あぁ、楽しかったんだね。
オタケ君とのドライブデートが。
まぁ、運転手さんもいたんでしょうけど。
リムジンデートは、なかなか経験できるものじゃないからねぇ。
今度僕も乗せてもらおうかな?
オタケ君と二人でリムジンの後部座席に…………うん、やめとこう。
なんとなくだけど、やめとこう。
我が家への送り迎えが常習化しそうで怖いし。
「車は帰らせるぞ。帰りは、高名瀬と二人で帰れば大丈夫だろう?」
「うん。ありがとね、レンゴク」
「気にするな。友達だからな」
「うん。……えへへ」
友達でも嬉しい、戸塚さんなのでした。
確実に進展したからね、数日前までの認識外よりも。
……普通に会話する女子はいないとか言ってたからね、その人。
なんでモテてるんだろう?
「ねぇ、高名瀬さん」
「はい?」
「オタケ君って、姉以外の女子には結構失礼な性格だと思うんだけど、なんでモテてるんだろう?」
「人柄以外でということとなると、やはり容姿や経済力でしょうか?」
「経済力?」
「お金に寄ってくる女性は一定数いると思いますが」
あぁ、そうか。
オタケ君はお金持ちなんだ。
今さっきリムジンに乗ってきたのに、なんかすっぽりと頭から抜けてた。
「なんか、あんまりお金持ちをひけらかさないから、お金持ちなの知っててもそんな気がしないかも」
「それは彼の美徳だと思いますよ」
オタケ君は、力もお金も持っているのに、それをひけらかしたり悪用したりしない。
偉い。
「モテる要因は、そういう人柄のよさ?」
「それは、付き合ってみて初めて分かることですから」
「じゃあ、容姿か…………オタケ君って、女子から見てカッコいい?」
「それは、個人の判断によるのでは?」
つまり、普遍的なオタケ君のモテ要素といえば――
「やっぱり筋肉か」
「鎧戸君も少し鍛えますか? なんでしたら、わたしがメニューを考えますよ?」
「いや、高名瀬カンパニーはブラック企業なので遠慮しておきます」
モンバスでしごかれた時も、要求が高い高い……
よく乗り越えたよね、僕。
「高名瀬さんも筋肉フェチだもんね」
「わたしは、りっちゃんとは違います」
戸塚さんは筋肉フェチ。(高名瀬公認)
「そういう鎧戸君はどうなんですか?」
「筋肉?」
「ではなく、今日のりっちゃんは全身白でコーディネートしていますが?」
言われて、戸塚さんを見てみる。
ホントだ!?
上から下まで真っ白だ。
ただし、オヘソと太ももから先の脚が大胆に露出している。
ミュールも、一応白なんだね。
「戸塚さん、なんだか今日は白いね」
「ん? だってほら、図書館だし。図書館女子っぽくない? 白ってさ」
図書館に合わせたコーディネートだったようだが……戸塚さん、図書館女子はヘソを出さないよ。絶対。
「りっちゃんと鎧戸君は、同じジャンルのマンガを読んでいるのかもしれませんね。発想がそっくりです」
「えっ、じゃあ戸塚さんも露出多めの異世界転生巨乳モノが好きなの?」
「好きなわけねぇーだろ」
うわぁ、めっちゃ冷たい目。
戸塚さん、それは女子がしていい目じゃ……
だって、同じジャンルを読んでるって高名瀬さんが言ったから……
「これではっきりしましたね」
と、高名瀬さんがこちらを向く。
「鎧戸くんの本棚に収納されていたマンガが、『露出多め巨乳モノ』というカテゴリーで収集されていたという事実が」
「謀ったな、孔明!?」
なんて策士!?
諸葛孔明も真っ青だよ!?
「今日は勉強会なので、鎧戸くんがあちらこちらへよそ見をしないか、しっかりと見張らせていただきますので」
と、僕の隣に立つ高名瀬さん。
これは……
僕が白い服が好きだと思っている高名瀬さんが、今日たまたま白い服を着てきた戸塚さんをあんまり見るなよと、プチヤキモチを焼いてくれている…………と、自惚れてもいい感じ?
「今日の服も、爽やかでとっても似合うね」
「そのような感想は求めていませんっ」
「もぅ!」と、僕の背を押し、オタケ君と戸塚さんを残して歩き出す高名瀬さん。
後方から――
「前触れもなくイチャつくな、あいつらは」
――とオタケ君の声が聞こえてきたが、高名瀬さんの足は止まらなかった。




