124 噂の渦中
どうやら、昨日は僕を含む五人もの人が一斉に欠席したため、クラスでは結構な騒ぎになっていたらしい。
「莉奈がついに高名瀬やっちゃった?」とか、「いつかやると思ってた」とか、「鎧戸は巻き添えかぁ……」とか、そんな話で持ちきりだったと。
……僕の扱い、酷くない?
というか、戸塚さん、お友達やクラスの人に「いつかヤル人物」と思われてたんだ……
そんなわけで、戸塚さんがとてもご立腹で、今日一日は、いかに自分が高名瀬さんと仲良しで、なおかつ友人思いで優しいかということをこれでもかとアピールする日にするらしい。
巻き込まれた高名瀬さん……ご愁傷様です。
「うぅ……方々から注目されて……ゲームが出来ません」
と、高名瀬さんが泣いていた。
悲しむ理由、それなんだ……
誰も事件は目撃していないけれど、「何かあったらしい」という噂は瞬く間に学校中に広まって、僕たちはかなり注目されてしまった。
他のクラスから「おい、大丈夫だったのかよ、お前?」とか話しかけに来た見ず知らずの男子がいた。
誰だったんだろう、彼は……?
そして、よくないことに、ボクたち四人は今日登校したけれど、短髪君は今日も欠席。まぁ、当然なんだけど。
そのせいで「何があったの?」と質問されまくりだった。
「ごめん。下手に口外するなって、口止めされてて。学校の発表を待ってて」
――と、そのように言えと、昨日の話し合いで姉から厳令されていた。
僕たち四人は、まったく同じことを口にして、次々やって来る野次馬たちに対応した。
何を聞いても教えてくれないと分かると、自然と人は集まらなくなった。
とはいえ、お昼休みまですべての休み時間が潰れたけれど。
「学校がさっさと状況説明しないから……」
「出来ないんだと思います。……少なくとも一人、法に触れて鑑別所ですから」
と、小声で話す高名瀬さん。
そうだよね。
学校としても、下手なことは言えない。
事実確認しようにも、保護者も一緒に警察送りだから、手の打ちようがないのだろう。
自分の学校の生徒が襲われた。しかも、犯人も同じ学校の生徒で、その保護者が首謀者だった……なんて、前代未聞だろうしね。
学校としても、警察がなんらかのアクションを起こさない限り、何も言えない状態なのだ。
「退学かな?」
「でしょうね……。復学されても、どのように接すればいいのか悩んでしまいますが」
そりゃ、そうだよね。
高名瀬さんと短髪君の間に特別な因縁があったわけじゃない。
短髪君の好きな女の子が高名瀬さんを悪く言っただけだ。
それで暴走したのだから、どう考えても短髪君が悪いわけで……
彼も、これに懲りてもう少し慎重な行動を心がけられるように成長すればいいな。
せめて、彼の未来がもう少しまともであれと、祈っておいてあげよう。
そうして、慌ただしく、騒がしく、濁流にのまれるように時間を過ごし、気付けばお昼休みになっていた。
「ポー! お弁当食べよ~!」
「え、……あの、えっと」
「ほら、こっちこっち!」
戸塚さんが高名瀬さんを捕まえて自分のグループへと誘い込む。
高名瀬さんが戸惑いながら、こちらをチラチラ見てくる。
いつもなら部室に行って二人で食べてたもんね。
でも、今日は戸塚さんが高名瀬さんとの仲を周囲に見せつける日になったらしいから、今日だけは付き合ってあげれば?
幸いというか、授業中にゲームが出来なかった影響で、お弁当もまだ残っているみたいだし。
……やっぱり、三時間目の壁はゲームのせいだったか。
充電がなくなるほどゲームして、自分のコンセントを使っちゃうせいでね。
「ちょっと莉奈。さすがにくっつき過ぎ」
「そっちの気があるって勘違いされちゃうよ?」
「ふん! 言いたければ言わせとけばいいよ」
「いえ、それはこちらにも結構迷惑なんですが……」
今日は無敵状態の戸塚さんと、付き合わされておどおどしつつも自分を崩さない高名瀬さん。
案外いいコンビなのでは?
「まぁ、あんたらは別にいいとして……アッチは完全に怪しいっしょ」
と、ギャルたちの視線がこちらに向く。
僕と――僕の目の前に陣取って、僕の両手をぎゅっと握り込んでいるオタケ君に。
何してんの、オタケ君!?
「まさか、本当に手料理を食べさせてもらえるとは思わなかった……」
「手料理?」
「え、鎧戸の手作り?」
「無理を言って悪かった」
「無理言って作ってもらったんだ」
「でもお前なら、必ず俺の望みを叶えてくれると信じていた!」
「すっごい信頼関係」
「絆、つっよ!」
「お前は最高だ、鎧戸!」
「ラブラブじゃん」
「抱きしめたい!」
「うん、いい加減にしようか、オタケ君」
この人は、周りに誤解を振り撒かないと死んでしまう病気なのだろうか?
僕も散々、オタケ君の振り撒く誤解に振り回されたよ。
「お前への気持ちは、もはやフレンドには収まりきらない! フレンダー、いや、フレンデストだ!」
「英語が苦手なら使わなきゃいいのに」
「じゃあ、フレンドの上位はなんだ?」
「ラバーですね」
「マイベストラバー、鎧戸!」
「なんでこのややこしいタイミングで、間違ってはいないけど絶対的に大間違いな答えを寄越してくるの高名瀬さん!? 僕の不幸楽しんでない!?」
絶妙のタイミングで「ラバー」とか呟かないで!
確かに「フレンド」の上位は「ラバー」かもしれないけれど!
すぐ真に受けるんだから、オタケ君!
ホント素直だよね~、あはは~っだ!




