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第三十二話・監視カメラは必要


 ずいぶん前の話を思い出したので書いてみます。三話プラス一話あります。


①  私が子供のころは、スーパーがありませんでした。万代まんだいというお店がスーパーの走りでしたが、レジはまだありません。店員さんはそれぞれに小さな手提げ金庫と算盤そろばんを持たされ、客からお金をもらったら、金庫にお金を入れていました。商品を入れる袋は指をなめてから、一枚ずつ取り出してハイと渡される形式でした。

 店員さんは商品を並べている棚と棚のあいだに、座布団に座っていました。そのため、客は品物を手にとって、店員に「はい」 と買いたい商品を見せる形式です。高台とはいっても、客がお金を渡す時に、一応目線はあう。一つの長い列に等間隔で店員が座っているのなんて、今では見られないと思います。すべてがアナログな時代でした。レシートというものも存在していません。

 ある時、子供だった私はお菓子の袋の合間に一万円札が落ちていたのを見つけました。聖徳太子です。すぐにそばにいた店員を見上げて「落ちてました」 と言いました。するとその店員さんは私を見降ろして「貸しなさい」 と言いました。渡そうとすると、もぎりとるに近い形で取る。私はびっくり。その店員さんは私に声をかけることもなくそっぽを向きました。反対側の方を向いている。意図的なものを感じました。五十年以上たってもこういう理屈にあわない、もやもやした感情は今でも新鮮に思い出せる。お察しの通り、あれは店員がネコババしたと思っています。五十年前の一万円は、今とは違い相当に贅沢できる価値がありました。

 万代はできたばかりで、母たちが安いからと買い物をよくしていました。お惣菜は当時はなかったので、隣の公設市場で焼き鳥やお好み焼きなどを買っていました。その手前にある花屋さんからは、私はよく「子どもみくびり」 をされたので、特に覚えています。今から思えば買い物に行くというだけで社会勉強になりました。当時から大人って母のいうほど、偉くないと思っていましたが口には出しませんでした。他人からは相手にされないという感情は母の教えから来ています、



② 今度は私が成人してからの話です。昭和の時代で監視カメラがなかったと思ってください。レシートはさすがにありましたが、それでも購入した商品名の打出などはありませんでした。バーコードの概念すらなかった時代です。値札シールを確認しながら手で一つ一つ数字を打ち出していた時代です。

 私は職場からの帰宅途中、小腹がすいたので駅前のパン屋さんに行きました。トレーとトングを持って好きなものを選びレジでお会計というあるあるパターンです。当時はその最先端だったと思います。時間帯は、閉店間際でした。先客が先に支払いして次に私が待っています。ところが店員とその客が揉めています。客が怒っている。

「おつりが少ない。私は一万円を確かに出した」

 店員さんを見るとものすごく困った顔をしている。先客の顔は見えぬがやや年配、六十前後、服装は夏場でしたが何度も洗濯して着倒しているムームーみたいなのでした。顔が大きくてノーメーク。上がマンションでしたので、そこの住民が普段着のままでパンを買いに行ったのかと思いました。店員は説明している。

「お客様は千円札を出されたと思いますが」

「いいえ。一万円ですよ」


 店員さんは当時の私より年上のようでしたが、私の顔をちらと見る。困ったなと思いました。その人はレジ台の引き出しを大きくあけて、横に細長い箱を出す。その下に一万円札をいれていたらしく、何度も枚数を数えて首をかしげる。先客は罵声を浴びせました。

「ほら。次の客もいるし、私も急いでいるのよ。早くして」

 こうして書けば、あやしいと思いますが、私はその人の出したお札が千円札か一万円札かを見てないし、見えない位置にいた。

 その店員さんは「わかりました」 と一言だけいうと、一万円札に相当するおつりを出しました。パンは一つか二つでしたので、五百円もしなかったでしょう。もし一万円札を出したというのがうそだったら、大儲けです。その客が釣銭詐欺の常習犯だとしたら、二度とこのお店には来ないでしょう。

 こういうことを実際に見ているため、また私の勤務する薬局でも「夜の薬が足りない」 という患者もいたので、現在のような窓口に取り付けられる監視カメラは必需品だと思っています。


③ もっと年数がたちました。今度は私の番? です。

 すでに監視カメラがある時代です。ホームセンターで買い物をしたら、おつりが少ない。私は五千円札を出しましたので、「少ないです」 と言いました。すると、店員さんがケンカ腰で、「千円札でしたけど」 という。しかも言葉尻をあげて大声でいう。釣銭詐欺を疑われているなと思いました。

 私は無言でレジの前にはさまれている五千円札を指さす。その店員は「あ」 と言っただけで、あやまりもせず、相応のおつりをくれました。あの時、一言謝ってほしかったです。数年たっても、腹がたっています。でも、そのホームセンターの店員教育がしっかりしていて助かりました。「おつりを出すまで、紙のお札はレジに入れるな」 という教育のことです。

 私は屈辱と嫌な思いを相当にしました。過去万引を疑われた経験もありますので、現在のように監視カメラがあちこちにある時代に住めて、うれしいです。


④ ついでの話。現在はノーコインであらかじめチャージしていたプリペイドカードで買い物をすることが多くなりました。しかし、クオカードの出始めの時は客も店員も慣れていず、なんどもカードを出し入れされたことがありました。そうしたら、その数回分お金が減っていたこともあります。当時はレシートをもらわぬ習慣、もらってもその場で捨ててしまっていましたので、わからなかった。当時はカードの後ろに日と出金金額が打ち出されていましたので、それを確認して初めて「あの時の出し入れでしっかり引かれていた。料金の四倍も取られた!」 とショックを受けました。そして日もたっていましたし、そのままです。ただ悔しかったので、それ以降どんなに少額であってもレシートはもらうようにしています。

 


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