表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘告と二股と妹と。  作者: 流離の風来坊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/7

第2話 嘘告

 朝、下駄箱の中に可愛い封筒の手紙が入っていた。


 字は可愛らしく、女の子のものと推測できた。小林に見られると「一緒に封を開けてみるぞ」とか言いながら、介入してくるだろうから、速攻でカバンの中に仕舞う。


 教室で席に着くと、感慨が押し寄せてきた。俺がラブレターなんて貰うとは。名前が書いてなかったから、誰からかは分からなかった。


 クールにしていても、心は嬉しさで踊っていた。恥ずかしながら、生まれて初めてのラブレターだったからだ。


 放課後、校舎裏で待ち合わせ。


 どんな娘かな?


 外見・容姿は俺の好みかな?


 性格は、真面目で、大人しくて優しいと好いな。


 ギャル系はちょっと苦手だ。


 背は高すぎなければいい。172㎝の俺に合えばいいな。


 贅沢は言わん、中肉中背でオツケイだ。


 授業そっちのけで、丸一日、妄想が蔓延ってしまった。いいじゃないか、初めてのラブレターだもん。


 放課後、校舎裏に向かうと、そこには隣のクラスの稲垣華(いながきはる)ちゃんがいた。彼女は成績優秀で、真面目系、丸顔・下半身体系のゆるふわ美少女として男子に人気な娘だった。


 ハルちゃん ↓

挿絵(By みてみん)


★★★★★


「あ、ヨシくん!……いえ、西之原君、来てくれてありがとう。私は稲垣(はる)、隣のクラスです」


 恥ずかしがりながら彼女は声を出す。俺も緊張しながら言葉を発する。


「あ、ああ、こんにちは。手紙くれたの君だったんだね」


「貴方のことを陰ながら見ていました」


「ありがとう。正直なところ、嬉しいよ」


 最初の挨拶はクリアーできたようだ。稲垣さんは大変可愛らしく、真面目そうで、体型も好みだ。はにかんだ顔は、男子に人気だという事を証明し、大きな目がしっかりと好意を伝えてくる。


「義孝君、好きです。もし良かったら、私とお付き合いをしてくれませんか?」


「もちろん、俺からもよろしく頼むよ」


「ほんと? 嬉しい。とても嬉しい……」


「俺も嬉しいな。君みたいな素直な娘、初めてだ」


 ヤッター! 初めてラブレターを貰って、それがこんなに可愛い娘で、嘘だろ俺、なんか悪いもん食ったんじゃないだろうな?


「ねぇ、スマホでID交換しよ、行きたいところあったら、今週末のお休みに行こうよ」


「ああ、そうだな。行きたいとこ、いっぱいあるぜ」


 もうニヤニヤが止まらない。俺、今夜、死んじゃったりして。転生してしまって、二度と彼女に会えない事になったりするかも。


 それから趣味の事、好きな芸能人、よく聴く歌、音楽、過去に付き合ったことがあるか等々、初めての会話だというのに、すんなりと盛り上がり、思った以上に楽しい時間を過ごすことができた。


「俺が初めての彼氏かぁ、嬉しいな」


 時々、あくまでも時々だが、彼女がふっと寂しそうな顔をした。なにせ初対面なので、そんな悲しそうな顔も、普段の顔つきの一つだと考え、もし事情を聞くとしても又今度と思った。


 彼女は自分のことを「ハル」と呼んで欲しいとお願いしてきた。友人知人は皆そう呼ぶらしい。


 いきなり親しくなった友人、いや、彼女となったハルちゃんと名残惜しいが校門で別れ、心の中でスキップしながら家に帰った。俺は自分の部屋のベットで寝転んだ。


「ハルちゃんか……可愛い娘だったな」


 週末どこ行こう。まずはショッピングモールで初々しいデートからだな。早速、スマホでメッセージを送る。他に行きたいところが多々あるので、デートの行先で苦労することもないだろう。


 俺はバイトもやってるし、彼女の分を含めて出して、負担を減らしてやろう。ふふっと笑みが浮かぶ。


【お兄ちゃんのばかっ】


 コンコン


「ん、何?」


「お兄ちゃん、わたし」


 まだ寝るには早い時間だというのに、黄色いパジャマに着替えた由愛が扉を開いて入ってきた。そしてベットに寝転ぶ俺の傍、ベットの端に腰かけて俺の目を見る。


「お兄ちゃん、嬉しそうだね。何か、いい事でもあったの?」


「ん、何もないぞ。どうした由愛」


「あのね、ちょっと相談したいことがあって」


「うん、それで」


「今日ね、クラスメイトから告白されちゃったの」


 ぶっ、ぶーーーっ! お前もか由愛。


 相談内容を聞くと、同じクラスの男子で告白を断ったら気まずくなるかも……という事、どうしたら無難に済ますことが出来るか、といった内容だった。


「うーん、そればかりは、どうしようもないな。男子だって断られたら気まずくなるぐらい承知の上だろ。お前に責任はないぞ」


「そう、どうしようもないのかな……」


「それ以前に、どうして断るんだ?」


「だって好きな人がいるんだもん」


「え、何だって?」


「私、もう好きな人がいるんだってば」


 俺の心になぜか衝撃が走った。とても辛い何らかの衝撃だ。初めて受けるその衝撃の正体は分からなかった。口は大きくアングリとしてボ~っと由愛の顔を見るばかりであった。


 可愛い妹……思い出がフラッシュバックする。

挿絵(By みてみん)


 少しばかりの空白があり、由愛は突然ベットに寝転んできた。


「お兄ちゃん、ぎゅっとして」


「えっ?」


「ぎゅっとして」


 俺はベットの奥に身体を移動させ、背中を向けて寝転んでいる由愛のスペースを広くとると、背中から俺がくっつき、お腹に手を回すという優しいお兄ちゃんバージョンを作り上げた。


「なぁ由愛、お前、片想い中だったんか?」


 敢えて耳元で言葉を発するイヤラシイ俺。由愛は耳が真っ赤である。由愛のやつ、恋煩いで自分が制御できなくて、一杯いっぱいだな。


 こういった時にお兄ちゃんとして俺が隙間を埋めてやらないとな。母さんから義理の妹? 宣言があったんだ。もう一歩、進んでいい筈だ。何を? とは言うまい。


 由愛のお腹をマッサージする感じでサワサワし、ちょっとだけ、ちょっとだけだからと、バストの方へ舵を切ろうとしたら……危機を察した由愛が凄いスピードで振り返り、正面から抱き着いてきた。


 驚愕して動けない俺に向かって由愛は言う。


「お兄ちゃんのばかっ」


 ムム……なんだ『お兄ちゃん大好き』の間違いじゃないのか?


 少し残念に思う義孝だった。




 ただ……、このホンワカしたムードが今後も続くとは限らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ