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【1/22新作】「君を愛することはない」と白い結婚を突きつけられたので、【付与魔法】で便利グッズを作って快適な引きこもり生活を送ります

【短編版】「君を愛することはない」と言われたので、【漢字】付与で便利アイテムを作って快適に引きこもります。 (★連載版を別に作りました!★)

作者: 茨木野
掲載日:2026/01/19

【お知らせ】

※こちらは短編になります。長編は下記リンクか作者ページ、シリーズから。


https://book1.adouzi.eu.org/n3659lr/

 ゲータ・ニィガ王国の王都、その一等地に広大な敷地を持つ公爵邸。

 その主であるジークフリート・フォン・ヘイリス公爵は、執務机の向こう側から、氷のように冷ややかな視線を妻へと向けていた。


「リリアナ。君を愛することはない」


 それは、新婚初夜の言葉としてはあまりに無慈悲で、実務的だった。

 ジークフリートは「氷の公爵」の異名を持つ、国最強の魔術師であり騎士団長だ。

 彫刻のように整った美貌は、見る者を陶酔させるが、同時に近づく者を凍死させるほどの拒絶を纏っている。


 特に今の彼は機嫌が悪かった。

 目の下には濃い隈が刻まれ、肌は青白く、全身から「不快だ」というオーラが棘のように逆立っている。


「この結婚は、周囲の雑音を黙らせるための契約に過ぎない。君には衣食住の全てを保証するし、公爵夫人としての予算も渡そう。だが、私に夫としての役割を求めるな。……分かったら、離れへ行け」


 要約すれば「俺の視界に入るな、飼い殺しにしてやる」という宣言だ。

 普通の令嬢であれば、絶望に打ちひしがれ、その場で泣き崩れる場面だろう。


 しかし。

 男爵令嬢リリアナは、長い睫毛を伏せ、淑やかにカーテシーをして見せた。


「承知いたしました、閣下。お言葉通りに」


 その声は微塵も震えてなどいなかった。

 むしろ、内心ではガッツポーズとともに、喜びのファンファーレを鳴り響かせていたのだ。


(やったぁぁぁぁっ! 公務なし! 夜伽なし! それでいて衣食住保証のニート生活確定! 最高ー!)


 リリアナには前世の記憶がある。

 日本という国で、ブラック企業の社畜として働き、過労死した記憶だ。

 終電帰りの日々。睡眠時間は三時間。休日は泥のように眠るだけ。

 だからこそ、今世での目標はただ一つ。


 『誰にも邪魔されず、快適に引きこもって眠る』。


 ジークフリートの冷遇は、リリアナにとって願ってもない「放置プレイ」だった。

 夫に愛されない? 上等だ。愛など腹の足しにもならないが、睡眠は人生の質を劇的に向上させるのだから。


「そう、か」


 ジークフリートは、リリアナがあまりに素直に従うものだから、呆気にとられたように目を剥いていた。


    ◇


 案内された「離れ」は、長年使われていなかったのか、酷い有様だった。

 壁は薄く隙間風が吹き込み、備え付けのベッドは煎餅のように硬く、埃臭い。窓ガラスはガタガタと鳴り、歩くたびに床板が悲鳴を上げる。

 案内した老執事が、申し訳なさそうに頭を下げた。


「奥様、すぐに業者を呼んで修繕を」


「いいえ、必要ありません。誰も入れないでください」


 リリアナは食い気味に断った。

 そして、目を輝かせながら執事に詰め寄った。


「あ、要望があるとすれば……墨、をいただけます?」


「す、墨……でございますか?」


「そう、炭じゃなくて墨ね。あるでしょ?」


「それは……まあ、はい」


「あと高級な筆があるといいかな。ある?」


「え、ええ……」


「じゃあそれをよろしくね」


 ほどなくして、老執事が最高級の墨と筆を用意して戻ってきた。

 リリアナはそれを手に取って「これこれっ」と小躍りする。


「それじゃ、誰も入ってこないように」


「は、はい……」


 業者が入れば、引きこもれない。それに、リリアナには秘密のスキルがあった。


「さて、と。やりますか」


 一人になった部屋で、リリアナはバッグから、一つの硯を取り出す。

 彼女のスキルは【漢字付与】。

 魔力を込めた墨で、前世の知識である「漢字」を書き込むことで、その概念を物質に固定する独自の魔術だ。

 実家では「変な落書きをする地味な娘」と蔑まれていたが、この力の真価は、生活環境の改善において最強を誇る。


「まずは、このペラペラの布団からね。睡眠の質は、人生の質!」


 リリアナは煎餅布団の上に、たっぷりと墨を含ませた筆を走らせた。

 漆黒の軌跡が、虚空に滲むことなく浮かび上がる。

 達筆な文字が、魔力を帯びて黄金色に輝いた。


『雲』


 書き終えた瞬間、文字が布団に吸い込まれた。

 ボンッ! という小気味よい音と共に、ペシャンコだった布団が、まるで夏の入道雲のようにモコモコと膨れ上がる。

 リリアナがおそるおそる手を触れると、そこには底つき感ゼロの、無重力のような弾力があった。

 最高級の羽毛布団すら裸足で逃げ出す「雲のベッド」の完成だ。


 これが、リリアナの持つ力である。

 ただし、この力には条件がある。

 それは、『完成品の質が道具に依存する』こと。


 質の悪い筆や墨を使うと、質の悪い道具になってしまうのだ。

 貧乏男爵家では、高いそれらを用意することができず、結果質の悪い魔道具になってしまっていた。

 それゆえ、魔道具を売って金を得る、といったことができなかったのである。

 また父親が大層なケチであり、墨や筆といったものを不要だと言って、買ってくれなかったのだ。


 しかし、しかしである。


「さすが公爵家! 高級筆、墨をすぐに用意してくれたわ!」


 リリアナは鼻歌交じりに筆を回す。

 高級なそれらを使った結果、今までは不可能だった、高品質魔道具が作れるようになったのである。


(今までは実現できなかった、現代的アイテムを、これなら作れるじゃん!)


 むくむく、とリリアナの中で、作りたい欲が湧き上がってきた。

 ここは、剣と魔法の世界であっても、技術レベルは中世だ。

 夏は暑い、冬は寒い、服はごわごわしている。

 それら不便を、リリアナの漢字付与魔道具が解消できる。


(なら作るっきゃないでしょ!)


「よし、次は環境設定!」


 リリアナは踊るように筆を振るう。

 ガタつく窓枠には『防音』と『遮断』。

 薄い壁には『適温』と『浄化』。

 硬い木製の椅子には『猫』。


 次々と発動する漢字魔法。

 隙間風はピタリと止み、部屋の温度は春の日差しのようにポカポカと安定する。

 埃っぽかった空気は、高原の朝のように清浄なものへと変わった。

 リリアナは雲のベッドにダイブした。


「ふあぁ……」


 全身が優しく受け止められる。

 重力から解き放たれたような浮遊感。

 前世からの悲願である「最高の睡眠」を手に入れた彼女は、瞬く間に夢の世界へと旅立った。


    ◇


 それから数日後の深夜。

 ジークフリートは、屋敷の廊下を幽鬼のように彷徨っていた。


「……うるさい」


 誰もいないはずの廊下で、彼はこめかみを押さえて呻く。

 彼が不眠症である理由は、その膨大すぎる魔力にあった。

 彼は、常人の数千倍もの魔力を持つ。

 魔力には『身体を強化する』という性質があり、彼の場合は五感を過剰に強化してしまっていた。


 鋭敏すぎる五感は、彼にとって呪いでしかなかった。

 遠くで鳴く虫の声、風が葉を揺らす音、屋敷の使用人が寝返りを打つ音、そして屋敷を取り囲む結界の魔力ノイズ。

 それら全てが、大音量の雑音となって脳内に響き渡り、神経をやすりで削られるような苦痛をもたらす。


 加えて、彼の美貌と地位を狙う貴族令嬢たちが、毎日のように屋敷の周囲を徘徊し、熱っぽい視線(魔力)を送ってくる。

 気が休まる暇など、一秒たりともなかった。


(眠りたい……静かな場所で、泥のように……)


 限界に近い意識で歩いていると、ふと、奇妙な感覚に襲われた。

 庭の奥にある「離れ」。

 その周囲だけ、音が消えていたのだ。

 まるでそこだけ世界から切り離されたような、完全な静寂。


「……あそこは、彼女の」


 数日前に追い払った妻、リリアナの住処だ。

 ジークフリートは魔に魅入られたように、離れの窓へと近づいた。

 鍵は掛かっていない。

 彼は音もなく窓を開け、中へと滑り込んだ。


「……ッ!?」


 足を踏み入れた瞬間、ジークフリートは目を見開いた。

 静かだ。

 あまりにも、静かすぎる。

 脳を突き刺していたノイズが、嘘のように消え失せた。

 空気は清浄で、ほのかに甘い香りがする。


(なんだ、この空間は。結界か? いや、もっと高位の……)


 思考する余裕すらなく、強烈な睡魔が襲ってきた。

 ふらつく足で、部屋の中央にあった一人掛けのソファーに倒れ込む。


「にゃあ」


 幻聴だろうか。

 背中を預けた瞬間、ソファーから猫の鳴き声が聞こえ、じんわりとした温かさが全身を包み込んだ。

 さらに、微かな振動――ゴロゴロと喉を鳴らすようなリズムが、凝り固まった背中の筋肉を優しく解していく。

 まるで陽だまりの中にいるような、絶対的な安心感。

 ジークフリートの意識は、抵抗する間もなくプツリと途切れた。


    ◇


「……あの、閣下? もしもし? 生きてます?」


 翌朝。

 リリアナは、自分の部屋のソファーで死体のように転がっている夫を発見した。

 死んでいるのかと思ったが、規則正しい寝息が聞こえる。

 試しに、湧き水が出るポット(付与:『氷』)からキンキンに冷えた水を汲み、コップの結露を彼の頬に垂らしてみた。


「……ッ!?」


 ジークフリートがガバッと跳ね起きた。

 彼は目を白黒させ、周囲を見回し、そして自分の手を見た。


「朝……? 私が、朝まで一度も起きずに……?」


 その顔を見て、リリアナは目を丸くした。

 初対面の時にあった濃い隈が消え、肌はツヤツヤと輝いている。

 氷の彫像のようだった表情が緩み、なんだか年相応の青年のように見えた。


「おはようございます、閣下。不法侵入ですよ」


「……リリアナ、か」


 ジークフリートは呆然とソファーを撫でた。

 付与された『猫』の効果で、ソファーはゴロゴロと喉を鳴らしている。


「このソファーはなんだ。生きているのか」


「私のあー……魔術で加工しました」


「! 魔道具が作れるのか」


「まあそんなとこです。座ると猫が膝に乗っているような幸福感と温かさを提供します。癒やし効果抜群ですよ」


「……素晴らしい。これを売ってくれ。金ならいくらでも出す」


 ジークフリートが、縋るようにソファーにしがみついた。

 その姿は、お気に入りの玩具を取り上げられそうになった子供のようだ。


「お断りします。私の安眠グッズです。閣下には最高級の寝室があるじゃないですか」


 リリアナが即答すると、ジークフリートは絶望したような顔をした。

 そして、潤んだ瞳でリリアナを見つめた。


「なら、今夜もここに来ていいか」


「は? 嫌ですよ。狭いですし」


「頼む。あっちの寝室じゃ、息ができないんだ。君のこの部屋だけが、私にとっての聖域なんだ……!」


「愛することはないって言ったの、誰でしたっけ?」


「……言葉の綾だ。忘れてくれ」


 国最強の騎士団長が、なりふり構わず懇願している。

 リリアナは大きなため息をついた。

 追い出してもいいが、また不眠症でピリピリされたら、安眠ライフに支障が出るかもしれない。


「……ソファーなら、貸してあげます。ただし、私が寝る時間は静かにしてくださいね」


「感謝する……」


    ◇


 それ以来、奇妙な同居生活が始まった。

 ジークフリートは毎晩、執務が終わると当たり前のように離れにやってくる。

 手には自分の枕……ではなく、リリアナが作った試作品の抱き枕(付与:『雲』)を持って。


「ただいま」


「おかえりなさい。ここは貴方の家じゃありませんけど」


 リリアナが机で書き物をしていると、ジークフリートは無言で背後から近づき、リリアナの肩に額を乗せた。


「……充電」


「閣下、重いです。魔道具作りが進みません」


「君の魔力がないと落ち着かない。……このまま寝てもいいか?」


「ダメです。ソファーに行ってください」


 最初の頃の「冷徹公爵」はどこへやら。

 今の彼は、リリアナの部屋の空気(『浄』)と、リリアナ自身から漂う魔力に依存しきった、ただの甘えん坊だった。

 どうやら、リリアナの【漢字】が作り出す結界の中だけが、彼にとって唯一「感覚過敏」から解放される場所らしい。

 リリアナの魔力は、彼の暴走しがちな魔力を中和し、鎮める効果があるようだ。

 リリアナにとっても、彼は高価な魔石や美味しいお菓子を貢いでくれるので、まあ「性能の良い大型犬」として許容していた。


 そんなある日のことだ。

 平和な引きこもりライフを揺るがす騒音が響いたのは。


「開けなさい! ジークフリート様がここにいらっしゃるのは分かっているのよ!」


 ドンドン! と激しくドアが叩かれる。

 リリアナが眉をひそめると、窓の外には派手なドレスを着た女性が立っていた。


(誰この人……?)


 ジークフリートに執着している高位貴族の娘だろうか。


「わたくしはジークフリート様の幼なじみで、将来を約束した婚約者なのよ!」


「はぁ……」


(そんなのがいるって聞いてなかったんだけども……)


「【元】婚約者様が、なにか?」


 リリアナとジークフリートはすでに婚姻関係にある。

 だから、そこの女は元、婚約者となる。


「貧乏男爵の娘風情が、ジークフリート様をたぶらかして引きこもらせるなんて! わきまえなさい!」


 どうやら、ジークフリートが本邸に帰らず、毎晩離れに入り浸っていることが漏れたらしい。

 彼女は「ジークフリート様を救出する」という名目で、リリアナへの嫌がらせに来たのだ。


(それと、邪魔な私を排除しようって魂胆……?)


 女が発するのは、窓ガラスが割れそうなほどの金切り声。

 リリアナが「面倒くさいなぁ、防音結界の強度を上げるか」と腰を上げようとした、その時。


 ――ピキッ。


 部屋の空気が凍りついた。

 部屋の奥で、『爆睡』のアイマスクをつけて惰眠を貪っていたジークフリートが、ゆらりと起き上がったのだ。

 アイマスクを外したその瞳は、深淵のように昏く、底冷えする怒りを湛えていた。


「……誰だ」


 彼は無言でドアへと歩み寄り、乱暴に開け放った。


「ひっ……! ジ、ジークフリート様!?」


 令嬢たちが色めき立つ。

 しかし、ジークフリートが放ったのは、愛の言葉ではなく、絶対零度の殺気だった。

 周囲の大気が、バリバリと音を立てて凍結していく。


「……失せろ」


 低く、地を這うような声。

 それだけで、令嬢たちの顔色が青ざめる。


「私の安眠つまを邪魔するな。……二度とこの離れに近づくな。次に騒音を立てれば、その家ごと氷漬けにする」


 それは比喩ではなく、明確な死の宣告だった。

 本気の殺意を浴びた令嬢たちは、悲鳴を上げることも忘れ、腰を抜かし、這うようにして逃げ去っていった。

 あっという間に静寂が戻る。

 ジークフリートは「ふぅ」と息を吐き、扉を閉めると、振り返ってリリアナに抱きついた。


「……うるさかった。怖かっただろう、リリー」


(は? 何その態度……。なんで抱きつくんだろう……? 愛してもないくせに)


 彼の態度に困惑しながらも、リリアナはうなずく。


「いえ、別に。閣下の方がよっぽど怖かったですよ」


「すまない。……もう、限界だ」


 ジークフリートはリリアナを強く抱きしめたまま、真剣な声で告げた。

 その瞳には、熱っぽい光が宿っている。


「本邸に戻ろう。離れは狭すぎる。本邸の俺の寝室を、君の好きに改造してくれ。君の魔道具で埋め尽くして、二人で暮らそう」


 それは、実質的な愛の告白であり、正式な夫婦としての同居の申し込みだった。

 不眠症が治り、リリアナの有能さと(自分に媚びない)居心地の良さに気づいた彼は、彼女を手放せなくなっていたのだ。

 ハッピーエンドの気配。

 しかし、リリアナは彼の腕の中で、きっぱりと首を横に振った。


「え、普通にお断りしますけど?」


「……なっ?」


 ジークフリートが目を見開く。


「な、なぜだ? 私の財力があれば、もっと快適な環境を作れるぞ? 素材も使い放題だ」


「環境の問題じゃありません。契約の問題です」


 リリアナは、にっこりと微笑んだ。

 それは、初夜の時に彼に見せた、淑やかな笑みと同じものだった。


「閣下、仰いましたよね? 『君を愛することはない』と」


「っ……!」


「私はその言葉に深く感銘を受けたんです。ああ、この方は私に面倒な公爵夫人の務めや、ドロドロした感情労働を求めていないんだわ、と! 素晴らしいビジネスパートナーだと思いました!」


 リリアナは力説する。


「本邸に戻れば、またあのうるさい貴族たちの相手をしなきゃいけないでしょう? そんなの御免です。私はここで、誰にも邪魔されず、静かに引きこもっていたいんです。それが私たちの契約ですよね?」


 正論だった。

 あまりにも正論すぎて、ジークフリートはぐうの音も出ない。

 過去の自分の発言が、鋭利なブーメランとなって心臓に突き刺さる。

 あの時は、彼女を守るため、そして自分の平穏のために言った言葉だった。

 それが、まさかこんな形で自分の首を絞めることになるとは。


「だ、だが……私は、君を……」


「愛することはない、ですよね? 安心してください。私も閣下を『最高の金づル……スポンサー』として尊敬していますから!」


 恋愛感情? なにそれ美味しいの?

 リリアナの強固な「引きこもり精神」と、ビジネスライクな笑顔の前に、ジークフリートの淡い恋心は粉砕された。


    ◇


 結局。

 本邸への引っ越しは白紙となり、代わりに離れが増築された。

 ジークフリートは「契約」を盾に、毎晩のように離れへ「出勤」してくる。


「……リリー、眠れない」


「はいはい。今日は新作の『熟睡アロマキャンドル』がありますよ」


「違う。君が足りない」


 ベッドに入ったリリアナの背後から、大きな身体が忍び込んでくる。

 ジークフリートはリリアナを抱き枕のようにガッチリとホールドし、そのうなじに顔を埋めた。


「……君を愛することはない、なんて言わなければよかった」


「何か言いました?」


「……なんでもない。おやすみ、私の愛しい安眠ひと


 ジークフリートは悔しげに呟き、数秒後には幸せそうな寝息を立て始めた。

 リリアナは、背中に感じる体温に「やれやれ」と肩をすくめる。

 まあ、この大きな湯たんぽのおかげで、冬の夜も快適に眠れるのだから、良しとしよう。


 【漢字】の力で手に入れた、最強の引きこもりライフ。

 ただし、大型犬のような公爵様というオマケ付き。

 リリアナの安眠生活は、今日も概ね平和である。

【お知らせ】

※1/22(木)


新作、好評につき、連載版、投稿しました!

改題・改稿してます!



『【連載版】「君を愛することはない」と白い結婚を突きつけられたので、【付与魔法】で便利グッズを作って快適な引きこもり生活を送ります~不眠症の冷徹公爵様が私の魔道具に依存して、執着がヤバいことになってる~』


https://book1.adouzi.eu.org/n3659lr/


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― 新着の感想 ―
騎士団長、かわいそかわいいな! リリーの正論に反撃できないのだが、どうにも団長を憎めない!
いや、自分が公爵で国最強の騎士団長で魔力に悩まされて大変だったら、 貧乏男爵令嬢を騙し討ちの契約結婚でボロボロの廃墟の離れに放り込んでも言いわけ?笑 公爵夫人として衣食住の全てを保証するって言いません…
面白い設定でした、読みやすかったです。魔力最大級なのに、令嬢が離れに簡単に侵入した事と、離れから出てこない?というかなり内側情報が漏れてるのは不自然かな?と。公爵家の使用人なら質が高いはずなので。
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