ダンジョンへ行こう
今日はいよいよダンジョンへ行くことになる。
まあ、実際には、既に訓練場という形で、入り口の部分には入っているんだけどね。
しかし公式に発表されているダンジョン……というか、その入り口は別にあった。
15年ほど前のある日、この世界には突然ダンジョンの入り口が無数に発生し、それはこの日本の各都道府県に最低でも1つか2つはあるらしい。
実を言うと、俺が住んでいる地域の近くにも入り口は存在していて、通うには便利な立地だった。
ただ逆に言えば、そこから魔物が溢れ出すリスクが常にある訳で、その所為で地価が劇的に下がったということもあるらしい。
まあ、そのおかげで俺達が住んでいるマンションも、家賃が安くて助かっているところはある。
「という訳で、最寄りのダンジョンに来てみました。
これからボクの冒険を、みなさんに見てもらおうと思います」
●:って、めっちゃ私服なんだがwww
●:これからダンジョンを攻略するって恰好じゃないなぁ
●エルシー:山をなめている登山者のようですね
配信を始めると、早速リスナーの神々から突っ込みが入る。
今の俺の恰好は、相変わらずの女装だからな……。
「だって、市販の防具って、物凄く高くて……」
●:あ~……
●:じゃあ、これを足しにして 100P
●:足りねぇよw
ホントに足りない……。
最低ラインの革の鎧でも、30万円以上するし……。
しかも俺の小さな身体のサイズに合わせると、オーダーメイドで時間もかかるらしい。
それなら、無理して買う必要もないかな……。
そもそも「HP・MP超回復」のスキルがあるから、多少のケガは大丈夫……だよな?
ちなみに、装備(特に武器)を身に着けたまま、ダンジョンの入り口に併設されている施設から出るのは法的にアウトだ。
銃刀法に近い扱いになるので、更衣室で着替えてからカバンなどに仕舞い込むか、併設されている探索者協会の金庫へ預ける必要があるそうだ。
いや、俺には「アイテムボックス」があるから、その必要は無いが。
というか今の俺、男子更衣室は無理だろ……。
●ナウーリャ:まあ、防御魔法を練習すれば、いいんじゃないですか?
●アイ:魔法を極めると、武器も防具もいらないよね
なるほど、その方向で金は節約しようか。
「ともかく、受付けを済ませて、ダンジョンに入りますよ」
そう、ここには自動改札機みたいなものは無く、係員に資格証を提示して入場しなければならない。
たぶん鑑定とかされて、資格が無い者が侵入ことを防いでいるのだろう。
で、受付けは、巨大な鋼鉄製の扉──その前にあった。
探索者協会支部の訓練場と似ているけど、扉には更に小さな扉がついていて、普段はそこから出入りするらしい。
大きな扉をいちいち開閉するのは、ちょっと大変だろうしねぇ……。
たぶん大きいほうは、なにかしらの資材を運び込む時や、大人数が出入りする時とかに開けるのだと思う。
で、扉の近くに受付け窓口となる部屋があり、そこには係員や守衛がいるようだ。
そこに俺が近づいていくと──、
「お嬢ちゃん、ご家族を迎えにきたのかい?
でも、ここは危ないから、建物の入り口にある待合室の方で待っていてね」
この扱いである。
ダンジョンに入っている探索者の、子供だと勘違いされたようだ。
●:ガチの子供扱いwww
●:ナオきゅんの可愛さなら、仕方がないね。
くつ……!
どこへ行っても、こんな扱いか!
「……あの、探索者です。
確認をお願いします」
と、俺はマイナンバーカードを係員へと差し出す。
「えっ!?
え~と……た、確かに……?」
首をかしげながら、納得しているのかしていないのか分からない顔をしている係員。
ハッキリしてくれ。
「で、でも1人で行く気かい?
危ないよ?」
実際危ないのかもしれないけど、配信の秘密保持の関係で、他人とはパーティを組めないのよ。
というか、年齢確認をした上で、子供みたいに宥めるのはやめてくれ……!
「大丈夫です。
異世界の生まれなので、そこそこ戦えると思います」
「!」
と、俺は帽子を脱いで、猫耳を見せる。
●:可愛い
●ナウーリャ:猫耳は良い…… 5000P
●レナ:かわヨ 3000P
リスナー、うるさいよ!
「そ、そういうことなら……。
でも、気を付けてくださいよ?
「はい」
まあ、異世界生まれも嘘なら、実戦経験も無いから、本当に気を付けなければいけないのも事実だ。
それでもこれで、ダンジョンに入る許可を得ることができた。
「それでは、扉を通ってください。
魔物が通れないように、閉じたらロックがかかりますが、出る時は扉の内側にある機械にカードを読み込ませれば、ロックが外れます。
万が一カードを紛失しても、扉の付近に近づく存在をこちらで観測しているので、外側からロックを外すことはできますが、時間がかかりますので、なるべく無くさないでください。
あと、生きた魔物は外に出せませんので、たとえ卵とかでも持ち帰らないでくださいね」
「分かりました」
係員の説明を受けてから俺は、大きな扉に取り付けられた小さな扉をくぐる。
●:猫用の出入り口みたい
●:確かにw
言うなよ、自分でもちょっと思ったんだから……。
そして中に入ると、訓練所と同じような空気感を感じた。
あと、周囲には何かしらの計測器みたいのがあるけど、これで扉に近づく存在を警戒しているのかな?
魔物が外に出たら、大変なことになるだろうからなぁ……。
しかし、ダンジョンの中では機械類があまり使えないと聞いていたけど、入り口付近なら問題は無いのか……それとも魔法も併用した新技術なのか。
最近はダンジョン内でも活用できるように、そのような技術の開発が進んでいるらしい。
「水杜、まだ姿は現すなよ?
たぶん、扉の周囲だと、職員に見つかると思う」
「うん、お兄ちゃん」
そう、「幻術」で姿を消している水杜も、こっそりダンジョン内へ侵入することに成功していた。
これなら探索者の資格を、急いで取る必要は無いかな……。
ただ、違法行為なので、少々気がとがめるけど……。
ともかく、なんとかダンジョンに入ることはできたが、その入り口付近には、あまり魔物は出ないと聞く。
魔物と戦う為には、もっと奥に進まないと……!
そんな訳で、奥へ向けて、俺は進んでいった。
●アイ:ランダムで罠が設置されるらしいから、気を付けてね
●:最悪、即死するから、「罠感知」のスキルは取っておいた方がいいよ
「えぇ……」
罠があるとは聞いていたけど、即死するとは聞いていない。
スキルは自然に身につく可能性もあるけど、それまで待っていられないので、ポイントを使って取得するか……。
眼科に行ってきます。




