魔法の講習
「まず、私が空気中の魔力を、動かしてみます。
それを感じ取るところから始めましょう」
と、講師の田中さん。
で、右腕を軽く上げて、何かをしている。
●ナウーリャ:あ~、動いていますねぇ
「魔力感知」のスキルを極めると、肉眼で見えますよ
●:俺達なら視覚的に見えるけど、ナオちゃんは分かる?
神の目だと、配信越しでも分かるのかよ!?
俺は当然視覚では見えないが、魔力の動きについては、なんとなく分かる。
「風の流れのような物は感じます。
田中さんの掌を中心に、時計回りで回転している感じですか?」
それは俺には生えていないはずの猫のヒゲで、感じ取っているような感覚だった。
肌の感覚が、人間とは違うようだ。
●:正解! 500P
講師よりも先に言うなし。
「そうですね、優秀です」
「それが分かるのなら、今度は自分の体内にある魔力を感じて、それを意識的に動かせるようにするんですよ」
「副支部長、私のセリフを取らないでください」
うん、何故か見学しているだけであるはずの茲富さんが、口を出してきた。
もしかして俺に構ってほしいのか?
だが、ここは魔法講師である田中さんの顔を立てる為にも、茲富さんのことはスルーする。
田中さんが気分を害して、指導の手を抜かれても困るし。
まあ、長い目で見たら、探索協会支部の副支部長である茲富さんの機嫌をとった方が得である可能性もあるけど、それはそれで、妹の水杜が機嫌を悪くしそうだしなぁ……。
そんな訳で、俺は田中さんに確認する。
「体内の魔力を感じて、動かせばいいんですね?」
「そうです」
こうして、やたらと地味な魔法の基礎訓練が始まった。
ちょっと退屈そうな、神々のコメントを聞きながら……。
──そして、30分ほどが経過した頃。
「はい、魔力を体外へ放出するところまではできるようになりました。
実に優秀です」
「そうね、凄いですよ!」
「頭を撫でないでください、茲富さん」
俺が成人男性だって、完全に忘れているだろ、この人……。
「これで『魔力感知』と『魔力操作』のスキルを、習得しているはずです」
あ、本当だ。
田中さんの言う通り、スキルが増えている。
こんな感じで、スキルを自力で取得できるのなら、頑張り次第で他のスキルも手に入れられるってことだよな?
それならやっぱり、「水耐性」を得て、風呂を楽しめるようになりたいな……。
あとは、耳と尻尾を隠せるスキルとか……って、今はまず魔法だな。
魔法を習得すれば、「幻術」も習得できるかもしれないし、そうなれば隠すのもどうにかなる。
「その放出した魔力を、勢いよく標的に当てるだけでも、攻撃スキルになります。
まあ、実際に敵を倒せるレベルになるまでには、かなりの練習が必要でしょうが」
「なるほど」
「それでは効率が悪いので、放出した魔力を炎などに変換するのが、一般的な攻撃魔法です」
「それはどうやって……?」
「放出した魔力を、精霊に食べさせるのです。
その代償として、精霊が変換してくれます」
そんなファンタジーな存在が、魔法を使う度に現れるのか。
というか、うちのリスナーに精霊とかいない?
「精霊は、どうすれば現れるのですか?」
「視認できるほど精霊が具現化することは、まずありません。
だけど常に我々の周囲には、精霊は存在しているのです。
だから精霊に魔力を与えて、火や水などを作ってもらうことをイメージしましょう。
それが精霊に伝われば、忖度してやってくれます」
いきなり抽象的になったな。
感覚でやれって感じなのか。
●ナウーリャ:全てはイメージの力でどうとでもなります
ゲームとか漫画に出てくる魔法を再現するようにイメージすれば、やりやすいと思いますよ
●アイ:マジでそれ
魔力はイメージ次第で、なんでもできるよ
イメージするって、難しいな、おい……。
でも、とりあえず挑戦してみるか。
そして2時間後。
今度は時間がかかったけど、なんとか魔法を使えるようになった。
しかも──、
「初歩とはいえ、全属性の魔法が使えていますね……」
「凄いわ! 本当に優秀じゃない!
普通は2つくらいなんですよ!」
「頭を撫でないでください、茲富さん」
なんか、全属性の魔法が使えてしまった。
全属性というと、地・水・火・風・光・闇の6属性だ。
●ナウーリャ:実際には、毒とか死とか時空とか、特殊な属性もあるのですけどねぇ
アイテムボックスも時空魔法を利用したスキルですし
●:でも、基本属性が全部使えるのはマジで優秀
●エルシー:私は魔法が苦手だから、羨ましい……
神様でも魔法が苦手とか、そんなことあるんだ……?
●:あんたのなんでも分解して、別の物へ再構成する能力は、ある意味魔法でしょ
それ、めっちゃ凄くない?
やはり神は神なのか……。
●レナ:ナオさんの初期ステータスは、育て方次第で「万能型」になれるよう、全ての適正を平均的に設定しておきましたからね。
ああ、俺のステータスがやたらと平均的なのは、やっぱり狙ってのことだったのか。
そして実際に魔法を全属性習得できたということは、基本的には苦手な物が無いということだな。
まあ、特別得意なことも無いのかもしれないが、茲富さん達の反応を見るに、平均的というのも神様基準なのかもしれない。
人間基準だと優秀……だと。
ともかく努力次第で、望むままの成長ができるんだな……。
そんな感じで、確かな手応えを得た俺は、魔法の講習を終えて帰路につくことになった。
いや……今日はちょっと獲得ポイントが少なかったから、昨日のように、外食で稼ぐことにする。
色々と種類が食べられる店の方が受けるようだから、今日は某串カツ屋に行くことにした。
うん、神々にお供えする為に100本以上注文したから、また周囲の目が痛かったよ……。
まあ、20万ポイントくらい貰えたので、良しとするが。
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ストックが尽きたので、毎日更新はここまでです。次回からは、書き上げたタイミングでの更新となります。




